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今月に入り、山形県の住宅地に相次いでクマが出没した。そこで抱いた疑問と課題をみていく。

【写真を見る】酒田市が麻酔銃を撃てずクマの逃走を許した理由は?新庄市と酒田市の対応の違いと猟銃使用の条件を担当者に聞く 熊対策の課題とは(山形)

TUYの取材に対し「とにかく箱ワナにかかるのを待つしかなかった」とは酒田市の担当者。

おととい、酒田市の住宅がある地域にクマが出没。転々としたのち、酒田市安田の住宅の小屋に入り込み、しばらく居座った。

警察が警備をし、小屋にいるクマを包囲して箱ワナを設置。捕獲を試みていたが・・・きのう夜10時18分、小屋からクマが逃走し行方をくらませてしまった。

警察が周囲を警戒し、住民にも注意警戒を呼び掛ける事態となっている。

※画像 熊が居座った小屋(けさ)

今月1日に新庄市の市街地にもクマが出没し、最終的には麻酔銃を使い捕獲、山に放された。こうした対応を見ていると、今回の酒田市の件も麻酔銃を使って捕獲できたのではないか?という疑問が当然出てくる。

小屋を包囲できていたのに、なぜそれができなかったのか。

市と県を直撃すると、そううまくはいかない事情が見えてきた。

■まず、新庄市の件をふり返る

ではまず、新庄市の件を見てみる。新庄市では今月1日に街のど真ん中、最上公園とその周辺でクマが出没し、大捕り物となった。

※画像は過去オンエアより

最終的には住宅と住宅の間で麻酔銃を使い捕獲されたが、そこに至った理由を新庄市の担当者に聞いた。

Q最初から猟銃は使えなかった?

「住宅地での銃の使用は法律で禁じられている。相当の危険がある場合は警察が許可を出すこともできるが、今回は最初から許可は出せないと言われていた」

つまり、今回は最初から殺処分の選択はなかった。ただし危険があった場合は許可が出せるわけで、猟友会は待機していた。

「箱ワナを設置して入ってくれればよかったが、そうはならず、最終的に住宅地に入り込んでしまったために麻酔銃を使用した」

麻酔銃は獣医か、麻酔銃を撃つ資格がある者しか扱えない。そして麻酔銃の使用許可は県が出す。

新庄市の件では県が許可を出し、麻酔銃が使用された。

■酒田市の対応をふり返る

では、酒田市の場合はどうだろうか。

クマは3日に市内の住宅地で目撃され、酒田市安田の住宅の小屋に入った。警察と市、猟友会などが小屋に箱ワナを設置し、周囲を包囲した。

と、この状況を見ると小屋にいるわけだから、銃や麻酔銃で狙いやすいし、すぐに解決したのでは?と思ってしまう。

酒田市の担当者に聞くと。

「今回の場合は麻酔銃は使えなかった。許可がもらえなかった」

なぜなのか。県に聞いた。

■酒田市で使えなかった「理由」

Q新庄市では麻酔銃が使えて酒田市で使えないのはなぜ?

「まず、前提として法律で禁止されていて銃は市街地では使えない。危険があれば警察の許可で使用できるが、まず使用できない」

「さらに建物の中での銃の使用が禁じられている。弾が跳ね返った場合に危険が生じるのが理由」

銃は、住宅地で使用できないだけではなく建物の中でも使用できない。

つまり、せっかく建物の中にクマを追い込んでも、銃で対応することが”そもそもできない”ことになる。

麻酔銃も、なのだろうか。

「麻酔銃も基本的には撃てない。ただし、状況をみて県が許可を出す」

では、新庄市には許可を出し、酒田市に許可を出さなかった理由は。

「新庄市の場合は住宅地の中に逃げ込み、やむなく麻酔銃の使用を許可した。酒田市の場合は、建物の中では撃てなかったのと、二次被害が想定されたため許可できなかった」

二次被害とは?

■麻酔銃は「効かない」

麻酔銃はすぐに効くと思っていないだろうか。某探偵マンガのように、使用した瞬間に眠るようなものを想像すると、どうもそうではないらしい。

「麻酔銃の使用は基本的にはニホンザルのような生き物を想定している。体の小さな個体ならいざしらず、クマのように大きな動物にはすぐに効くものではない」

「効きづらい上に銃声で驚いたりすると、暴れまわることもある。やはり箱ワナに入ってから対処するのが安全」

改めて新庄市の映像を見ると・・・

※画像は過去オンエアより

麻酔銃を撃たれたクマは体がマヒしているようには見えるが、眠っているわけではない。目は開いていたし、ほとんど動かない体で抵抗するようなそぶりも。

仮に麻酔の効きが甘かったら、かなり危険だったと想像できる。

新庄市の件はやむなく麻酔銃を使用したのであって、麻酔銃をどこででもすぐに使えるわけではないのだ。

■今後の課題は

クマが市街地に多く出ている状況を見るに、これまでの決まりでは対処しきれない場合があるのは間違いない。

今は、クマを見つけたらまずは「追い払い」をし、逃げていかない場合は「箱ワナ設置・捕獲」が主な流れ。

※画像は過去オンエアより

捕獲後の対応(放獣・殺処分)についても市町村まかせにされている曖昧な状態だが、国がしっかり法整備をしていかないと、市町村がいつまでも批判されるもとになる。

さらに銃の使用に関する決まりも現代に合わせた手続きに変える必要があると感じる。

ただし住民の安全第一(発砲に関して)なので、そう簡単ではないが・・・。

県の担当者はTUYの取材に対し「今後、市町村と検討を重ねたい」としている。

■ついに、法改正を閣議決定

※2月21日掲載記事

政府はきょう、鳥獣保護管違法の一部を改正する法律案を閣議決定した。これまでは市街地での銃の使用などが難しかったが、条件が整えば市町村の判断で銃を使用することができる。

改正案は、けさ政府が閣議決定した。

環境省によると、クマが市街地など人が生活するエリアに出没することが増えたことを受け、改正の検討を進めてきた。

現在の鳥獣保護管理法では、市街地などにクマが出没した場合など、銃を使用する際は県が許可を出すのに加え、現場の状況を踏まえ警察官が許可を出す。

が、これがなかなか出ない。

住民などの命の安全、さらに家屋など財産への被害を考えれば仕方ないのだが、銃の使用は手続きが複雑で現実的ではなかった。

今回の改正で、複雑だった手続きを簡略化し、現場の判断に重きを置くとともに、もしも場合のサポートについても触れられたものとなっている。

改正案では、クマなどを「危険鳥獣」と規定し、人に被害が及ぶおそれがある場合に市町村長の権限で市街地で銃を使用できるようになる。(自治体職員やハンターなど有資格者)

危険鳥獣にはヒグマ、ツキノワグマ、イノシシを指定するという。

さらに、銃を使用して家屋などが破損した場合は、その損失を市町村が補償することになる。補償は保険で賄う想定だが、費用などは国が財政支援を実施する予定だという。

クマの出没が相次ぐ地域にとっては、対策がかなり前進したといえるのではないだろうか。改正案は今後国会に提出され、秋ごろの施行を目指すという。