突如として休養が発表された松井監督

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世代交代の失敗

 セ・パ交流戦に突入した今年のプロ野球。パ・リーグではソフトバンクが一歩リードしている状況だが、記録的なペースで負けが込んでいるのが西武だ。5月18日には早くも自力優勝が消滅。39試合での自力優勝消滅は球団史上最速であり、プロ野球の長い歴史でも5番目の速さだ。

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“歴史的な低迷”を受けて、26日の試合終了後には松井稼頭央監督の休養が発表され、交流戦以降は渡辺久信ゼネラル・マネージャー(GM)が監督代行として指揮を執ることとなった。交流戦が始まる時点での成績は15勝30敗で勝率.333。西鉄時代の1971年に記録した勝率.311というのが球団ワースト記録だが、その不名誉な数字を更新する可能性も出ている。

突如として休養が発表された松井監督

 チーム打率.214は12球団最低で、規定打席に到達して打率2割5分を上回っている選手は一人もいない。中軸として期待された新外国人のアギラ―とコルデロは揃って不振で、二軍での調整となっている。

 低迷の要因としては、世代交代の失敗が挙げられる。2018年、2019年にパ・リーグ連覇を達成した時には“山賊打線”と呼ばれたが、浅村栄斗(現・楽天)、秋山翔吾(現・広島)、森友哉(現・オリックス)、山川穂高(現・ソフトバンク)と主力が相次いで退団しており、その穴を全く埋められていない。

 大卒3年目の古賀悠斗が正捕手に定着しつつあり、2022年ドラフト1位の蛭間拓哉に開花の兆しが見られる一方で、それ以外の野手は揃って停滞している。

 西武は、清原和博をはじめ、松井稼頭央、和田一浩、中島宏之(現・中日)といった中軸が退団しても長期低迷に陥ることなく、リーグの上位を争い続けてきた。だが、今年の戦いぶりと現状の戦力を考えると、チーム再建には時間がかかりそうだ。

「チーム防御率が12球団最下位」の球団

 とはいえ、西武にも“明るい兆し”がないわけではない。若手投手には好素材が多いからだ。昨年は、2021年ドラフト1位の隅田知一朗と、同2位の佐藤隼輔がブレイク。今年は、ドラフト1位ルーキーの武内夏暉が加わった。ローテーションの一角を担う今井達也と平良海馬は20代中盤で、若さがある。

 このほか、高卒3年目の羽田慎之介も一軍デビューとなった5月14日の日本ハム戦で150キロ台中盤のストレートを連発して、大きな話題となり、渡辺勇太朗や青山美夏人、ドラフト2位ルーキーの上田大河らが控えている。投手陣の将来性では、西武は12球団屈指で、近い将来投手王国を形成することは夢ではない。

 実は、西武以上に“低迷の危険性”が漂っている球団が2つもある。一つ目が西武と同じパ・リーグの楽天である。チーム打率はリーグ5位で、ホームラン数は12球団で最下位の14本となっている。主砲の浅村栄斗が、昨年までと比べて大きく成績を落としており、若手の大砲候補は、安田悠馬しか見当たらないのが現状だ。

 チーム防御率は12球団最下位で、5月21日のソフトバンク戦では21点を奪われ、大敗を喫した。このような一方的な展開になっても、投手、野手ともに抜擢したいような若手が一軍ベンチに皆無だったところに、チームの苦しい状況がよく表れている。

 高卒4年目の内星龍、大卒2年目の荘司康誠、ドラフト1位ルーキーの古謝樹ら、今後が楽しみな若手選手はいないわけではないが、投手、野手ともにベテランへの依存度が極めて高く、来年以降はさらに苦しい状況に陥りかねない。

影を落とす主力選手の“去就”と“高齢化”

 一方、セ・リーグで不安要素が多い球団がヤクルトだ。チーム本塁打数と1試合あたりの得点数はリーグトップであり、課題だった投手陣は、チーム防御率はリーグ5位ながら、昨年に比べて大きく改善している。今シーズンの数字だけを見れば、西武と楽天に比べて悪いわけではない。

 だが、主力選手の去就問題と高齢化がチームに大きな影を落としている。主砲の村上宗隆は来シーズン終了後のメジャー移籍が濃厚と見られており、オスナとサンタナとの契約は今年までとなっている。

 日本球界では、近年、外国人野手は苦戦が続いており、すでに実績があるオスナとサンタナに対しては、他球団が獲得調査に乗り出す可能性が濃厚だ。この3人が揃って、ヤクルトから流出することになれば、得点力の大幅ダウンは避けられない。

 球団は、こうした事態に備えて、西村瑠伊斗や沢井廉、北村恵吾といった野手をドラフトで獲得したが、まだ一軍定着には時間がかかると見られている。

 投手陣も石川雅規や小川泰弘、石山泰稚らベテランに頼る部分が大きく、将来のエース候補として期待された奥川恭伸も故障からなかなか復活することができていない。3年後のチームを考えると、投手、野手ともに補強ポイントだらけだ。

問題は「弱点をルーキーで埋める発想」

 それでも、ヤクルトは2年連続の最下位からリーグ連覇を達成しており、今年も日本ハムが優勝争いを演じるなど、低迷していた球団が急浮上してきた例は少なくない。

ただ、そんな例があることが、逆に長期的なチーム作りを困難にしているのではないかと、ある球団のスカウトは話す。

「メジャーは球団数が多く、思い切ったトレードもあって、チームを立て直すのに数年かけることも珍しくありません。ですが、日本はセ・パ6球団ずつしかなく、リーグで3位に入れば、日本一の可能性もある。そうなると、どうしても目先の戦力強化を狙うことが多く、長期的にチームを強くするという考えがなかなか出てこないのだと思います。毎年必ず“来年から使える選手はいないのか?”という話が出てきますからね。ただ、プロのレベルが上がっていることもあって、1年目から活躍できる選手はなかなかいません。弱点をルーキーで埋めるという発想を捨てる必要があるのかもしれません」(関東地区担当スカウト)

 今回は下位に沈む3球団について触れたが、他を見ても将来が明るいという球団が決して多いわけではなく、それだけ勝ち続けるチームを作ることは難しい。果たして、ここから各球団がどんなチーム作りをしていくのか。ペナントレースの行方だけでなく、チーム編成についてもぜひ注目して頂きたい。

※記事中の成績は5月26日時点。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部