シーマス・パワーが示した大会のおもしろさ(撮影:GettyImages)

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バターフィールド・バミューダ選手権の出場選手の中で、「世界ランキングが最も上位は誰か?」と問われて、ずばり正解を言い当てることができた人は、きっと多くはなかったことだろう。
答えは、シーマス・パワー。2021年のバーバゾル選手権で初優勝を挙げたアイルランド出身の35歳だが、彼は世界ランキング48位で今大会にやってきた。
その48位が「最上位」の今大会は、世界ランキング的に見れば、フィールドが「悪い」、「弱い」ということになる。
だが、世界ランキング上位選手が多数出場することだけが大会としての良し悪しを決めるわけではない。
どんな歴史があるか、どんな背景があるか、どんな特徴があり、どんな選手たちが挑み、どんな想いでプレーしているか。そうしたことのすべてが重なり合って自ずと醸し出す雰囲気こそが、その大会の良さとなって、人々の心に届くのだと私は思う。
バターフィールド・バミューダ選手権の舞台はバミューダ諸島のポート・ロイヤルGC。全長6828ヤードのパー71は、今季のPGAツアーの試合会場の中では最短コースに位置付けられる。
しかし、短いコースだからこそ、距離的にタフなコースとは異なる攻め方で挑むことができる。日ごろとは異なるバーディラッシュのゴルフで勝負することができる。そこに面白さや醍醐味は必ずあるはずである。
とはいえ、かつては世界選手権のHSBCチャンピオンズと同週開催だったため、ビッグネームの出場はなく、コロナ禍でHSBCチャンピオンズが開催されなくなってからも、PGAツアーの日程と移動の利便性の関係上、ビッグネームの姿はほとんどなかった。
そして今季からは「トッププレーヤー」に年間20試合への出場が義務付けられることになったが、今大会はその20試合には含まれていないため、やっぱりビッグネームの出場はなく、だから世界ランキング48位が出場選手の中で最上位となったのだ。
しかし、これからのPGAツアーでは、トッププレーヤーが必ず出場する20試合に含まれない大会は、どう頑張ったところで賞金額の魅力で選手たちを引き付けることはできないのだから、その代わりに、それぞれの大会の個性を打ち出していかなければ、生き残ることは難しくなる。
その意味で、今年のバターフィールド・バミューダ選手権は、スポンサー推薦を12名の選手にオファーするなどして実にユニークな顔ぶれの選手たちを集め、それを大会の特徴にしていたのだと思う。
最終日を首位タイで迎えたのは、世界ランキング最上位のパワーと今季ルーキーで未勝利のベン・グリフィンだった。
2打差の3位タイには、やはりルーキーのユ・チュンアンと42歳のアーロン・バデリーという対照的な2人が並んでいた。
バデリーは、かつてはオーストラリア出身の将来有望なヤング・プレーヤーとして脚光を浴び、母国で4勝、PGAツアーでも4勝を挙げたスター選手だったが、近年はスランプに陥り、喘いでいる。
今大会にはマンデー予選から挑み、6人によるサドンデス・プレーオフを勝ち抜いて出場。優勝すれば、2019年以来のマンデー予選通過者による勝利となるところだったが、それは実現せず、6位タイ。しかし、勝てずとも「大きな手ごたえを得た」と語ったバデリーの表情は明るかった。
一方、最終日を5位で迎えたブライアン・ゲイは2020年の今大会を含む通算5勝の実力者だが、すでに50歳の誕生日を迎え、チャンピオンズツアーに出場しているシニア選手だ。ゲイが優勝すれば、2021年のフィル・ミケルソンによる全米プロ制覇以来のシニア選手による勝利となるところだったが、こちらも実現せせず、11位タイ。だが、シニア選手による優勝に期待を寄せながら観戦したファンは、彼の奮闘に勇気をもらったのではないだろうか。
世界ランキングは上位ではなくても、これだけ意味合いのある選手たちがリーダーボードを締めていたことは、大会の大きな見どころとなっていた。
とはいえ、終わってみれば、栄冠を掴み取ったのは、世界ランキング最上位のパワーだった。「初めて大会の注目選手になった」と喜んでいたパワーは、首位で迎えた最終日を5バーディー・4ボギーで回り、2位に1打差のトータル19アンダーで勝利。
「終盤は(ボギーが続いて)苦しい戦いだったけど、なんとかやり遂げることができて、うれしい」
パワーの戦いぶりと達成感を噛み締めていた彼の笑顔は、観戦していて良かったと感じさせてくれた。大会の面白さや魅力は、世界ランキングの高さだけではないことを、今年のバターフィールド・バミューダ選手権はあらためて示してくれたように思う。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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