どん底からの復活を果たした柴田大知の波乱万丈な騎手生活

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3年間未勝利の騎手を支えた大馬主の存在

どん底を味わったジョッキー柴田大知。マイネルホウオウに騎乗した2013年のNHKマイルCを制した際、涙ながらに関係者への感謝の気持ちを言葉にしたことで、完全復活をアピールしたが、いったい彼はどんな騎手だったのだろうか

柴田大知は1996年デビューのいわゆる「花の12期生」の1人。

双子の弟である未崎とともにJRAでは史上初となる双子の騎手として大きな注目を集め、栗田博憲厩舎に所属したルーキーイヤーに27勝を挙げて、民放競馬記者クラブ賞を受賞。

翌年にはエアガッツに騎乗してラジオたんぱ賞を制して重賞初勝利をマークするなど、順風満帆な騎手生活を送っていた。

柴田大知の騎手人生が暗転し始めたのはその直後のこと。周囲の反対を押し切って新聞記者との結婚をしたため厩舎から追い出されてしまい、これが原因となり騎乗数が激減。

中でも2006年から2008年までの柴田の平地のレースの成績は未勝利。3年間の騎乗数もたったの47回とまさにどん底にまで落ちてしまった。

もはや忘れ去られた存在となっていた柴田大知を救ったのが、日本屈指の名馬主である岡田繁幸。マイネル軍団の総帥としても知られる彼は当初、障害レースに出走する所有馬の騎乗を柴田に依頼した。

実力馬への騎乗を任されるようになったことで次第に勝負勘を取り戻していった柴田は2011年にマジェスティバイオで東京ジャンプSを制して14年ぶりに重賞勝利を飾ると、7月には岡田が所有するマイネルネオスで中山グランドジャンプを制して障害レースながらGI初勝利を飾った。

障害レースで再び輝きを見せ始めた柴田大知が復活を飾ったのは2013年。この年はマイネルホウオウでNHKマイルCを制して自身の通算200勝目を飾るとともに、平地GI初制覇をマーク。

インタビューで見せた男泣きは涙を誘うほど。今でも日本競馬史上屈指の感動シーンとしてファンの記憶に残っている。

そしてこの後の柴田大知は、マイネル軍団の主戦騎手として完全復活。毎年コンスタントに勝ち星を積み上げていき、2016年にはかつて所属していた栗田厩舎が管理するマイネルハニーに騎乗してエプソムCを制したのをはじめ、自己最多となる56勝をマークした。

そして2021年に柴田はJRA史上101人目となる通算500勝を達成。

花の12期生と呼ばれた同期生の中でも福永祐一、和田竜二、古川吉洋に続いて4番目に多い勝ち星を挙げ、44歳の今も現役騎手として活躍を続けている。

たとえ先が見えないほど暗く険しい道でも、トンネルの先には必ず光があるということを柴田大知は身をもって証明したと言える。誰よりも遠回りしてきた彼だからこそ、多くの競馬ファンに感動を与えたのは言うまでもないだろう。


■文/福嶌弘