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速度域が高まるほど安定性が際立つ

今回ご登場願った1955年式の初代フォード・サンダーバードには、珍しい3速MTが載っている。ATより遥かに素晴らしいクルマに感じさせてくれるトランスミッションだ。

【画像】初代サンダーバードとXK140 同時期のライバル、C1コルベットも 全64枚

クラッチペダルは軽くつなぎやすく、シフトレバーは短く変速しやすい。手応えは重めで、メカニカルな印象が強い。


ターコイズブルーの初代フォード・サンダーバードと、レッドのジャガーXK140 SE オープン2シーター・ロードスター

とはいえ、4.8L V8エンジンの図太いトルクがあるから、走り出してしまえば殆ど変速は必要ない。ボルグワーナー社製のオーバードライブが付き、2速と3速で入ると、エンジンの回転数が30%ほど落ちる。走行するスピードに応じて、自動で切り替わるようだ。

オーバードライブを解除するには、アクセルペダルを踏み込んでキックダウンを誘うだけ。あるいは、ダッシュボードのオーバードライブ・レバーを押せば良い。

静止状態からの加速力では、2台ともに拮抗している。実際、0-97km/h加速の時間を見ても、サンダーバードが8.8秒、ジャガーXK140が8.5秒で、ほぼ並んでいる。

速度域が高まるほど、XK140の安定性が際立ってくる。ステアリングにもブレーキにも、しっかりした手応えがある。

サンダーバードは違う。ステアリングホイールを回してもほとんど抵抗を感じず、見た目以上にゆったりと反応する。パワーアシストというより、ほぼ機械の力でフロントタイヤの向きが変わっているようだ。ステアリングラックのレシオもかなり低い。

よりパーソナルなドライビング体験

走り出したサンダーバードは、想像以上に直進状態を保つことに忙しい。ブレーキペダルを強く踏み込んでも、また怖い。ブーストが効いているようだが、ドラムが充分な制動力を生むことはない。

とはいえ、英国のコーナーが続く一般道でも、安定したラインを保持はできる。ボディロールは乗っている時より、見ている時の方が大きく感じられる。ただし、限界領域は高くない。穏やかな気持ちで、駆け足程度のペースで走るべきクルマだ。


ジャガーXK140 SE オープン2シーター・ロードスター(OTS/1954〜1957年/北米仕様)

サンダーバードを楽しみたいなら、ドライビング体験の仔細には気を配らない方が良いだろう。ヤシの木が並ぶカリフォルニアの広い道を、のんびり友人や恋人と流すためのコンバーチブルだ。ロードサイドの、ドライブイン・シアターを目指して。

反して2シーター・ロードスターのXK140は、よりパーソナルなドライビング体験のためのクルマ。アンダーステア気味ながら、狙った通りのラインを縫える。アクセルペダルの角度とトランスミッションの段数、ステアリングホイールの角度で、意図したままに。

発売から70年近くが経つジャガーで、速めのペースを保ちながら英国郊外の道を駆ける喜び。ビンテージカーの艶っぽい個性を、本能的に楽しみたいと思わせてくれる。同時期にアメリカで生まれたサンダーバードとは、まったく対照的な味わいだ。

運転すれば自ずと笑顔になってしまう

1955年式でありながら、サンダーバードはパワーアシストのステアリングホイールやベンチシートを備え、現代技術での省力化を実現させていた。それでいて、戦後の裕福な時代のアメリカ車として、最もスポーティなモデルでもあった。

シボレーよりフォードの判断が正しかったことを、初代コルベットを超える販売台数でサンダーバードは証明した。ところが1960年代に向けてアメリカ車は大型化し、派手さも増していった。わずか3年で、サンダーバードは2代目へと交代してしまう。


フォード・サンダーバード(1955〜1957年/北米仕様)

結果として、1955年から1957年にかけて作られた初代は、多くのマニアの注目を集めるモデルとなった。アメリカ車のクラシックカー・コレクターにとっては、羨望の的になっている。

取引価格は、それほど高騰していないようだ。2シーター・ロードスターのジャガーXK140やその後のマッスルカーと比べても、だいぶ現実的な範囲にはある。後期モデルの値動きは、上昇傾向にあるようだけれど。

伝統的な英国製スポーツカーを愛するドライバーが耐えてきたような痩せ我慢を、快適さと贅沢さで解決したフォード。時代のドリームカーとして、アメリカンなスタイリングに包み込んで。

初代フォード・サンダーバードを嫌うことは難しい。思わず険しい顔付きになりがちな昨今、運転すれば自ずと笑顔になってしまう。クラシックカーの個性として、まったく悪いものではない。

サンダーバードとXK140 2台のスペック

フォード・サンダーバード(1955〜1957年/北米仕様)のスペック

英国価格:2692ドル(新車時)/7万ポンド(約1087円)以下(現在)
生産台数:1万6155台
全長:4455mm
全幅:1784mm
全高:1308mm
最高速度:185km/h
0-97km/h加速:8.8秒
燃費:6.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:1575kg
パワートレイン:V型8気筒4785cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:195ps/4400rpm
最大トルク:38.6kg-m/2600rpm
ギアボックス:3速マニュアル+オーバードライブ

ジャガーXK140 SE オープン2シーター・ロードスター(OTS/1954〜1957年/北米仕様)のスペック

英国価格:1127ポンド(新車時)/13万ポンド(約2002万円)以下(現在)
生産台数:3354台
全長:4470mm
全幅:1640mm
全高:1395mm
最高速度:194km/h
0-97km/h加速:8.5秒
燃費:6.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:1420kg
パワートレイン:直列6気筒3442cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:213ps/5750rpm
最大トルク:29.3kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル+オーバードライブ


ターコイズブルーの初代フォード・サンダーバードと、レッドのジャガーXK140 SE オープン2シーター・ロードスター