中国の通信機器大手Huaweiが、北京を拠点とする画像認識や人工知能(AI)のベンダーであるMegviiと共同で、ウイグル人を追跡する顔認証システムを開発していたと報じられています。

Huawei / Megvii Uyghur Alarms

https://ipvm.com/reports/huawei-megvii-uygur

Huawei tested AI software that could recognize Uighur minorities and alert police, report says - The Washington Post

https://www.washingtonpost.com/technology/2020/12/08/huawei-tested-ai-software-that-could-recognize-uighur-minorities-alert-police-report-says/

調査団体・IPVMは2020年12月8日に、HuaweiとMegviiが顔認証技術を用いたウイグル人追跡システムを開発していたことが、ワシントン・ポストとの合同調査により判明したと報じました。

IPVMが入手した2018年1月8日付けの「(PDFファイル)Huawei Video Cloud SolutionとMegvii動的顔認証の相互運用性テストレポート」という機密文書には、HuaweiとMegviiが共同で顔認識システムを開発していたことや、Huaweiが検証したMegviiの顔認識システムに、基本機能としてウイグル人を追跡する「ウイグル人アラーム」が盛り込まれていたことが記載されていました。



このレポートではさらに、Megviiのシステムは顔認証を用いた属性分析により、年齢や性別だけでなく「民族」を判断することに成功したことも報告されています。



このレポートは「機密文書」とされていますが、ワシントン・ポストによるとGoogle検索で見つけることが可能なHuaweiのサイト上で公開された状態になっていたとのこと。しかし、ワシントン・ポストとIPVMがHuaweiにコメントを求めた直後に、Huaweiのサイトから削除されました。



ワシントン・ポストによると、HuaweiとMegviiはこのレポートが本物であることを認めているとのこと。ただし、Huaweiは取材に対し「このレポートに記載されているのは単なるテストに関するもので、実世界では使われていません。Huaweiは、事業を展開している全ての国や地域の法制度を順守しており、業界規定を満たす製品やソリューションだけを提供しています」と回答し、「ウイグル人アラーム」の使用を否定しました。

また、MegviiもIPVMに対して「当社のソリューションは、民族をターゲットにしたり、ラベリングしたりするように設計ないしカスタマイズされることはありません。私たちの事業は、特定の人々のグループを監視することではなく、個人の幸福と安全に焦点を当てています」との声明を発表しています。

一方、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのマヤ・ワン氏はワシントン・ポストに対し、「中国はAIによる監視をますます強化して、少数民族や抗議する人などを国家の脅威として追跡しています。そして、中国による監視技術は、同国におけるマイノリティ迫害の枠を超えて、マイノリティを犯罪者に仕立て上げたい他の国々でも使用されるようになるでしょう」と話して、中国の監視技術は中国のみならず世界中に広がりつつあるとの見方を示しました。

新疆ウイグル自治区の住民に対する激しい弾圧が行われている中国では、以前から「AIや顔認証技術といったテクノロジーがウイグル人の監視に使われている」ことが指摘されています。そのため、アメリカ政府は2019年10月に、Megviiをはじめとする28の企業や団体を名指しで「中国政府によるウイグル人など少数民族に対するハイテク機器を用いた監視や、人権侵害に関与している」と非難し、国内企業との取引を禁止するブラックリストに追加する措置を講じました。

アメリカが中国の監視カメラや顔認証技術企業を根こそぎブラックリストに追加、その理由とは? - GIGAZINE



なお、HuaweiとMegviiのレポートには、NVIDIA Tesla P4 GPUが使用されたことや「NVIDIA Tesla P4はディープラーニングアルゴリズムの加速を効果的に高めることができる」との評価も記載されていました。IPVMは、このことについてNVIDIAにコメントを求めていますが、記事作成時点のところ返答はないとのことです。



Huaweiらのレポートを精査した結果から、IPVMは「HuaweiとMegviiによる『ウイグル人アラーム』の共同開発は、中国の多くのテクノロジー企業がウイグル弾圧に深く関与していることを、一層明確に証明しました。これらの企業と関わっている人は、誰であれこのことに留意する必要があります」と結論付けました。