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ソフトバンクは23日、埼玉県・さいたまスーパーアリーナで開催されたバスケットボール国際試合のドイツ対チュニジア戦において、5G通信を使ったリアルタイムの8K映像の伝送実験を実施した。伝送容量は約300Mbpsにも達するデータ容量だが、ミリ波を使った5G通信で安定した映像伝送を成功させた。

同社はバスケットボール日本代表のスポンサーで、さいたまスーパーアリーナでの「バスケットボール日本代表国際試合」では、会場で5Gのプレサービスを提供している。

その一環として実施された今回の実験は、シャープと共同で8K映像の配信システムを構築。8Kカメラ2台と7.1chのマイクを試合会場に設置し、その場でHEVCエンコード。ビットレート100Mbpsの8K映像を専用線で伝送して、ソフトバンクの「5G×IoT Studio お台場ラボ」のコンテンツ配信サーバーで時刻同期を行った8KのIPストリーミング3本と音声ストリーミング1本を、5Gコア経由で基地局から5G端末にワイヤレスで伝送する。そして、5G端末と接続されているHEVCデコーダーを積んだ3台のPCが映像を受信して、70インチの8Kモニタに映像を出力する、というものだ。

コンテンツ配信サーバーは配信プロトコルに標準規格のMPEG-DASHを採用。HTTP形式でストリーミングすることで、特別な再生装置を必要とせず、Webブラウザで8K映像を視聴できるようにした。

お台場ラボ内のシールドルームに設置されているのは、28GHz帯のミリ波を使った5Gに1.7GHz帯LTEのアンカーバンドを併用したNSA方式の環境。帯域幅は400MHzで、最大通信速度は5.6Gbpsになるという。試験環境ということで外部に電波が漏れないシールドルーム内で、かつ端末は実験用の巨大なものだが、8K映像をワイヤレスで問題なく伝送できることが可能だった。

会場での撮影からエンコード、伝送、コンテンツ配信サーバーからの配信、そしてデコードまで10秒程度の遅延がともなうものの、安定した高精細映像をリアルタイムに配信できていた。

実験の背景にあるのが、動画配信のさらなる増加だ。世界のIPトラフィックは増加の一途をたどり、2019年には200エクサバイトとなる見込みだが、それが2022年には400エクサバイトと倍増し、そのうちの約82%が動画のトラフィックになると見られている。さらに、インターネット上の動画コンテンツのうち、ライブ映像が増加し、2022年のトラフィックは、2017年比で約15倍に急増し、全体の約17%を占めるようになるという。

こうした状況を踏まえた今回の実験では、多様な視聴環境に対応できるように、端末上にキャッシュなどを保存しないストリーミング形式で、さらにMPEG-DASHを採用することで、Webブラウザで視聴できるようなHTTP形式の配信とした。

MPEG-DASHは、同じ映像ソースから、解像度やビットレートなど、複数のセグメントに映像を切り分けることが可能で、ネットワーク環境などを踏まえてスマートフォンには2K、8Kテレビには8K、通信品質が低下したら画質を落とす、といった具合に、状況に応じて映像を切り替えられる仕組みを構築できる。

こうした仕組みを取り入れるとともに、コンテンツサーバーをインターネット上に置かずにソフトバンクの5G網内に設置することで、リアルタイム配信におけるボトルネックを抑えることも目論んだ。

このシステムでは利用者がソフトバンクの回線を使う必要があり、ほかの通信回線の利用者はインターネットを経由しなければならない。通信環境に左右されるため、コンシューマ向けの一般的なコンテンツ配信では使い勝手が良くない。しかし、ライブビューイングで5G通信網を含めたトータルのシステムを提供したり、映像編集サーバーを提供してサーバーで高速な処理を肩代わりする、といったエッジコンピューティングの環境を想定する。

今回の実験は、試合映像のリアルタイム伝送だったが、多視点の8K映像を同期して配信できたことから、例えば手術現場の映像同時配信で遠隔手術を実施する、といった幅広い応用が考えられる。

同社では、継続的に5Gの実験を実施しつつ、来年の5Gサービスのスタートに向けてエリア拡大に努めていく計画だ。東京オリンピックでは、会場内で5Gを使えるようにすべく準備を進めているという。