ジミヘン『エレクトリック・レディランド』発売50周年記念ボックスセットの内幕

写真拡大 (全2枚)

ジミ・ヘンドリックスの『エレクトリック・レディランド』50周年を記念し、豪華リイシュー版のデラックス・ボックスセットが発売される。このボックスセットにはデモ音源、アウトテイク音源、ライブ音源、ドキュメンタリーが含まれる。

半世紀前、後に生前に作った最後のアルバムとなってしまう『エレクトリック・レディランド/Electric Ladyland』に取り掛かったとき、ジミ・ヘンドリックスは至るところにインスピレーションを見出していた。「ジミは実験的なことばかりしていた」と、このアルバムのレコーディング・エンジニアの一人だったエディー・クレイマーが言う。あのとき、クレイマーはエレクトリック・レディー・スタジオのコントロールルームに座っていた。このスタジオは1970年に彼が他界する少し前にニューヨークでオープンしたヘンドリックスのスタジオだった。「彼と仕事をするようになったとき、(ヘンドリックスのマネージャーの)チャス・チャンドラーが『ここのルールは”ルールがない”ってことだ』と教えてくれた。しきたりや慣習のドアを蹴破って、ジミのサウンドと大胆な手法を実験した」とクレイマー。

彼らの実験結果は『エレクトリック・レディランド』の至るところに存在する。異世界のようにフェーズするサウンド・エフェクト(「これにはみんな大興奮だった」とクレイマーが言う)から、ヘンドリックスがジャムセッションを行うために招いた様々なミュージシャンの組み合わせまで多種多様だ。ヘンドリックスが招いたゲスト・ミュージシャンにはトラフィックのメンバーやローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズなどがいた。豪華さが増した新たなボックスセットは、このセットの成り立ちを見渡せる360度の眺めとともに、この秋リリースされる予定だ。この『エレクトリック・レディランド』デラックス・エディションに含まれるものは、リマスターされたオリジナル・アルバム、ハイレゾ・オーディオ、クレイマーがミックスした5.1サラウンドサウンド、デモ音源とアウトテイク音源を収録したディスク、アルバム発売1ヵ月前に行われたライブの音源、制作状況を記録したドキュメンタリーなど。


レコーディング・エンジニアのエディー・クレイマー

米国現地時間11月9日にリリースされるこのボックスセットは、3枚組CDとブルーレイ1枚のセットか、6枚組LPとブルーレイ1枚のセットで発売される。高名なエンジニアのバーニー・グランドマンがアナログのオリジナルテープからリマスターを行い、アナログ盤の音源はダイレクト・トゥ・ディスクで変換した。そして、ブルーレイには、「At Last … the Beginning: The Making of Electric Ladyland(原題)」と題されたドキュメンタリーに加え、5.1サラウンドサウンド・ミックスと24bit、96kHzにミックスされたオリジナルのステレオサウンドが収録されている。簡易版は各種ストリーミング・サービスで入手できる予定だ。

「5.1ミックスを行った発端は『ジミだったらどうしただろうか?』と考えたことだった」と、クレイマーが説明した。「5.1のパン用のジョイスティックを持っているのだが、オリジナルのステレオ・ミックスを聞いたあと、『ステレオのミックスでこれを使っていたな。じゃあ5.1にするために、左から右、前から後ろ、ズームと素早く動かしてみようかな』と思ったわけだ。ジミが生きていたら、頭の中で騒々しく聞こえるあのサウンドに興奮したはずだよ。きっと『そうだよ、これだよ、やってくれ。音をくるくる回してみてくれ』って言ったと思う」。

ヘンドリックスと一緒に作ったオリジナル・ミックスに忠実なサウンドを保つために一生懸命作業を行ったのだが、新しいミックスを聞いたリスナーはいくつか新たな要素を見つけるだろうと、クレイマー本人が教えてくれた。「オリジナルよりもクリアで深みのあるサウンドになっている」とクレイマー。「リスナーは全体像がもっとクリアに見えるはずだ。音の層の下層部にある楽器の音がはっきりと聞こえてくるからね。ジミが弾いたリズムギターや、バックコーラスの上にのっている些細なサウンドとか、パーカッションなどが、はっきりと姿を現すよ。だから、スタジオでバンドの演奏を聞いている感覚になるんだ」。

アウトテイク音源を集めた「Electric Ladyland: The Early Takes(原題)」には、1968年に滞在していたマンハッタンのドレイクホテルで、ヘンドリックス自身が私物のTeacのテープレコーダーを使って録音したオープンリール・テープのオーディオが収められている。初期の「ヴー・ドゥー・チャイル」、「ジプシー・アイズ」に加え、オリジナル盤に収録されなかった「Angel(原題)」と「My Friend(原題)」、更にまだ「At Last … the Beginning」というタイトルだった「ザ・ゴッド・メイド・ラヴ」の初期バージョンも収録。「彼は本当に静かに作っていたね」と、笑いながらクレイマーが言った。「ホテルの部屋の空気が手に取るようにわかるもの。ささやき声に近い感じで歌っている。何故かって? 隣の部屋の人たちを起こしたくなかったんだよ。だからジミは『これが”エレクトリック・レディランド”だ。君は行ったことがあるかい?』とささやく。とても暖かくて、非常にプライベートな雰囲気だ。そして突然、電話が鳴る。フロントからの電話で、彼が腹を立てる様子が声のトーンにはっきりと出ていて、最高だね」と。

このボックスセットには、ヘンドリックスがニューヨークのサウンド・センターとレコード・プラントで行ったセッションも収録しており、その中には未発表曲「Angel Caterina(原題)」と「Little Miss Strange(原題)」も含まれる。この2曲ではスティーヴン・スティル、ヘンドリックスのバンド・オブ・ジプシーズ、バンドメイトのバディ・マイルズが登場している。また、「ロング・ホット・サマー・ナイト」の別バージョンもあり、この曲ではヘンドリックスがドラマーのミッチ・ミッチェル、ピアニストのアル・クーパーと共演している。「まず未加工のデモから始め、未加工のマスター音源を1~2本聞いて、最後にマスター音源を聞いたよ。こうすると曲全体に流れる横糸が掴めるんだ」と、クレイマーが説明してくれた。

『エレクトリック・レディランド』を紐解くエディー・クレイマー

ライブ音源ディスク『Jimi Hendrix Experience: Live at the Hollywood Bowl 9/14/68』には、近年見つかった2トラックのサウンドボード音源が収録されている。これはトリオがロサンゼルスで行ったライブで、3枚のアルバムからの楽曲に加えてクリームの「サンシャイン・ラヴ」をカバーしている。「あのコンサートで、彼は会場の観客を心配していた」とクレイマー。「あの頃はステージの前に池があった。観客が興奮すると、みんな池に飛び込んでジミに近付こうとするわけだよ。すると彼は『ダメだ、ダメだ』と観客を抑えようとした。彼は怖がっていたよ。水と電気が合わさると良い結果は生まれないからね。会場のファンたちに『池から離れてくれ、お願いだ』と、ステージの上から頼んでいたよ」と、笑いながらクレーマーが語った。「その混沌とした様子は簡単に想像できるよね。1968年のハリウッド・ボウルで起きたカオス。笑っちゃうよ」と。

クレイマーは、そんなカオスですらヘンドリックスのパフォーマンスには影響しなかったと付け加えた。芝居がかった言い方で「いいや、ものすごい騒々しさだったし、ジミは大騒ぎだったよ」とクレイマーが言った。

ドキュメンタリーでは、ベーシストのノエル・レディング、ミッチェル、マネージャーのチャス・チャンドラー、マイルズ、ウィンウッド、トラフィックのデイヴ・マンソンなどのインタビューを通じて、このアルバムの成り立ちを突き止めようとする。また、このアルバムのレコーディング中に、ヘンドリックス、ミッチェル、レディングがオリジナルのマルチ・トラックを使って行ったレコーディング・テクニックについてクレイマーが説明している。

このボックスセットのジャケットはヘンドリックスがもともと使おうと思っていたジャケットだ。それは、リンダ・イーストマン撮影のバンドのポートレイトで、ニューヨークのセントラルパークにある不思議の国のアリス像の前でポーズをとる子どもたちと一緒に撮影した写真だが、イギリスのレーベルが別の画像、つまりヘンドリックスが嫌悪した女性たちのヌード写真と差し替えてしまったのだ。一方、アメリカのレーベルは赤とオレンジのライブ写真を使用した。そして、付属の48ページの本にはローリングストーン誌のデヴィッド・フリックとプロデューサーのジョン・マクダーモットのエッセイ、アルバム制作時にクレイマーが撮影した写真、ヘンドリックスの手書きの歌詞、ヘンドリックスが書いたレベールへのメッセージ、レーベルだったワーナーからメモなども収録される。

『エレクトリック・レディランド』デラックス・エディション トラックリスト
Electric Ladyland Deluxe Edition

Disc 1: The original album
Disc 2: Electric Ladyland: The Early Takes

1. ”1983 … (A Merman I Should Turn to Be)”
2. ”Voodoo Chile”
3. ”Cherokee Mist”
4. ”Hear My Train a Comin”
5. ”Angel”
6. ”Gypsy Eyes”
7. ”Somewhere”
8. ”Long Hot Summer Night” (Demo 1)
9. ”Long Hot Summer Night” (Demo 3)
10. ”Long Hot Summer Night” (Demo 4)
11. ”Snowballs at My Window”
12. ”My Friend”
13. ”At Last … the Beginning”
13. ”Angel Caterina (1983)”
15. ”Little Miss Strange”
16. ”Long Hot Summer Night” (Take 1)
17. ”Long Hot Summer Night” (Take 14)
18. ”Rainy Day, Dream Away”
19. ”Rainy Day Shuffle”
20. ”1983 … (A Merman I Should Turn to Be)”

Disc 3: Jimi Hendrix Experience: Live At The Hollywood Bowl 9/14/68

1. Introduction
2. ”Are You Experienced”
3. ”Voodoo Child (Slight Return)”
4. ”Red House”
5. ”Foxey Lady”
6. ”Fire”
7. ”Hey Joe”
8. ”Sunshine of Your Love”
9. ”I Wont Live Today”
10. ”Little Wing”
11. ”Star Spangled Banner”
12. ”Purple Haze”