「一塁強襲二塁打」&「1イニング2三塁打」、スカウトも驚愕「ドラフト上位候補」

 第97回全国高校野球選手権大会は11日、今大会NO1野手と評されていた関東第一(東東京)のオコエ瑠偉外野手が登場。衝撃的なプレーの連発で前評判に違わぬ大活躍を演じ、12−10で高岡商を破って16強入りを決めた。

 ナイジェリア人を父に持つ3年生が大観衆4万3000人の度肝を抜いたのは、なんといっても50メートル5秒96という超の付く俊足だろう。

 初回先頭。一塁線への痛烈なゴロに飛びついた相手一塁手が打球を弾いた。ボールがファウルゾーンを転々とした隙を突き、オコエは一気に二塁へ到達。記録上は「一塁強襲二塁打」という世にも珍しい、安打を成立させた。

 さらに3回先頭、右中間への打球で悠々と三塁打とすると、この回猛攻で再び2死満塁で打席が回ってきた。そして、前打席のVTRを見ているかのような右中間への打球で三塁打。こちらも世にも珍しい「1イニング2三塁打」をマークした。

 4打数3安打4打点という結果以上に鮮烈なインパクトを残したオコエ。ネット裏に陣取っていた某球団のスカウト幹部も「驚いた。すべてのプレーに対して積極的。ドラフトも上位候補に入ってくる」と、うなるしかなかった。

1年半前のセンバツでのオコエの居場所とは…

 今やプロも素質を認める高校トップ選手となった背番号8だが、時を遡ること1年半前、当時は背中に番号はなく、居場所はスタンドにあった。それこそが、オコエの急成長の原動力となった「挫折」だった。

 2年春に出場した選抜ではメンバー入りできず、2回戦に進出したものの、オコエは応援席からグラウンドを駆ける仲間を応援することしかできなかった。周囲には、悔しさをぶつけることもあったという。

 米沢貴光監督が下級生時代のオコエを回想する。

「やればすぐに変わるなという感じはありました。でも、線も細くてごはんも食べない子。ちゃんとしてない面もあった」

 そこで奮起を促すようにして、選抜メンバーから外した。この悔しさをバネに伸びてくれるという親心もあったのだろう。その証拠に「もとから春の都大会からは使うつもりだったんです」と選抜後の公式戦からレギュラーに起用。この狙いが当たった。オコエは見違えるような成長曲線を描いた。

米沢監督「とんでもないボールに手を出すこともよくあった」

 ハードな練習に食トレも加わり、183センチ、85キロという強靱な肉体を作り上げた。加えてバッティングのムラも減った。米沢監督は言う。

「あの春から1年間で一番成長したのは確実性。(以前は)とんでもないボールに手を出すこともよくあった」

 試合に出られないからこそ己を見つめ直し、弱点を克服し、長所を伸ばす。その作業の繰り返しでオコエは飛躍を遂げた。

「1つ勝てて良かったです。ホッとしています」

 試合後、初めて踏みしめた聖地でのプレーを振り返ったオコエ。あの春の屈辱を、この夏の歓喜に変えるため、甲子園を全力で駆け抜けていく。