選挙カーの値段を知ってますか?
【意外に知らない素朴な疑問】選挙カーの値段
この4月は、統一地方選が2回もあって、各所で選挙カーが活躍していたわけですが、今回は、その選挙カーを実際に取材してみました
。
今回取材協力いただいた、神奈川県議会議員のIさん。今回の選挙では、県議(県議会議員)の場合4月3日に告示、12日に投票というスケジュールになっていまして、実際に選挙活動ができる稼働日数は9日間となっていました。
選挙が始まるとなると、多くの候補者たちは、選挙事務所を探し、さまざまな選挙用品をレンタルすることになります。事務所内で使うテーブル、イス、事務機器に、揃いのジャンパー、拡声器などもそうですね。その中でもオオモノとなるのが選挙カーで、もちろん多くの場合がレンタカーということになります。
今回取材協力していただいた、I議員の車両もレンタカー。神奈川県内の選挙区ですが、このレンタカーは八王子ナンバーを付けていました。ずいぶんと選挙区から遠いところからやってきたようですね。このレンタカーは普通のワンボックスですからそれでも入手しやすいクルマです。大変なのは、ワンボックスでも屋根に上がることができる車両です。そうなると、レンタカー争奪戦となるわけですね。もちろん、ただ『クルマがあればいい』ということではないんです。以前の選挙で、借り主の候補が当選したことのある、『当選実績のある縁起の良いクルマ』こそが必要なのは言うまでもありませんね。
ずばり、約50万円から上は数百万円!
多くの場合は、普通のレンタカーを借りてきて、そこにさまざまな選挙用の機器を装着していきます。つまりレンタカーだけでなく、車両の仕立てが別に必要となりますね。そのクルマの装備は、まさにピンキリ、ということになります。
クルマに乗せるフレームが10〜15万円。看板と照明でさらに10〜15万円。また、車両のルーフにはスピーカーを載せるわけですが、そのレンタルも数十万円(スピーカーの性能により異なります)。また、アンプもスピーカーに対応したものが必要です。そして、候補者やウグイス嬢が使うマイクも複数本必要となりますが、これも松竹梅とあるようです。
このあたりは候補者のこだわりが詰まってくることになるわけです。自らが発する声をより鮮明に多くの有権者に伝えたい、という想いが強ければ強いほどマイクやスピーカーは上級グレードになっていくわけです。ちなみにこのI議員は、スピーカーとマイクを自前で用意しているほど、です。
その他、専用のバッテリーや充電器、インバーターやアイソレーター変換機器などが必要で、その取り付け工賃、調整、さらには管理保守費などまでを入れるとまだまだかかることになります。
レンタカー会社によっては、最初から選挙カーをオールレンタルのパッケージ車として貸出している会社があるようです。その場合、軽自動車なら20万円くらいから、ハイエースクラスで30万〜50万円くらいのリーズナブルなプライスでの提案もあるようです。しかし、クオリティなどで納得できなかったり、妥協できない部分などこだわりがあると、選択肢には挙がってこないとも…。
また、看板その他、この施工などを行うのも、地元の支援者の業者、という選択となることが多くなります。選挙区内に施工ができる業者がいるのによその業者を使う、なんてことはできませんからね。そのため、最終的なコストは若干高くなってしまいがちとも。しかし、ここには目をつぶるという候補が多いことは確実ですね。ちなみに、こだわりを持つI議員の場合は、この看板の照明を中から当てる透過式照明の看板を採用していました。
あれもこれもとやっていくと、お金はいくらあっても足りません。選挙カーといえば、ワンボックスカーに候補者の名前の入った看板を載せる、というイメージですが、中には看板を載せずに車体にポスターを貼ったりして済ますところもあるようです。また、選挙経費を抑えるために、普段から使用している所有車の軽ワンボックスやワゴン車を選挙カーに仕立てる場合もあるようです。
ちなみに、レンタカーのような「有償で選挙運動用自動車を使用した場合」は、一定限度内での公費負担で補助されています。レンタカー代は1日上限1万5300円(つまり9日間で13万7700円)が公費負担されます。燃料代(ガソリン又は軽油代)も同じで9日間の上限は6万6150円。これらは、選挙管理委員会に請求して公費から負担してもらうことになります。
この選挙カーのドライバー費用も同様に、上限1万2500円(朝8時から夜8時までの12時間の拘束)、選挙カーに乗り込み、候補者の名前を連呼したり政策の説明をする、いわゆるウグイス嬢は、上限日当が、1万5000円。ついでに挙げると事務員の上限日当1万円といった具合で補助されます、いずれもその支払人数が限られており、全て選挙管理委員会に事前に登録しなければなりません。
選挙区内をどこまでくまなく走り回れるか!
では、実際に選挙カーはどのように運行されているのでしょうか?
選挙カーのレギュレーションで見てみると、毎日午前8時から午後8時までの間に限って、自動車からの連呼行為が許されています(写真の許可プレート必携)。ただし、学校、幼稚園、保育園や病院、診療所などの診療施設周辺はNG。さらに、移動なしで同一場所での拡声器使用は1回10分、1回につき15分以上の休止時間をおく必要がある、といった具合になかなかこと細かく決められています。むやみやたらと大きな音声でがなり立てていると思われるかもしれませんが、拡声器からの音量は騒音の規制基準値プラス10デシベルまで、と決められており、候補者側もそれなりに配慮もしています。
選挙区内の全戸に声を届けたい、という候補者の思いを汲み取り、選挙カーは選挙区内をくまなく回ります。くまなく、とはその言葉の通り、選挙区内にあるクルマが通れる道はすべて、という具合です。そのため、選挙カーのドライバーに必要とされるのは、運転技術以上に『どこまで道を知っているか』と思われます。住宅街の中の道路を熟知していれば効率よく声を届けることができるわけです。車載カーナビはもちろん、選挙区のマップを持ち出して、実際にどこをどう回ったのかを記録しながら選挙カーは突き進んでいきます。

看板を載せた車両となると、全高への配慮も重要となります。特にワンボックス車の場合相当な高さとなるわけです。今回の取材対象車両で全高2.8mです。高さ制限のある高架下やトンネルはもちろん、住宅街では、各家庭の庭木にも注意する必要がでてきます。庭木で候補者の顔写真を傷つける、なんてことがあったら大変ですからね。
こんな時期にクルマを運転していて、選挙カーの後ろに付いてしまってイライラしたことがあるドライバーの方も多いでしょう。選挙カーは、どうしてもノロノロと走っていきたいものです。そのため幹線道路はできるだけパス して、住宅街を重点的に走行する、というパターンが多いです。後続車が付けば、すぐに道を譲って、そちらへの配慮も忘れませんよ。
数年に一度の出番を待つ選挙カー。実は、選挙カーをじっくりとチェックしてみると、各陣営の動きもわかる! かもしれませんよ。
(文・写真:青山 義明)
