レガレイラ

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 ひと目、いやひと言でもいいからコメントが欲しいと思い、美浦トレセンの奥にある厩舎へ向かった。お目当ては、宝塚記念に出走するレガレイラ(牝5歳、美浦・木村)。その時すでに午後4時すぎ。厩務員たちの帰宅時間のため、取材は断られるだろうと思いながらも門をたたくと、木村哲也調教師自ら取材に答えてくださった。

 調教過程は至って順調。木村師も「計画通りいったので。ホッとしている」と笑顔を見せた。昨年の同レースの敗因は、右前第1指骨の剝離骨折明けだったということが大きいと振り返った上で、「調教に対してもレースに関しても、能動的に取り組んでくれているので、すごい精神力のある馬だなと感じています」とその精神面を評価。数々の名馬を生み出した名門厩舎の中でも、レガレイラは“優等生”なんだなと感じた。

 普段のレガレイラについて問うと、「普段は怖いよ?今日の午後とかも結構機嫌が悪い(笑)」と回答。レースが近いことを馬自体が察知しているといい、「(競馬が近づくにつれて)すごく集中してくる。自分で体を作ってくるから。自分で緊張して、自分で追い込んでくる」とグランプリ女王のストイックな一面を明かした。キャリアを重ねて行く中で培ったようで「トップホースのトップコンディションという感じ。勝手に仕上がるよ」と競走能力だけではない、名馬としての素質の高さを語った。

 取材日は1週前追い切りの日。この日のレガレイラは、美浦Wの3頭併せで最後方からスタート。終始馬なりだったが動きは実に軽快。6F85秒3−37秒9−11秒4のタイムを刻み、2歳新馬フィリオソラーレと併入、オリオアルセーリオ(4歳1勝クラス)に半馬身先着した。有馬記念V馬がなぜ新馬と併せ馬を?という疑問を木村師へぶつけると、「一番の主役は今週に関してはレガレイラじゃない」という驚きの回答。理由は、先週の新馬勝ちをした僚馬フィリオソラーレ(牡2歳)を主役としていたからだった。

 フィリオソラーレは、東京の新馬戦開幕週のデビュー。ノーザンファーム生産馬で木村厩舎所属、鞍上はルメール騎手という、競馬ファン待望の組み合わせだ。木村師は「勝たなきゃダメなんだよ。たかが新馬だけれどされど新馬。負けられないから。何とかして(勝ちを)取りに行くのは、限りなく“絶対命題”」と語気が強まった。「新馬を勝たせるために、レガレイラと競い合わせることでしっかり走ることを覚えさせる。そのためにレガレイラの力を借りた」と追い切りを振り返った。その言葉通り、フィリオソラーレは見事にデビュー勝ちを収め、大一番へ挑む先輩への勝利のバトンをつないだ。

 木村厩舎の調教のカギは、勝ちへの“逆算”。調教メニューの組み方について、「まず『今週の主役は?』と考える。一番いい追い切りをするならどうするかと逆算して考えていく。人が調整しているのではなくて、この馬とこの馬と組んでやっていけば、最後こうなるなというのを事前にミーティングして考える」と語る。火曜夕方に、長いミーティングを実施。各担当者から意見を吸い上げ、「馬のコンディション、性格、脚色…と一頭一頭精査していって、併せ馬の隊列を決めたり、単走にしようとか。先行で走らせようとか。全部考えている」と強い馬作りの秘けつを見せてくださった。

 話をレガレイラに戻そう。宝塚記念の最終追い切りは、美浦Wで厩舎おなじみの3頭併せ。隊列の真ん中で左右からプレッシャーを受けながらも、徐々にギアを上げて加速。6F85秒3−38秒1−11秒2をマークしてロスパレドネス(3歳1勝クラス)に1馬身先着、アルセナール(5歳オープン)と併入した。今週の主役は、春秋グランプリ獲得へ文句なしの最終リハーサルを敢行。共同会見で、木村師は「狭いなかでも脚を使えるかというシチュエーションを組んで、ゴールに向かって頑張ってくれればと思い、プランニングしました」とコメントした。

 取材中、最も気になったのは木村師の馬への深い愛情。馬ファーストなだけでなく、馬への敬意が溢れていた。レガレイラについても「グランプリどうのこうのじゃなくて、2歳、3歳、4歳とG1を勝っていることがどれだけすごいことかっていうのは、噛み締めながら管理している」と話すトレーナー。強い馬作りには、強い信念と愛情が大切なんだと感じた取材となりました。約40分も拙い取材に丁寧に答えてくださって、ありがとうございました。

(デイリースポーツ・野里美央)