FRB議長就任 独立性の堅持で物価安定図れ
米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性がかつてないほどに脅かされる中で、ウォーシュ新議長が就任した。
イラン情勢の混迷でインフレが再燃するという難題も加わり、金融政策の舵(かじ)取りは困難を極めている。独立性を堅持して、米国だけでなく世界経済の安定に貢献してもらいたい。
ウォーシュ氏はホワイトハウスでトランプ大統領を前に宣誓し、新体制が発足した。6月の連邦公開市場委員会(FOMC)から議論を取り仕切ることになる。
宣誓就任式は、FRBの本部で行われるのが慣例だ。ホワイトハウスでの開催は、1987年にグリーンスパン議長が就任した時以来、約40年ぶりだという。トランプ氏の今回の人事に対するこだわりの強さを示すものだろう。
「改革志向のFRBを率いる」と語ったウォーシュ氏は、三つの難題に取り組むことになる。独立性の確保と物価高の抑止、FRB内部の亀裂の修復である。
年初はインフレの落ち着きを受けて、2026年は2回程度の利下げを予測する声が多かった。だが、高関税政策の影響もあり、早期の利下げ観測は遠のいた。
さらに、中東危機で一変した。原油価格が高騰して物価高が加速している。FRBは昨年12月以降、政策金利を3・50〜3・75%に据え置いているが、次の一手は利上げとの見方も増えている。
利下げ圧力をかけ続けてきたトランプ氏は「完全な独立性を保ってほしい」と述べ、ひとまず新体制を尊重する姿勢をみせた。
ただ、トランプ氏の言動は予測が難しいだけに、今後、金融政策を巡って軋轢(あつれき)が強まることも予想される。圧力をどのようにかわすか手腕が問われよう。
政治圧力を回避し、独立性を確保するには、何より国民からの信頼を得ていかねばならない。
パウエル前議長は、コロナ禍を受けた物価高を「一時的」と見誤って物価急騰を招き、国民の不信を招いた。ウォーシュ氏は物価動向の分析を深め、同じ轍(てつ)を踏まないようにしてほしい。
FRB内部の不協和音も深刻だ。前回会合の声明で、将来の金融緩和を示唆する文言に対し、3人もの反対票が出た。丁寧に合意形成を図ることも大切になる。
一方、日本にとって、FRBの利下げが遠のけば、日米の金利差が縮小せず、円安・ドル高の圧力が強まることになる。FRBの動向を注視し、財政金融政策を検討していくことが重要だ。
