【中村 清志】英国風パブチェーン「HUB」投資家たちが”最強のワールドカップ銘柄”と位置付ける「これだけの要素」

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今年6〜7月、アメリカ、カナダ、メキシコの3ヵ国で共催されるサッカー・ワールドカップ(W杯)の開催が迫ってきた。5月15日には日本代表メンバー26人の顔ぶれも決まり、いよいよ本番ムードが高まりを見せている。

それは市場とて同じこと。4年に1度のビッグイベント、多くの投資家たちは株価上場の期待が高まる銘柄をとっくに仕込み始めている。とりわけ今大会を特徴づけるのが、時差が13〜16時間あるために、日本代表戦をはじめとする多くのカードが、日本時間の深夜〜早朝のキックオフとなる点だ。

当然、熱狂的なサポーターたちは皆「時間など関係ない」と言い切るだろうが、とはいえ現実的には、「自宅での観戦は近所迷惑になりそう…」「どうせなら友人たちと思いっきり騒ぎたい!」と考える人が大半だろう。そこで浮上してくるのが、家でも屋外でもない、第三のプレイス――英国風パブチェーンで知られる「HUB」の存在だ。

【前編記事】『いにしえの大学生御用達「HUB」いつのまにか“大復活”を遂げていた…業績右肩上がり「客離れの心配ゼロ」に』よりつづく。

実は「競合他社がほとんどいない」

株式会社ハブが運営する「HUB(ハブ)」は全国に94店舗(2026年2月末時点)を構える英国風パブチェーンだ。同店はかねてより、ワールドカップを含む大型スポーツイベントが開催される際には必ずと言っていいほど、市場で話題になることで知られる。

当然、「居酒屋・パブ」や「スポーツ」というカテゴリでは他にも魅力的な業態はある。それでも「HUB」が注目されやすいのは、他とは一線を画す、独特なビジネスモデルにある。外食業界に詳しい中村コンサルタント代表の中村清志氏が解説する。

「『HUB』のウリとして、スポーツイベントを店内放映し、試合観戦の興奮を共有しながら社交体験を深められる場所として存在価値を発揮している点が挙げられます。スタジアムのような迫力ある映像と臨場感ある音響も相まって、熱狂的な体験を可能としている。これは、ここ最近の“モノからコト(体験)へ”という消費トレンドに合致しています。

また、スポーツというジャンルは得てして初対面同士でも共通の話題として盛り上がりやすい。いわば『HUB』は交流の場としても機能しているわけです。一度訪れた人なら分かる通り、店内は日本人のみならず多くの外国人でごった返しているのも同店の特徴。ゆえに他の飲食店よりインバウンド需要が高いと言えます」

付け加えるならば、ここに、英国パブの文化である「キャッシュオンデリバリー」という要素も掛け合わされていく。客が注文の度にカウンターで代金を支払い、商品と引き換えるこのシステムは、「店側にとっては人件費の抑制はもちろんのこと、客側の『もう1杯』のハードルを下げる働きがあり、結果、客単価アップにつながっている」(中村氏)という。

以上を総合すると、実は「HUB」という業態は、他の居酒屋チェーン、ならびスポーツバーどちらとも被らない、“競合他社がほとんどいない”唯一無二の存在と結論づけることができるのだ。

W杯が終わっても、成長余地はまだまだある

それを反映するように、近年では「HUB」の好業績ぶりが目立つ。株式会社ハブが今年4月17日に発表した2026年2月通期決算によれば、売上高113億3500万円(前年比6.6%増)、営業利益5億3400万円(同17.9%増)、経常利益5億2800万円(同19.8%増)、最終利益6億900万円(同36.7%増)と、増収増益を達成している。

とはいえ、ワールドカップは1ヵ月ほどで終わるから、関連銘柄の株価上昇なんてたかが知れている――。そう考えてしまう人もいるかもしれない。だが、その判断は早計すぎる。「HUB」には成長余地がまだまだたくさんあることを忘れてはいけない。

前出の中村氏はこう指摘する。

「同社は2023年に東証プライムから東証スタンダード市場に変更となりましたが、注目してほしいのが株主構成です。

デジタルエンターテインメント事業を主力とする株式会社MIXI(20.02%)を筆頭に、『ロイヤルホスト』などを手掛けるロイヤルホストホールディングス株式会社(14.83%)など、著名企業から約35%の資本参加を受け入れています。彼らとは単なる資本関係のみならず、すでにデジタルマーケティングや物流などの面で思わぬシナジー効果を生んでいます」

たとえば商品力の強化。「HUB」と言えばの、英国料理の定番「フィッシュ&チップス」も知らず知らずのうちに改良が施されているという。その他、高付加価値フードメニューの開発、ドリンクではコスパを重視した480円の「HUBシリーズ」や、若年層を意識した「モクテル」などのノンアルコール商品の拡充などがそうだ。

中長期戦略で店舗網をさらに拡大か

さらにデジタルマーケティング施策にもつながる、アプリ版「HUBメンバーズカード」も大きな変化のひとつだ。かつてはアナログの会員カードだったのをアプリ化し、さらにメンバーアプリ限定クーポンを配信することで、顧客の来店頻度は大きく向上した。

メンバーズシステムの会員数は順調に増えており、2026年2月末時点で総メンバー会員数は70万9556名(前年差+17万9000名)、アプリ登録者数は29万878名(+6万6000名)にのぼっている。何よりも「メンバーズシステムに蓄積された顧客データを精緻に分析し、顧客属性に応じたパーソナライズなクーポン配信を実施するなど。デジタル活用の最適化につながっている」のが強みだという。

そして、「HUB」最後の矢として、同社が掲げる「創業50年ビジョン」達成に向けて策定された中長期戦略「SmasH47」に触れておきたい。これは、出店ターゲットを未出店エリアを含む47都道府県に拡大し、グループ200店舗体制の構築を目指す、というものだ。

その具現化のために、出店戦略の投資額も2025年度には1.9億円だったものが、2026年度は5.9億円(計画値)と3倍以上に拡大。すでに2025年4月には、初のJR駅改札内店舗(エキナカ)を出店したほか、これまであまり手を出してこなかった商業施設内店舗やコラボレーション店舗なども着実に推進している。

ワールドカップの興奮が終わったとしても、しばらくは「HUB」の動向に目が離せなそうだ。

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