病院は検査費で儲けている…和田秀樹が警鐘「患者をカモにする医師がよく使う患者への"声かけ"2つ」
※本稿は、和田秀樹『健康診断の数値におびえず楽しく生きる50の心得』(オレンジページ)の一部を再編集したものです。

■検査データばかり見る医者の根本問題
どんなに専門の臓器にまつわる医学知識に詳しく、治療法や投薬などに造詣が深くても、患者をひとりの人間として診ることができない医者もいます。問診も触診もろくにしないで、パソコン画面に映し出された検査データだけから治療法や薬を決めてしまうようなタイプは、僕に言わせたらかなり危険な医者です。
こんな医者が育ってしまう理由は、日本の大学医学部の教育方針にあると思っています。
医療心理学講座などを開設している大学も一部にはあるようですが、基本的には、医学部の学生が患者の心理を学ぶことはありません。唯一、精神科の授業がチャンスなのですが、精神科の教授には臨床心理学の専門家が全国に一人もいないことが問題です。
■医学部教育の問題点
ドーパミンと統合失調症の関係など生物学的な話や薬物療法の話ばかりでは、患者の心が置き去りにされ、検査データから理屈をこねくりまわして治療法や投薬を導き出してしまうような医者ができあがっても、不思議はありません。
もし医者の卵である若者たちが、カウンセリングや精神療法を専門とする指導者から学ぶ機会があれば、患者がどんなことに不安を感じるのか、どういった声かけで患者の気持ちがラクになるのか、そういった視点が育つはずです。
医学部の入試には面接が課せられているので、コミュニケーション能力の高い学生たちが集まっているはずです。にもかかわらず、卒業するころには患者と目も合わせないで、電子カルテばかりを見る医者になってしまう。患者の心理を教育しないということは、日本の医学界が、患者の気持ちに寄り添う必要性を感じていない証左といえるでしょう。
■マスクを強要する医師
また、コロナ禍が過ぎてもう2年以上がたちますが、いまだに診察のときにマスクが必要な医者や病院は問題です。患者にマスク着用を義務付けるのは、「患者の表情を見る気はありません」と宣言しているのと同じ。逆に医者がマスクをしている場合も、「笑顔を見せて患者を安心させる気はありません」と言っているようなものです。
インフルエンザの流行期や感染症が疑われる患者の診察では仕方ありませんが、そういった確かな理由もないのに、ただ何となくマスク着用を強要するような医者や病院は、信頼に欠けると僕は思います。
■目が合わなくても「いい医者」の条件

一方で、顔はこちらを向いているけれど目が合わない、という医者もいます。医者も人間ですから、その人のパーソナリティというものがあります。目は合わないけれど、ちゃんと患者の話を聞いていて、触診もして、その人に最適な医療を探ろうと熱心に心を傾けているかもしれません。口コミに「目が合わない」と書かれていても、その1点で候補から外すのではなく、問診の様子なども合わせてトータルに判断してほしいと思います。
そうは言っても、やはり目が合わない医者は嫌だというなら、それは相性の問題。遠慮なく、次の医者を当たってください。
■「検査」は儲かる
すすめられるがまま検査を受けている人は、ちょっと立ち止まってほしい。検査は、売上の7割くらいが病院の儲けになります。院外処方のため、たいした稼ぎにならない薬に比べて、検査は圧倒的に儲かるのです。今の段階で絶対に必要というわけではない検査をすすめてくるなら、頭の中で金儲けの算段をしている可能性があります。
金儲け主義の医者や病院からすれば、ポツポツと不具合が出始める40〜50代は、いいカモです。検査をすればするほど、何かしらの異常値が見つかる。老化現象なのだから当たり前で、自己治癒力やちょっとした生活改善で基準値に戻るかもしれません。
ところが、異常値=病気とばかりに薬を処方し、今後何十年にもわたって通院するようレールを敷く。体のいい収入源を確保したわけです。
■特に儲けが大きい検査とは
特に病院の儲けが大きいのが、がん検査です。最初のがん検診そのものにはたいした利益はありませんが、がんの疑いがあると、その後にMRIやPETなどのより高度な精密検査が待っています。がんと診断された後も、標準治療から高額な自由診療までさまざまな治療法が用意されていて、さらには入院や投薬、リハビリなどによる安定収入が見込まれます。

がんは怖い病気、死ぬ病気だと多くの皆さんが思い込んでいるので、こうした医者がすすめるメニューに疑問も持たず従うことでしょう。
日本は先進国の中でも、もっとも多くのがん検診を行っている国です。ところが先進国で唯一、がん患者が増え続け、死亡者数は横ばいの国でもあります。がんは早期発見、早期治療が重要だという理屈でがん検診をすすめているわけですが、もしそれが本当に有効であれば、もっと死亡者数が減ってもいいのではないでしょうか。
医者がすすめる検査が過剰かどうかを判断するには、その検査の意味合いを聞いてみるといいでしょう。もし、医学的な理由がなく、「念のため」「いい機会だから、ついでに」といったあいまいな言葉が返ってきたら、儲けに走っているのではと疑ってもいいかもしれません。
■検査を受ける際の患者の心構え
検査を受けるかどうかは、自分で決めることです。不要だと思うなら断ってもいいのです。たとえば、医療被曝の心配がある胸部エックス線検査は、肺結核が蔓延しているわけでもない今の時代に健診で行う意味がないし、肺がんの発見にもつながらないため欧米では推奨されていません。また、自覚症状がない人が受ける心電図検査も、検査している数分の間の状態しか分からず、検査のあとに不整脈が出てもキャッチできません。
それでも健診を受けよう、検査をしようと決めたなら、もし何か病気が見つかった場合にどうするかを、事前に考えておくべきです。検査結果を聞いて頭が真っ白になっているところに、医者から次々と追加の検査や入院の指示を出されて、冷静な判断ができる人は少ないでしょうから。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
