詐欺グループ・郵便局・買い取り業者の利害一致、レターパックで「錬金術」…カギは高い換金率
だまし取ったクレジットカードで大量購入、業者へ転売
だまし取ったクレジットカードを使って詐欺グループがレターパックを購入し、買い取り業者に転売していた事件で、福岡県警は、グループが高い換金率に着目して利益を得ていたとの見方を強めている。
商品を仕入れたい業者、売り上げを伸ばしたい郵便局の利害も一致していた構図が浮かぶ。(岡林嵩介)
売り上げは前年度の9倍
捜査関係者によると、詐欺罪などで起訴された被告(54)らの詐欺グループが、詐取したクレジットカードの限度額を買い取り業者の当時の店長に連絡。店長がレターパックの購入枚数を福岡城西郵便局の当時の局長(51)に伝え、グループが買い上げて業者で換金していたとされる。この手口は被告が考案したという。
業者と同郵便局は福岡市早良区にあり、距離は約400メートル。2018年頃、冊子の広告を局長が店長に依頼し2人の接点が生まれた。詐欺グループに店長の知り合いが含まれており、3者がつながったとされる。
捜査関係者によると、被告らは23年頃から、同郵便局で500円切手の購入を始めた。店長の提案を受けて24年10月頃からは、レターパック(1枚600円と同430円)を購入していたという。
詐欺グループは24年6月〜25年3月、同郵便局で約6000万円分のレターパックや切手を購入し、換金。だまし取ったスマートフォンの転売なども含め、計約3億円を得ていたと県警はみている。被告は調べに対し、黙秘している。
局員が数人という同郵便局のレターパックの売り上げは24年度、約4600万円に上り、前年度の9倍を超えた。九州内に600以上ある同規模局の中で突出していた。同郵便局の局員は「(局長に)言われた通りやるしかなかった」「他の郵便局ではこんなことはなかった」と県警に説明したという。
換金率は80%前後
なぜ、レターパックだったのか。
老舗の古物業者によると、ブランド品の財布やバッグの換金率は40〜60%とされる。一方、書類などを割安で送れるレターパックは需要が見込める上、供給元が日本郵便に限られることもあり換金率は80%前後に上る。事件に絡んだ業者は約86%だった。
県警は、大量購入が可能な点も理由の一つとみる。切手も換金率は80%前後だが、古物営業法上の金券に該当し、日本郵便はクレジットカードでの購入は1回10万円を上限としている。一方、レターパックには制限がない。詐欺グループは一度に100万円分を購入したこともあったという。県警幹部は「クレジットカードとレターパックを使った錬金術だ」と語る。
県警は4月、レターパックの不正購入を黙認し犯罪収益の受け取りを手助けしたとして、局長ら2人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)ほう助の疑いで福岡地検に書類送検した。起訴を求める厳重処分の意見を付けた。2人は容疑をおおむね認めている。県警は、局長らが職場での評価を上げるために不正購入を黙認したとみている。
「厳格な運用を」
詐欺グループの摘発を受け、業者とフランチャイズ契約を結んでいた会社は昨年5月、業者の営業を停止し、契約を解除した。また、日本郵便九州支社は「再発防止策は講じているが、防犯上の観点から詳細は差し控える」としている。
読売新聞は同支社を通じて局長に取材を申し込んだが、「捜査中であり、取材はお断りする」との回答があった。店長からは15日までに返答がなかった。
郵政問題に詳しい熊本学園大の坂本正・名誉教授は「レターパックは利便性や公益性があり、高い換金率から見ても金券に準じて考えるべき商品だ。重要な通信手段が犯罪の温床とならないよう、日本郵便には厳格な運用や管理が求められる」としている。
事件の概要
投資名目で若者らからクレジットカードなどをだまし取ったとして、福岡県警は昨年3月、高阪被告らを詐欺容疑で逮捕した。その後の捜査で、被告らが詐取したカードで福岡城西郵便局から購入したレターパックや切手を買い取り業者に売っていた疑いが浮上。業者の当時の店長は組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑で今年2月に逮捕され、罰金100万円の略式命令を受けた。
