なぜ若い世代から選ばれる? 超売り手市場で苦難の若手採用を実現した町工場の”独自の魅力”とは【岡山】
この春に卒業した、岡山県内の高校生の求人倍率は2.95倍と、統計開始以来過去最高となりました。また、香川では3.94倍と、こちらも非常に高い水準となっています。
【写真を見る】なぜ若い世代から選ばれる? 超売り手市場で苦難の若手採用を実現した町工場の”独自の魅力”とは【岡山】
大手企業も採用に前向きな超売り手市場において、地方の中小企業は若手の人材確保に苦戦しています。
そんな中、岡山市北区にある社員約30人の建設業者では、この1年半で4人も10代の若手が入社しました。
数ある企業のなかで、なぜこの中小企業が若い世代から選ばれたのか。その訳に迫りました。
1年半で4人の若者が入社 活気あふれる職場で
鉄筋どうしを圧力と熱で接合する「圧接」。
建築物の柱の骨組みを作るこの作業は、建物の安全性を左右する欠かせない技術です。先輩から手ほどきを受けながら圧接の基礎を学んでいるのは、この春、高校を卒業した新入社員です。
岡山市北区の建設業・サンヨー圧接は、社員約30人の会社ですが、この1年半で4人もの10代の社員が入社しました。
(高木天晴さん(18))
「仕事もそうですけど会社で先輩たちと話すのも楽しいです」
(定森朱斗さん(19))
「やっぱりみなさん優しくて、自分的にはとてもありがたいことです」
(居森友孝さん(18))
「見学に来た時にわいわいしていていいなと思った」
(サンヨー圧接 宮本晃典 社長)
「会社の雰囲気が明るくなっているし、ありがたいですね感謝しかないです本当に」
若手獲得のカギは、抱いていた”劣等感”
今でこそ若手の活気にあふれる職場ですが、高校新卒者の入社は、実に2020年以来。若手の採用には近年、苦戦が続いていたといいます。
(サンヨー圧接 宮本晃典 社長)
「もう全然入ってもらえなくて、世代交代が順調かといったらそうでもなかったので、本当にどうしようかな今後と」
岡山労働局によりますと、今年(2026年)3月に卒業した県内の高校生の求人倍率は、2.95倍と過去最高を記録しました。若手の人材不足などから、企業の高校生採用はここ数年激化しています。大手企業も積極的に採用に乗り出している中、中小企業は思うように若手を獲得できていない現状があるのです。
このままでは会社の未来が危ない…。宮本社長は3年前、中小企業の採用支援などを行う岡山市中区の会社・ノーラッドに相談し、高校生向けの採用ページを開設しました。
掲載内容などについて話し合っていたところ、あることに気がついたと言います。
(ノーラッド 柳 栄年 社長)
「時短終了とか高月給とかそう言ったところですね。『ウェブにも出しましょう、もっと強みだと思いましょう』という感じになりました」
圧接は専門の資格が必要で、技術次第で工期を短縮できることから休日も多く、比較的年収は高めです。しかし、宮本社長は給料が高い=きつい仕事だと思われてしまうのではないかと考え、あえてアピールしていなかったといいます。さらに…。
(サンヨー圧接 宮本晃典 社長)
「 ”休みが多い=仕事がない” ということなので逆に恥ずかしかったんですけど、柳社長から『それサンヨー圧接のパワーポイントですよ』と言われて、ああそうなのかなと」
宮本社長が劣等感を抱いていたのは「休日の多さ」。しかしそれは、ワークライフバランスを大切にする今の若い世代にとってこの上なく魅力的だったのです。
(藤原好誠さん(18))
「現場が早く終わったら解散になるので、自由な時間も多いかなという感じです」
若手入社で先輩のモチベもアップ
これまで気付いていなかった自社の強みを、採用ページでも全面的に押し出しました。それを見た高校生の反応などをノーラッドが解析し、サンヨー圧接が自らの足で高校に出向いて直接PR。このデジタルとアナログの融合で、担任の先生や高校生の目に留まるようになり採用につながりました。
(ノーラッド 柳 栄年 社長)
「いくらウェブでどうのと言っても、無いものは出せないです。本当にいいものを持っているし、社長のキャラや言葉選びもそのまま出ているものだと思うので、それは(高校生に)非常にフィットするものではないかなと思いました」
若手の入社は、先輩社員たちにとってもモチベーションになっているようです。
(大賀常正さん(75))
「ええコブになったが。うれしい」
(玉川貴嗣さん(36))
「先がある話なので根気強く教えていくだけです。みんなやる気はあるので教える側もやる気が出る感じです」
(入社1年半 藤原好誠さん(18))
「一からずっと付きっきりで教えてくれるので、わかりやすくて本当にありがたいと思っています」
超売り手市場の高卒採用 採用のその先も考えて
ふとしたきっかけで求人活動に対する考え方が変わり、好転し始めた若手の採用。しかし、全国の高校新卒者の37.9%が就職後3年以内に離職しているという現状があり、建設業に限ると、その値は4割以上にものぼります。
建設に欠かせない圧接の技術を継承し続けていくためにも、採用することがゴールではないと、宮本社長も気を引き締めます。
(サンヨー圧接 宮本晃典 社長)
「夢や希望を持って入ってくれたんだったら、少なくとも定年まではうちの会社に入って良かったな、楽しいなと思ってもらう。そこだけですね。やっと入ってきてくれた子をどうやって育てようか、楽しみもあるけど不安なことももちろんあるんですけど、それも含めてワクワク感が止まらないですね」
(ノーラッド 柳 栄年 社長)
「こういう、気持ちが動く・元気になる、ということが私は最初だと思っていて、それがないと何もできないので、そこが今振り返ったら今回のスタートラインだったのかなと思います」
超売り手市場が続く、高卒採用。自社の強みを掘り起こし、愚直にPRすることで、知名度や会社の規模にも勝る独自の魅力を生み出すことができるのかもしれません。
