【憲法改正議論】「緊急事態条項」創設巡る条文イメージ案について各党意見表明…今後の展開は?専門家が解説
14日、衆議院の憲法審査会で、憲法改正の「緊急事態条項」の創設を巡り衆議院法制局が作成した条文のイメージ案について、各党が意見表明を行いました。
「緊急事態条項」のイメージ案では、大災害などで国政選挙が長期間実施できない事態を想定し、「国会議員の任期延長」などについて、段階的な対応が示されています。
「国会機能の維持」のため、「衆議院議員総選挙の延期及び参議院の緊急集会の射程の明確化」、「選挙困難事態における国会機能の維持」、「オンライン国会」の3点を項目としてあげています。
14日の衆議院憲法審査会で、自民党の新藤議員は、イメージ案について、「おおむね合意が取れる内容と議論が分かれる内容がある」としたうえで、「総選挙延期の明文規定」や、「参議院の緊急集会の期間」については、合意形成ができるのではないかと述べました。
一方、中道改革連合の国重議員は、緊急時だけではなく、平時の国会機能についても議論すべきとの立場を強調しました。
(中道改革連合 国重 徹 議員)
「発生確率が極めて低い緊急事態における国会機能の維持もさることながら、国民生活に広く関わる平時の国会機能をいかに維持するか、これこそ国民のための憲法議論としてより優先すべき課題ではないか」
その上で、国重議員は、「緊急時の議員任期延長だけではなく、平時の臨時会の召集期限や解散権の制限についても議論すべき」と述べました。与党側は、緊急事態条項のテーマを絞ることで議論を加速させたい考えですが、野党側からは、慎重な姿勢も示された形です。
憲法改正については、高市首相が、5月3日の憲法記念日に行われた改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで改めて意欲を示しています。
(高市首相)
「議論のための議論であってはなりません。私たち政治家が国民の皆様の負託に応えるために行うべきなのは、決断のための議論です」
また高市首相は、「憲法は、時代の要請に合わせて本来、定期的な更新が図られるべきだ」などと訴えました。高市首相は、2027年春までに憲法改正の発議にめどをつけることに意欲を示していて、国会では改正に向けた論点の絞り込みなど議論が加速しています。
憲法改正に向けて、この先、議論はどう展開していくのでしょうか。そして、各党のスタンスは?スタジオで政治ジャーナリストの青山氏に解説していただきます。
(スタジオ解説)
(徳増 ないる アナウンサー)
憲法改正を巡り、国会で緊急事態条項のイメージ案について意見が交わされましたが、まず、そもそも、この緊急事態条項とはどういうものなんでしょうか。大規模地震や感染症など緊急事態で選挙や国会が開けないときのルール作りを、今、考えているということになります。国会や政治をどう止めないようにするのかというのがテーマです。青山さん、こうした議論が浮上した背景にはどういったことがあるんでしょうか?
(コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏)
もちろん今の憲法には緊急事態にどう対応するかという条項がないのは間違いないんです。ただこの議論が浮上した最大の理由は、憲法のどこを改正するかと考えた時に、「憲法九条」、つまり戦力の保持や自衛隊の問題に踏み込むと、どうしてもイデオロギー対立になってしまう。ところが災害などの時にどのように国会を維持するかということはイデオロギーとは関係ないので話を進めやすい。日本は災害国ですし、コロナウイルスという感染症の記憶も新しい中で、合意を得やすいというところが、一つ大きな理由だと思います。
(徳増 ないる アナウンサー)
ここをきっかけにして憲法改正に入っていくということなんですね。そして、一つのテーマがこちらです。国会議員の任期延長があげられていますが、これは、緊急事態の時に、衆議院、参議院の議員の任期を、憲法の規定にかかわらず緊急事態が終わって選挙ができるようになるまで延長できるとされています。青山さん、この国会議員の任期延長については、これは何が狙いで、どこまで理解できる話なんでしょうか?
(コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏)
例えば東日本大震災の時も、地方選挙ですけれども延期した例がありました。ところが災害が起こった時に、衆参国会議員の任期が来たらどうするかは定められてないんですね。大きな災害時に任期満了で議員がいなくなってしまうと、行政、首相以下内閣が独走しちゃう可能性があるんですよね。それを避けるためにも、選挙をやれる状況じゃない場合は任期延長することを担保しようという議論ですね。
(徳増 ないる アナウンサー)
衆議院と参議院、両方あってもそれでは不十分ということなんですね?
(コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏)
今は参議院の方で何とかそれを代替しようというルールだけはあるんですけれども、不十分だというのがこの議論の根本にあります。
(徳増 ないる アナウンサー)
津川さんは衆議院議員をされていた立場からどのように考えますか?
(レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏)
今、青山さんがご説明されたように、大きな災害特に東日本大震災のようなことがあった時に、「選挙やるっていったって…できないじゃないか」というのはすごく分かりやすい議論なんですね。ただ、やっぱりこれは「民意をどう反映するか」という民主主義の根本の部分なので、慎重に議論するところだとは思います。特に、今お話があったように、参議院の緊急集会という条項が今の憲法も54条にあります。衆議院が…例えば解散している時に緊急に議論しなければならない時には参議院で議論するという規定があります。ですから、この緊急事態条項に反対する考え方からすると、今の憲法でもできるじゃないかと。確かに参議院も任期がありますから、いなくなっちゃうことがあるんですが、それでも最低6年はあるので…。「6年以上緊急事態っておかしくないじゃないですか…おかしくないですか」という議論もあります。ですから、そもそも緊急事態というのはどういうものを想定するのかというのは、ある程度、具体的にしていかないと、実はこの議論はなかなか深められないのかなというのが…。
(徳増 ないる アナウンサー)
具体的に知りたいところです。そして、もう一つ大きなポイントなのがこちらです。「緊急政令」です。ちょっと聞き慣れないですけれども、今回のイメージ案では、どうしても国会を開けないような状況の時は、内閣が法律と同じ効力をもつ、この「緊急政令」を出せるといった案も、たたき台として、今、示されているんです。青山さん、この「緊急政令」は、内閣に権限が一気に集中してしまうような不安を感じてしまうんですが…プラス面と懸念される面というのはどういったところでしょうか?
(コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏)
プラス面は、例えば日本が武力攻撃を受けた時とかは、従来の法律を遵守していられない、いわゆる「戒厳令」的なものを出さなきゃいけない。戦後の日本にはなかったけれども、これからもないとは言えないわけですよね。そういった緊急事態に政府が国会の承認を飛ばして法律を変えられる権限ですよね。ただ、これは先ほど不安だっておっしゃいましたけれども、何が緊急かによってですね、「今もう内乱状態で緊急だから」って言って個人の権限を制限してしまうこともできなくはないかもしれない。緊急事態の線引きをどうするかが非常に重要になってくるとのは間違いないと思います。
(レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏)
過去の歴史もありますからね。
(徳増 ないる アナウンサー)
今後の議論に注目していきたいと思います。「緊急事態条項」についてお伝えしました。
