鈴木淳之介(C)日刊ゲンダイ

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【北中米W杯 日本代表選手の恩師を総直撃】

【恩師直撃】三笘薫は「もともとはパサー」 ドリブル突破を生み出す久保建英との共通点(川崎U12元監督・郄粼康嗣)

 DF鈴木淳之介(デンマーク1部コペンハーゲン/22歳)

 2025年10月のブラジル戦で歴史的金星を挙げた日本代表。その立役者となったのが、同年6月のインドネシア戦で代表デビューしたばかりの22歳の若武者だった。帝京大可児から2022年に湘南入りし、プロ3年目にボランチからCBにコンバートされたことで劇的な成長を遂げた万能型DFは、どんな高校時代を過ごしたのか。同高の仲井正剛監督を直撃した──。

  ◇  ◇  ◇

 ──仲井さんは2003年に帝京大可児中学のサッカー部発足時に監督に就任。2004年から高校の指導を始めたそうですね。

「はい。私はスポーツクラブやサッカースクール事業をしているコパンの社員で、そこから学校に派遣されている形です。2012年にいったん同高を離れ、7年間は中部大学を指導していましたが、19年から再び高校に戻ってサッカー部の監督をやらせてもらっています」

 ──そこから7年連続で高校サッカー選手権に出場しています。

「そうですね。県代表という目標からスタートして年代別代表、日本代表を育てる、そして日本一を取るというところにフォーカスしています。その過程で、久保藤次郎(柏)、鈴木淳之介が日の丸を背負ったことは朗報。久保君は私が直接指導したわけではないんですが、後輩のいい見本になっていると思います」

 ──鈴木淳之介選手の入学の経緯は?

「淳之介が中学時代に所属していた岐阜VAMOS(バモス)は私の出身クラブ。井上昭二前代表は恩師です。その井上さんから『見てくれないか』と直々に言われた選手の1人が彼でした。よく聞いてみると、淳之介は(Jの)FC岐阜ユースのセレクションを落ちたと。でも練習を見たら間違いなく戦力になるとすぐに分かりました。ちょうど私が帝京大可児に戻るタイミングでもあったので『ぜひ来てほしい』と返答し、来てもらいました。実家のある各務原市は片道約1時間で、通うこともできたんですが、両親の意向もあって下宿しながらサッカーに取り組むことになりました」

「コロナが彼を変えたと言っても過言ではない」

 ──入学後の鈴木淳之介選手は?

「もともと中盤で、1年の時からしばしばトップチームに入れていたんですけど、全然走れない選手でしたね(苦笑)。走りのメニューはこなせるんだけど、なぜかサッカー中は走れなくなる。練習でSBに入れてオーバーラップさせたら、『淳之介が走ったぞ』とみんなが『おー』と驚くような感じ。『それを中盤でもやるんだぞ』と声をかけましたが、思うようにいかなかったですね。そして1年の終わりから2年になる段階でコロナ禍に突入した。活動休止になり、試合もできず、私たちも大変だったんですけど、淳之介はその間に自分の映像を見ながら頭を整理してボールに触り、スプリントも沢山こなしたというんです。実際、2020年8月の和倉ユースで久しぶりに試合に出したら、急に走れるようになっていた。『メッチャ走れるようになってるやん』とビックリしました。桐蔭学園の八城修監督も『ジダンじゃん』と目を丸くしていましたけど、コロナが彼を変えたと言っても過言ではないですね」

 ──そこから湘南入りの話が進んだんですね。

「はい。湘南のスカウトも見ていて『今は練習参加を受けられないんだけど、可能になったら真っ先に声をかけます』と言われ、10月頃に行かせました。通常時の練習参加は1週間から10日間ですけど、あの時は3日しかなかった。淳之介は社交的でもないし、馴染めるかなと思っていましたけど、3日目が終わった段階で電話が来て『近々、正式オファーを出します』と言われた。この急展開に私も驚きました」

 ──湘南側との話し合いの場は?

「2年の選手権前でしたね。当時強化部長だった坂本紘司さん(前社長)とスカウトの2人が岐阜まで来てくれて、淳之介と両親と私で話を聞きました。その前に『コロナで他のチームまだあまり見られていないし、別のオファーもあるかもしれないから、今日は話を聞くだけにした方がいい』とアドバイスをしました。
でも淳之介は坂本さんたちが作った資料や映像を見せられてテンションが上がったんでしょう。最後に『鈴木君の将来の目標は』と聞かれて、『湘南で1年でも長くプレーすることです』と回答した。私と両親は目が点になりましたけど、本人はその場で進路を決めてしまいましたね」

 ──入団内定のリリースが出たのは2020年12月28日でした。

「直前に湘南のユニフォームや旗を持ちながらの記念撮影も行われましたけど、本人は誰にも言わなかったですね。同じ2003年生まれには青森山田の松木玖生(サウサンプトン)がいて、世間の注目を集めていましたが、そこに淳之介のリリースが出たもんだから、同級生もみんな驚きを隠せなかったと思います。湘南の同期には阪南大高の鈴木章斗(広島)や帝京長岡高の松村晟怜(湘南)がいますが、彼らが内定したのは3年の夏だった。湘南としても『可能性のある淳之介のような選手はいち早く囲い込みたい』という思惑があったんでしょうけど、彼の獲得スピードはとにかくメチャクチャ早かったですね。その大きな期待に応えて、グングン成長してほしいと私は心から願いました」(=つづく)

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト)

▽鈴木淳之介(すずき・じゅんのすけ) 2003年7月12日生まれ、22歳。岐阜・各務原市出身。地元クラブのディバイン、岐阜VAMOSから帝京大可児に進み、高2でJ湘南入りが内定。2022年に湘南入りし、3年目のシーズン途中からCBとして出場機会を増やす。2025年7月、デンマーク1部コペンハーゲンに完全移籍した。2025年5月に日本代表初選出。同年10月、代表3試合目となったブラジル戦にフル出場。アグレッシブなプレーで歴史的大逆転劇の原動力となった。身長180cm・体重71kg。

▽仲井正剛(なかい・せいごう) 1979年8月6日生まれ、47歳。岐阜県出身。地元クラブ「岐阜VAMOS」で1期生としてプレー。日本クラブユース選手権(U-15)優勝。フランス語で「友達」「仲間」を意味する会社「コパン」(岐阜・多治見市)に入社。2006年、派遣先の帝京大可児サッカー部の初代監督に就任。2012年から中部大サッカー部のコーチ、監督と歴任。2019年から帝京大可児に再び指揮を執っている。