父が亡くなったあと、母は「名義変更なんて急がなくても大丈夫でしょ」と言っています。ただ、実家や預金の名義をそのままにしておくと、あとで困るような気もしています。本当にこのままで大丈夫なのでしょうか?
父名義の実家をそのままにすると、あとで相続登記が大変になる
父名義の実家を母や子どもが引き継ぐ場合、不動産の名義を変更する「相続登記」が必要です。登記とは、不動産の持ち主を公的に記録する手続きです。
以前は相続登記をしなくても罰則はありませんでしたが、2024年4月1日から相続登記は義務化されました。これにより、不動産を相続したことを知った日から3年以内に手続きする必要があり、正当な理由なく放置すると、過料の対象になる可能性があります。
母が実家に住み続けるだけなら、すぐには困らないかもしれません。ただし、将来その家を売る、建て替える、担保に入れるといった場面では、父名義のままでは手続きが進みにくくなります。
さらに、父名義のまま母が亡くなると、父の相続と母の相続をまとめて整理しなければならない場合があります。相続人が増えると、話し合いや書類集めに時間がかかるため、母が住み続ける場合でも、誰が実家を引き継ぐのかを早めに確認しておくことが大切です。
父名義の預金は自由に使えず、銀行で相続手続きが必要になる
父名義の預金も、名義人が亡くなるとそのまま自由に使い続けることはできません。銀行が口座名義人の死亡を知ると、口座は原則として凍結され、預金の引き出しや振り込み、公共料金の引き落としなどの全取引が制限されます。
これは、亡くなった人の預金が相続財産になり、相続人全員の共有財産として扱われるためです。一部の相続人だけが勝手に引き出すと、あとで他の相続人との間で深刻なトラブルになるおそれがあります。
預金を払い戻すには、金融機関で所定の相続手続きを行う必要があります。一般的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書、そして誰が何を相続するかを決めた「遺産分割協議書」などが必要です。
父の預金を母が受け取ると決めた場合でも、相続人全員の合意確認が必要です。家族仲がよくても、書類がそろわなければ銀行の手続きは進みません。生活費や葬儀費用で預金を使いたい場合も、勝手に引き出さず、金融機関に「預貯金の仮払い制度」について相談しながら進めると安心です。
母が住み続ける場合でも、家族で相続内容を決めておく
母が実家に住み続ける場合、家族としてはこれまでの生活を変えたくないと考えることは自然なことです。ただし、生活環境を変えないことと、名義を放置することは別の問題として考える必要があります。
まず確認したいのは、父の遺言書があるかどうかです。遺言書があれば、原則としてその内容に沿って手続きを進めます。遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い、実家や預貯金を誰が引き継ぐのかを決めます。
例えば、母が実家を相続し、預金も受け取る形にすれば、母の生活を守りやすくなります。一方で、実家を子どもと共有名義にする方法もありますが、将来売却やリフォームをする際には、共有者全員の同意が必要になる可能性があるため、慎重に判断しましょう。
家族で話し合うときは、「誰が相続するか」だけでなく、「固定資産税は誰が払うか」「母の生活費は足りるか」「実家を将来どうするか」といった具体的な内容まで確認しておきましょう。合意した内容は遺産分割協議書にまとめると、名義変更などの手続きを進めやすくなります。
名義変更は急ぎすぎず、期限と必要書類を確認して進めよう
父が亡くなったあと、実家や預金の名義変更をすぐに終わらせる必要はありません。ただし、「急がなくてよい」と「何もしなくてよい」は違います。不動産の相続登記には法律上の期限が設けられており、預金も父名義のままでは自由に使えません。
まずは、父名義の財産を一覧にし、相続人の確定と遺言書の有無を確認しましょう。そのうえで、母の今後の生活を守る形を家族で話し合うことが大切です。名義変更は、将来のトラブルを防ぐための手続きでもあります。期限と必要書類を確認しながら、落ち着いて手続きを進めていきましょう。
出典
法務局 不動産を相続したらかならず相続登記! 令和6年4月1日から義務化されました
一般社団法人全国銀行協会 預金相続の手続の流れ
一般社団法人全国銀行協会 ご存知ですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
