国が35歳以下の卵子凍結に20万円を助成へ 決断してから1カ月で妊娠した34歳記者の体験記
こども家庭庁が7日、今年度から始める卵子凍結の補助事業の詳細を発表した。18歳以上35歳までの女性を対象に、卵子凍結1回につき上限20万円の助成(自治体指定の医療機関などの条件あり)を行うという。36歳からは対象外と線引きがされたことになる。
卵子凍結をめぐっては、助成を一足早く始めていたのが東京都だ。現在34歳の筆者も2年半ほど前にこの助成金20万円(注・39歳まで)を使い、50万円ほどを自己負担して卵子15個を採卵し凍結。そのときの卵子を使い、このたび妊娠した。
自分と同じ年代の未婚の友人に話すと、「私も卵子凍結、興味ある!」と言われる、この話題。政府の補助事業で35歳までと線引きされると、東京都以外に住む30代前半の女性たちも「駆け込み」で凍結を考えるかもしれない。
ただ、卵子凍結には決して「凍結すれば安心」とは言えない、いくつかの注意点もあり、数年後までを見据えて慎重に考える必要がある。
まず、多くの人にとって一番のネックになるのが、凍結した卵子を使用する際にかかる自費診療の金額だ。筆者の場合、顕微授精や移植で約40万円、受精したが今回は移植に使わない胚盤胞(受精卵を数日培養させたもの)の凍結に15万円ほどと、新たに50万円超の出費があった。
凍結しても移植できない、妊娠できない可能性も
このように多額の費用がかかり、しかも数十万円かけてもうまくいくとは限らないため、凍結した卵子の使用に二の足を踏み、保険診療でできる不妊治療を選択する夫婦は多い。
通常の不妊治療で最初に取り組むタイミング法や人工授精の段階なら、保険適用で月2万円ほどの出費で済むからだ。実際に筆者も、まずは半年近く、タイミング法と人工授精を試した。
ただ授からなかったため、月数万円はかかる保険適用の体外受精に進むか、凍結卵子を使うか迷った末、凍結卵子を使うことを決断。保険診療の体外受精では再び採卵の痛みに耐える必要があることが主な理由だった。そして融解させた卵子を体外で受精させ、幸い1回目の移植で妊娠できた。
凍結卵子を使うと決めてから1カ月程度で妊娠が分かったため、結果的に「タイパ」は抜群だったことになるが、「50万円かかるのにうまくいかなかったら…」という不安は、不妊治療でただでさえメンタルが落ち込みやすい時期には想像以上に重くのしかかった。
さらに、そもそも凍結しても移植できない、妊娠できないという可能性も想定しておく必要がある。卵子凍結から数年たてば、引っ越しなどにより凍結したクリニックへの通院が難しくなる場合もあるし、ほかにも「受精卵が1つも移植できる段階まで育たなかった」など、さまざまな理由で「数十万円かけて卵子凍結をしたけれど使えなかった」となる可能性は頭に入れておいたほうがよさそうだ。
そして筆者が今後直面するのが、凍結した胚盤胞を廃棄する際の精神的負担だ。筆者の場合、今回移植したもの以外に7個の胚盤胞ができ凍結したが、第2子以降を考えたとしても7個全てを移植するのは現実的ではなく、どこかのタイミングでいくつかは廃棄することになる。
日々成長するわが子を育てながら、移植すれば赤ちゃんになる可能性があるものを廃棄する精神的負担と向き合うことになりそうだ。
「35歳」と明確に線引きがされたことで、30代前半の「駆け込み」も増えそうな卵子凍結。将来の妊娠可能性を高めるメリットも大きいが、数年単位で金銭的・精神的負担を背負うことになる場合もある。筆者と同じ30代前半や、それより若い女性たちには、年齢のラインだけにとらわれず、長期的な視点でじっくりと考え、悔いのない選択をしてほしい。
文/中村まほ 内外タイムス
