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アンティーク・コイン投資は、コインの種類によって値動きの特性が異なります。なかでも「古代コイン」は、特定の国に依存しない性質や、世界共通の文化遺産としての普遍性を持つことから、値動きが比較的安定しやすい資産とされています。本記事では、田中徹郎氏の著書『資産運用の視点からみた 決定版 アンティーク・コイン投資のすべて』より一部を抜粋・再編集し、古代コインが値下がりしにくい理由を解説します。

「古代コイン」の相場はジミだが、ジワジワと値上がりしている

世界で初めて丸く生成された金属コインを使い始めたのは、今のトルコにあったリュディア王国(もしくはリディア王国、紀元前7世紀から同547年)の時代です。

図表1が、リュディアで使われていた代表的なコインです。直径が1センチほどと小さいものなので、右端の写真は2倍に拡大して掲載しています。

(図表1)古代リュディアの1/3スターテル、紀元前6世紀ごろ(左二つは現物を2倍に拡大、右端は3倍にそれぞれ拡大)

この金貨の現在の相場帯は、NGC社の鑑定評価AUクラスで100万〜120万円ほど、同XFクラスで80万〜100万円ほどといったところです(※)。

(※)NGC(Numismatic Guaranty Company):コインの真正性・保存状態を国際基準で評価する米国の大手第三者鑑定機関。保存状態は「MS>AU>XF>VF」の順に高評価となる。

この銘柄に限らず、古代ギリシャ・ローマや古代オリエントのコイン相場はジワジワと値上がり中です。

(図表2) 紀元前6世紀のオリエント

ただし、世界のコイン相場を俯瞰してみると、たとえば近年値上がりしたウナ・ライオン5ポンドや、ゴシック・クラウンなどに比べると随分ジミですし、数年前に急騰した中国コインやイギリスの現代コインなどと比べてもおとなしい値動きです。

なぜ古代コインには「自国買いマネー」が入りにくいのか?

コインが値上がりする要因について考えてみたいと思います。

ある国のコインが値上がりする要因はいくつかあるのですが、代表的なものは以下のとおりです。

1 コインを発行した国や地域の経済が急成長し、同時に富裕層が持つ資産が増えていること

2 その銘柄のデザイン(たとえば描かれた人物や生物)に人気があり、多くの収集家が欲しがること

3 残存数が少なく希少性が高いこと

4 歴史的にみて価値のあるコインであること


このうち古代コインにとって一番大切なのは1です。上述の1/3スターテルにも当てはまりますが、多くの古代コインは、たとえば現代のギリシャやトルコ、イタリアという国の概念は当てはまりません。

あえて言うなら「ギリシャ・ローマはじめ地中海地域で発行されたコイン」、あるいは「古代オリエントで発行されたコイン」というように、特定の国ではなく広い地域で発行されたコイン、言わば“領域コイン”と捉えるべきだと思います。

このように古代コインには、「コインを発行した国」「コインを発行した地域」という概念はないのです。たとえば、現代のトルコの人たちは古代リュディアに対して郷愁を抱くかもしれませんが、自国のコインという感覚は薄いのではないでしょうか。

同じことが古代ギリシャ・ローマにも当てはまります。たとえば、現代ギリシャ人は「ロードス島のテトラドラクマ(図表3)」に対して、「自国コイン」という意識はさほどないのではないでしょうか。

(図表3)ロードス島のテトラドラクマ、紀元前230〜205年(約1.7倍に拡大。現物の直径は23ミリほど)

逆に言えば、古代コインはいずれも現代的な感覚での国境概念が乏しく、そのため自国コインを収集しようとするマネーが入りにくいのだと思います。

世界共通の文化遺産…古代コインが「値下がりしにくい」理由

さらに、古代コイン全般に、世界共通の文化遺産という見方もできるかもしれません。

簡単に言えば「中国人であろうが、ヨーロッパ人であろうが、日本人であろうが、多くの収集家が自らの起源を古代コインに見出すことができる」ということです。

私は、この普遍性の高さが古代コインの「ジワジワ値上がり感」に影響を与えるとともに、「値下がりしにくい安全な資産」の理由になっているとも思います。

もしこの考えが正しければ、古代コインはアンティーク・コインのなかでもかなり安全性の高い領域ということになるはずです。

田中 徹郎

株式会社銀座なみきFP事務所

代表/FP