《交際相手のカラダを切断》懲役6年求刑の佐藤紗希被告(23)、弁護側が主張する実母からの虐待…その生い立ちと同棲男性とのリアルな“関係性”
同居する交際相手男性(以下、Aさん)の乳首や指を切断したなどとして計3件の傷害事件に問われている佐藤紗希被告(23、2025年4月の逮捕当時)。
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前編では、被告人がAさんを孤立させて逃げられない環境を作り出し、「乳首が取れても再生するか見たい」「(他の女との)結婚指輪ができないよう指を切断」など、猟奇的な犯行に及んでいた事案について、検察官の主張をもとに振り返った。
判決前最後となるこの日の公判では、事件の法的評価をめぐって検察官と弁護人が真っ向から対立する意見を述べていく。ライターの普通氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
※本記事には一部ショッキングな犯行態様が含まれます。
決して消えない事件の記憶を呼び起こす指の欠損
検察側はいずれの犯行も、被告の機嫌を損ねて家を追い出されたら生きていけないと考える心情に乗じていると指摘。Aさんは表面上、同意せざるをえなかったにすぎず、その環境を作ったのは被告人なので同意があったと誤信する事情はないとした。
また、仮に同意があるとしても、それは程度や社会的相対性によるものであり、交際継続を引き換えに乳首、指の切断はその事由にあたらず、性的行為の延長とも到底言えないと意見。
強い肉体的苦痛はもちろんのこと、Aさんは回復不能となった指の欠損個所を目にする度に、被害を思い出す精神的苦痛も抱えるであろう点も重大とした。また事件後、被告が3週間も逃亡し、Aさんを愚弄するような投稿を行なっていたこと。そして、公判中もAさんの親に「Aさんによる自傷行為」と虚偽の手紙を送付するなど情状も悪い。
以上により、傷害罪の中でも特に重い部類であり、実刑は免れないとして懲役6年の求刑があった。
弁護人は「同意があった」「殴られるのが好き」と主張
弁護人は、傷害行為に及んだことは認めるものの、Aさんの同意があった、もしくは同意があったと誤信していたので故意がなく無罪であると主張した。
弁護側は裁判で取り調べられた証拠をもとに、Aさんは被告人からの暴行を受けて「殴られるのが好き」と発していたこと、包丁で頬を切られる際は自ら差し出し、その後は笑顔で写真におさまっていたことなどから、暴行に同意している関係性にあったことを主張。
それに基づき、乳首切断事件については、抵抗と呼べるのは行為中に浴室内で後ずさりしている程度のもので、それまでの経緯から延長線上として同意があったと思われるとした。
薬指切断についても、犯行時に行われた指を束ねる行為に抵抗もせず、睡眠薬も自ら飲んでいる。さらに、冷蔵庫に証拠となり得る切断された指が入っているのにもかかわらず、Aさんは警察に駆け込むなどしていないと主張。
3件目の暴行についても、Aさん自ら同意する文言を述べていると主張した。
これらより、嫌であれば抵抗できるはずのところ、従前までの関係性から暴行を受け入れていた。また、犯行後に残された写真でも飼い犬と戯れるなど落ち着いた様子や、被告人が海外に出かけた際も、Aさんからおどけた動画を送る、警察に助けを求めようと思えばできたなど、精神的に圧迫する関係性ではないとした。
以上から、Aさんの同意、もしくは同意があったと誤信する状況であったとした。
さらに、こうした暴力行為の背景には、被告人の精神特性と実母の虐待が影響していると見られ、それらは被告人自身ではいかんともしがたいものであったと主張。
また、事件を反省し、カウンセリング受診を継続し、養父の監督のもと生活を改め、すでに昼間に働いている点、そしてAさんと示談が成立しており、執行猶予を求める文言が付されている点、これらを考慮し、立ち直りに向けて歩み始めている被告人には執行猶予が相当であると弁論した。
判決の言い渡しは6月
検察官と弁護人の最終意見は60分ほどに渡った。通常であれば10分程度で終わるこの手続きにしては長い。そこには故意を争っているという事情はあるにせよ、過去から綿々と続いてきた歪ともいえる被告人とAさんの関係性が生んだものにほかならない。
検察官、弁護人の意見をほぼ表情を変えずに聞いていた被告人。最終意見で「今回のことをこれからも忘れず、考えていきながら、これからも治療を受けながら生活していきます」と述べた。
判決は6月に言い渡される。
(了。前編から読む)
◆取材・文/普通(裁判ライター)
