山口組の組員が「国を脅して」まで「山口組の解散」を熱望した、理屈では考えらえない行動
かつて20万人もの構成員を擁した暴力団。
覚せい剤の輸入や賭博、みかじめ料の徴収で莫大な収益を上げ、1980年代の年間収入は推計8兆円に達したと言われる。だが平成に入って以降、暴対法の制定や警察の行き過ぎた捜査、メディアによる批判的な報道が原因となり、暴力団は衰退の一途をたどってきた。
では、暴力団が社会から消えていくことは、我々一般国民にとって「良いこと」だけなのだろうか?しばし「必要悪」として語られてきた“やくざ”の実態を、『やくざは本当に「必要悪」だったのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。
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兵庫県警に追い詰められる山口組
事態はこうして何も動かなかった。神戸新聞も山本次郎の一人デモを一行も報じなかった。
山本次郎は『むちゃもん』の中で記している。
そのころ山口組は兵庫県警に追い詰められていた。
田岡は入院先で恐喝容疑の臨床尋問を受け、地道(行雄、若頭)は山口組解散を進言して田岡に灰皿をぶつけられていたような時期だ。
おれはすでにヤクザ否定論者だったが、しっかりしたヤクザの更生策も用意せず、暴力団解散ばかりを言い立てる国と警察は許せなかった。
ヤクザも主張すべきときは体を張って主張しなければ、言われっぱなしで終わる。
しかし国を相手取るにはヤクザの理屈を離れた大義名分がいる。
食管法の不備は万人にわかる。これを利用して国に一泡吹かせればいい。
暴力団対策は国の重大問題
明らかな失政だから国は表立った動きが取れないはずだ。裏で解決させるために、田岡のつき合いを利用して政界フィクサー・児玉誉士夫を引っ張り出す。児玉から日本船舶振興会会長・笹川良一につなげて競艇のテラ銭を半分吐き出させる。そのカネでヤクザの更生施設をつくらせる。そういう構想を描いたわけだ。
派手に食管法の不備をつけば、「国をなんぼでもユスれる」という考えは親しい山口組幹部にも伝えたが「次郎は頭が狂った」と尻込みするだけだった。
当然だろう。こんなことで国の暴力団対策が改まるわけがない。だいたいやくざの更生に国の予算を使うことに国民の賛成が得られるのか。やくざは自分の好き勝手でやくざになり、やくざになってから、またやくざを辞めようとしてからの苦しさは自業自得だろうから、それから立ち直るのも自力でやるべきではないか。国の関知するところではない、と。
しかし暴力団対策に警察は人員と予算の圧倒的部分を割いている。暴力団対策が国の重大問題であることは確かである。だが、暴力団の側から更生するので予算を出せ、と言い出すのは通りにくいだろう。
しかし、山本の暴力団解散計画が失敗しても、当時は山本以外、組員の側から解散を口にする者さえいなかったのだ。むしろここで大書すべきは、山口組の一員が山口組の解散を自ら発意したという一事である。他の暴力団の一員から解散が提案されたという事実を私は知らない。
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