入山禁止のバリケードを設置する市職員(4月30日、秋田県鹿角市で)

写真拡大 (全2枚)

 冬眠明けでまだ山にいるはずのクマが、東北、北陸の市街地に出没している。

 宮城、秋田、福島の各県では、4月の目撃件数は前年の4倍前後。大型連休で人の行き来が増える中、識者は「人に慣れたクマが出ているとみられ、見かけたら建物内に避難して」と呼びかけている。

 東北各県の4月のクマ目撃件数(速報値、集計中の岩手を除く)は、青森、秋田、宮城、福島の4県で前年より増加。青森が前年比2・3倍の105件、宮城が同4・5倍の116件、秋田が同4・6倍の389件、福島が同3・9倍の112件と、ハイペースで目撃情報が集まっている。

 そのため、各県が住民への注意喚起で運用しているクマ出没警報・特別注意報は4月中に6県全てが発表。いずれも過去最速だった。

 4月の出没で衝撃的だったのは、福島県郡山市と仙台市のケースだ。

 郡山市で6〜8日に現れたクマは、JR郡山駅から約3キロ西の住宅地の奥深くに侵入。市は花火や放水などで追い払いを試みた。最終的に高速道路のり面に逃げたところを緊急銃猟で駆除したが、対応した市農業生産流通課の結城弘勝課長(54)は「こんな出没は初めて。追い払いで街中に向かわせる恐れもあり、リスク回避が難しかった」と振り返る。

 17〜19日に仙台市青葉区に現れたクマは、緊急銃猟が困難な市街地を徘徊(はいかい)。最後は宮城県庁から約800メートル北西のマンション敷地の茂みに10時間以上とどまり、麻酔銃で捕獲された。隣接する住宅の植木には爪痕も残され、住人女性(86)は「こんな都会にクマが来るなんてびっくりだし、怖い」と声を震わせた。

 異例の出没は東北以外にも広がり、富山市では4月29日、犬の散歩中だった40歳代女性がクマに襲われ、顔や首などを負傷。翌日駆除された。場所は神通川の河口に近い平野部の住宅街で、河川敷が侵入経路になった可能性があるという。

 出没したのは3件とも雄の成獣(体長約1・5メートル)だった。クマの行動に詳しい東京農工大の小池伸介教授(生態学)は「昨秋、人里の良さを覚え、再び出てきている可能性がある。遭遇時はクマ鈴などで存在をアピールするより、車や建物に避難する方が安全だ」と話す。

 外出時の準備については「現在の出没地域は、昨秋の出没地域と重なる部分がある。旅行先の昨秋の出没地域も確認した方がいい」とアドバイスする。

大型連休で警戒…ハイカーにホーンやスプレー貸与

 大型連休のさなか、民間事業者や自治体はクマへの警戒を強めている。

 キャンプ場を備える岩手県釜石市の観光施設「根浜シーサイド」では、利用客にクマスプレーを無料で貸与。4月中旬からは「みちのく潮風トレイル」を歩くハイカーにも、大音量が鳴る「クマ除(よ)けホーン」とスプレーの貸与を始めた。観光シーズンに合わせた措置で、スタッフの佐藤奏子さん(47)は「いざという時に身を守れるようにしてほしい」と訴える。

 貸し切りバスなどを運行する仙南交通(仙台市)は、全車両にクマ対策スプレーを常備。連休中も乗客の乗降時は乗務員がスプレーを携行して警戒にあたる。

 秋田県鹿角市は山菜採り中の人身被害をなくそうと、1日から6月末まで、過去に被害が多発している十和田高原地区を「入山禁止」に。バリケードを11か所に設置した。

 福島市は、クマの移動経路とみられる河川沿いにクマが嫌がる音を出す装置を昨年から設置。センサーがクマを感知すると音を出して追い返す。4月には8台を追加し、計14台が稼働中だ。昨年は設置場所から下流域で目撃情報がなかったという。