店内ガラガラ「かつや」の客離れが止まらない…”安さ”という取り柄を失ったカツ丼王者の末路

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圧倒的なコスパとボリュームで人気を集める、カツ丼専門チェーン「かつや」。店舗数は全国507店舗(2026年3月時点)と業界日本一、このご時世にカツ丼を600円台から提供し、多い時には一日7万食も売り上げるという、いわば「気軽に食べられる庶民の味」を地で行くチェーン店だ。

ところが、長きにわたって“カツ丼の王者”として君臨していた「かつや」が、ここ最近は、値上げや競合チェーンの成長などを理由に、意外にも苦戦を強いられていた。

店内ガラガラ?数字が物語る「客離れ」の実態

「平日の昼時なのに店内がガラガラ」「すぐ近所に『松のや』ができたせいか、みんなそっちに行くようになった」。ここ最近、「かつや」の周囲ではこんな声を聞くようになった。事実、同チェーンの“客離れ”は、数字が物語っている。

かつや」を運営するのは、DIY用品卸売業とホームセンターを展開するアークランズ社の子会社で、外食事業を手がけるアークランドサービスHD。同社が発表している売上高前年同月比推移表によれば、今年1月以降の「かつや」の既存店客数は、1月:95.0%→2月:92.1%→3月:95.8%と、前年割れが続いている状況だ。

もう少し、時間を遡って2025年通期(2025年1月〜12月)の数字を見てみると、売上高こそ前年比102.9%と堅調に推移していたが、昨年秋頃を境に客数はガクンと下落。通期の客数は最終的に前年比98.0%に終わっている。

かつや」が客離れを起こしている理由は実にシンプル。1つは2025年10月に行われた値上げの実施だ。

ご存じの読者も多いと思うが、「かつや」のカツ丼と言えば、かつてはワンコインで食べられるのが魅力だった。それが原材料の高騰や人件費の上昇などを理由に年々価格が上がっていき、現在では最もポピュラーな『カツ丼(梅)』も620円(税込682円)にまでなっているのだ。

それでも、どのチェーン店も物価高にあえぎ、値上げを余儀なくされている昨今では“十分安い”範疇にあると思えるが――次いで挙がる理由が、ライバルの存在だ。

「安さ」という取り柄を失ったら…

これまで、業界内において「かつや」という存在を際立たせていたのは、間違いなく“安さ”という一点に尽きる。

職人不要を実現したオートフライヤー導入による人件費削減、全店舗の約9割が郊外という出店コストの低さ、さらにおなじみの「割引券」によるリピーター獲得……「かつや」のビジネスモデルを特徴づける、そのすべてが、つまるところ“安さ”という強みを生み出していたわけだ。

ところが前述の通り、様々な影響から価格を維持できなくなったことで、強みそのものが失われつつある。そうなると、代わって台頭してくるのは、「かつやより少し高い、でも美味しさは上」と言われてきたライバルチェーンたちだ。

松屋フーズホールディングス傘下の「松のや」はその筆頭だろう。巨大グループならではの大量仕入れによるスケールメリットやオペレーションの効率化、店舗拡大戦略によって急成長、ついに昨年には店舗数で「かつや」を抜き、業界首位に浮上した。

それ以外にも「さぼてん」「和幸」「かつさと」など、今や業界内は群雄割拠。おまけにカツ丼を提供する定食チェーンにファミレス、はてはスーパーまでも敵となる。そんな厳しい状況下にあって、これまで成長を支えてきたカツ丼の安売りが通用しなくなってしまった、というわけだ。

無論、運営元のアークランドサービス社もこの状況になるとは、ある程度予想していたことだろう。実際、2020年頃に思い切った策に打って出る。【後編記事】『オワコン化すすむカツ丼チェーン「かつや」の嘆き《しんぱち食堂を横取りされた…》買収計画の夢ついえる』へつづく。

【つづきを読む】オワコン化すすむカツ丼チェーン「かつや」の嘆き《しんぱち食堂を横取りされた…》買収計画の夢ついえる