「国家情報長官室がトランプ弾劾の内部告発者を刑事告発」「FBI長官が2020年選挙の不正証拠発言」11月中間選挙に向け騒がれ始めたアメリカ政治の「闇」
トランプ弾劾に関与した二人を刑事告発
アメリカの11月の中間選挙まであと半年余りとなったが、これを目掛けてアメリカの政界の闇を暴くすごい情報が、今後相次いで出てくることになることが予測される。というのは、これを示唆する大きなニュースが2つ出てきたからだ。
1つ目は、国家情報長官室が、トランプ大統領の弾劾に関与した元監察官と内部告発者に対する刑事告発状を司法省に送ったという話だ。パッと聞いても即座に理解できるような話ではないが、噛み砕いて説明するので、しばらくお付き合い願いたい。
弾劾というのは、大統領や裁判官などの身分保証された公職者が、その身分保証に安住して不正行為を行なっているということが大いに疑われる場合に、その責任を厳しく追及し、辞めさせるかどうかを決める手続きということになる。もちろん、選挙で選ばれた大統領を弾劾する場合に、生半可な証拠で安易に弾劾に進めるようなことがあってはならない。弾劾が開始されると、大統領は自己弁護に膨大な時間とエネルギーを求められ、内政にも外交にも大きなエネルギーを注ぐことができなくなる。それは国家的な損失だとも言える。
ところが、非常に慎重に進めなければならないはずの弾劾の手続きが、実はかなりいい加減に進められた結果として、2019年のトランプ大統領の弾劾が進められることになったのではないかと、国家情報長官室は判断したのである。ちなみに国家情報長官室というのは、CIA、FBI、NSAといった別々の機関が集めてきた情報を、統合して分析・整理する部署で、アメリカの情報部門のトップに位置する。
この国家情報長官室が刑事告発したのは、トランプ大統領がウクライナ政府を不当に脅したとされる疑惑をめぐる内部告発者(元CIAアナリストのエリック・チャラメラ氏と見られているが、明確に示されてはいない)と、その告発内容を吟味して、議会に対して「この内部告発は信頼性が高いから、弾劾するに値する」という判断を伝えた、元情報機関監察総監のマイケル・アトキンソン氏の二人だ。
要するに、「トランプ大統領が不当にウクライナを脅しています。私はその証拠を掴んでいます」と内部告発者が訴え出て、その内容が正しいかどうかを吟味する立場にいる監察総監のアトキンソン氏が、「内部告発者の言っていることは極めて信憑性が高い」と太鼓判を押した結果として、議会に対して「トランプ大統領を弾劾すべきだ」と進言したという流れだ。「内部告発者がいて、監察総監もそれに間違いないと言っているなら、大統領を弾劾するのは当然だ」という流れができて、議会に設置された弾劾裁判の場にトランプ大統領は引き摺り出され、この弾劾裁判をどう乗り切るかで、トランプ大統領は忙殺されたという流れなのだ。
この二人が刑事告発の対象とされたのは、内部告発者の告発内容がそもそも信憑性が薄く、その信憑性の薄い告発内容を十分に吟味することなく、監察総監が告発内容に信憑性が高いとのお墨付きを与えたと、見られているからだ。
バイデン、ウクライナ検事総長の首を飛ばす
2019年7月に、トランプ大統領はウクライナのゼレンスキー大統領に電話を掛けた。オバマ政権時の副大統領だったバイデン氏がウクライナを舞台に汚職を働いていた疑惑が当時持ち上がっていたので、この件に関する話をトランプ大統領は口にしていた。オバマ政権時にウクライナ検察は、ウクライナのエネルギー会社ブリスマの汚職容疑を摘発しようと動いていたのだが、この汚職捜査を指揮するウクライナのショーキン検事総長をはじめとした検事たちを、バイデン副大統領はクビにしろと、2015年にウクライナ政府に圧力をかけ、実際にクビにさせていたのである。
ちなみにこの前年の2014年の4月に、バイデン副大統領の息子のハンター・バイデン氏がなぜかこのガス会社のブリスマの取締役に就任して、月5万ドル(今のレートで800万円)という法外な報酬を受け取るようになっていた。ハンター・バイデン氏にはガスに関する専門知識などなく、ブリスマの取締役に迎えられて、高額の報酬を受け取れる理由は、普通に考えても思いつかない。ハンター・バイデン氏に対する報酬はその後5年間にわたって支払われたから、総額は300万ドル(今のレートで4億8000万円)に及ぶ。息子に多額のお金を渡すことで、大国アメリカの副大統領にウクライナ政府に圧力をかけるようにさせて、ブリスマは自分たちへの捜査をやめさせるのに成功した疑いがあるのだ。
バイデン氏がこのような露骨な圧力を当時のウクライナのポロシェンコ大統領とヤツェニュク首相にかけていたことは、後にバイデン氏自身が武勇伝のように公然と語っている。超党派の外交問題のシンクタンクである外交問題評議会において、多くの聴衆たちの前で「あと6時間でウクライナを離れるが、検事たちを首にしないと、お前らは金を手にできないぞ、クソッタレが」のように、ウクライナで発言してきたことをバイデン氏は紹介し、笑いを取っていた。
トランプ大統領は、この件をオバマ政権時代の重大な汚職事件ではないかと考え、これに対する調査をゼレンスキー大統領に求めていた。また、同じ電話会談の中で、アメリカからウクライナへの軍事援助の話もしていた。
会談を直接聴いていたわけではなかった内部告発者
この2つの話を、2020年の大統領選挙で民主党の最有力候補となっていたバイデン氏を潰すために、トランプ大統領はウクライナに無理やり協力させようとしていたのだ。バイデン親子に対する調査でトランプ大統領が喜ぶような調査結果を出さないと、ウクライナへの軍事援助をしないと言って、ウクライナに不当な圧力を掛けたものなのだというのが、内部告発の内容だった。だが、内部告発者はこの時の通話に同席していたわけではなく、トランプ大統領がこの電話会談においてどのような発言をしたのかを、正確に知りうる立場にはなかった。つまり、そういう解釈を行った伝聞情報のみに基づいて、内部告発を行なっていたのである。トランプ大統領がそういう脅しを行なっていたという直接的な証拠は示されることがなかった。
しかも内部告発者は、告発前に民主党議会スタッフ(当時のアダム・シフ下院情報委員長のスタッフ)との間で事前に接触していながら、この件について隠蔽もしていた。そもそもこの内部告発者は民主党員であり、バイデン氏が大統領選挙に当選すると、バイデン政権下でウクライナ政策に関与し、バイデン大統領に同行してウクライナ訪問も行なっている。バイデン大統領の当選に寄与したことで、バイデン政権から見返りをもらったのではないかという見方もできるだろう。
内部告発者からもたらされた告発内容がどのようなものであれ、アトキンソン監察総監は厳密に調べる必要が当然ある。だが、アトキンソン氏は告発者本人に加えて、明らかに反トランプの立場に立っている人たちのみから事情聴取を行うだけで、トランプ大統領の電話会談に立ち会って通話内容を確認した人物への事情聴取すら行っていないのだ。にも関わらず、告発内容は信用できるとし、かつ緊急に対処すべき懸念だという評価を下して、議会に弾劾をするように促したのだ。これは大統領弾劾に進む際の標準的な手続きに基づいたものとはいえず、極めて問題があるものだと、国家情報長官室は判断した。
なお、トランプ大統領がゼレンスキー大統領に電話したことでは、もう一つ重要なことがあり、それは民主党全国委員会のサーバが2016年の大統領選挙期間中にハッキングされたという事件と関わる話なのだが、こちらの話はかなり複雑なので、今回は割愛させてもらいたい。
さて、司法省は国家情報長官室から刑事告発状を受け取ったからといって、必ず起訴するわけではない。国家情報長官室が、集まってくる情報に基づいて、刑事告発に値すると判断したのだから、司法省が最終的に起訴する確率は極めて高いと思いたいところだが、実は起訴するには非常に大きなハードルがある。連邦犯罪の時効は5年となっているのが普通なので、すでに7年近くが経過しているこの事件では、起訴するのは無理ではないかと見られているからだ。
そんなことは承知の上で、国家情報長官室は刑事告発状を送ったのであろう。本来ならば当然起訴すべき事案だが、時効によって起訴が阻まれたので断念したと司法省が発表するだけでも、事実として問題があったんだということを、世間に知らしめる意味合いは強いのではないだろうか。
FBI長官「2020年選挙不正の証拠を揃えた」
この話の他にもう一つ起こった注目すべきことは、カッシュ・パテルFBI長官の爆弾発言だ。
FOXニュースのマリア・バーティロモ氏の番組「サンデー・モーニング・フューチャーズ」に出演したパテル長官は、今から6年前の2020年の大統領選挙に関して、衝撃的な発言を行った。2020年の大統領選挙についてトランプ大統領は「とてつもない不正があったのだ、本当は自分が勝ったのに、あの選挙は盗まれたのだ」と今でもよく主張している。パテル長官はこの選挙不正を立証する証拠を揃えたというのだ。
パテル長官は、2020年段階では大統領副補佐官を務め、国家安全保障会議(NSC)の対テロ部門で活動していた、トランプ大統領の側近の一人だ。それ以前の段階では、下院情報委員会の上級顧問を務めていて、当時同委員会が集めていた選挙不正に関する証拠のことも理解していた。
ただ、第二次トランプ政権が発足して、パテル氏がFBI長官となって、当時集めていた証拠を見つけようとしても、なぜかなかなか見つからないようになっていた。彼がFBIに入ってから色々と調べている中で、FBIの中に隠し部屋があって、そこにひっそりと証拠が眠らされていたことがわかった。コンピューターのネットワークにおいても同じようなことが行われ、民主党の側としては見つけられたらまずい情報は、誰にも見つからないように、普通には見えないように隠しファイルを作って、その中に保存していたということもわかったと話している。
私がちょっと驚いたのは、こういう選挙不正の仕組みは、20〜30年の年月を掛けて作り上げられてきたものだと、パテル長官が語っていたところだ。2020年の大統領選挙でトランプ大統領の再選を阻止するためだけでなく、それよりずっと以前から、選挙不正の仕組みを作り上げる動きが継続してきたのだと語っているのだ。
こうした背景をもとに、パテル長官は、我々はすべての証拠を揃えていて、この番組の中でも発表できるレベルにはあるのだが、起訴と捜査が継続中なので、司法省や大統領の動きよりも前に勝手な行動を取るわけにはいかないと、番組では語っていた。パテル長官は今、司法省の検察官やトッド・ブランシュ司法長官代行と協力しており、この事件に関する逮捕が間もなく行われることになることを約束した。米司法省はコーミー元FBI長官を、議会証言で虚偽の証言を行ったなどの罪で、すでに昨年9月に起訴しているが、逮捕者はもっと広がる模様だ。今週(4月25日までの週)で、1つか2つこの件に関する情報が出てくるかもしれないので、目を離さないようにと、パテル長官は語った。そしてこうした疑惑を、他の疑惑ともつなげて、陰謀の全体図を示していくとも話した。
11月の中間選挙を睨んだ場合に、おそらくは9月くらいには、トランプ陣営の側が陰謀と考えているものの全貌が明らかにされることになるのではないか。
イランやキューバがどうなるかというところも目が離せないが、アメリカの政治を覆ってきた巨大な闇とされるものが、本当に現実のものなのか、それともトランプ支持派の空想に過ぎないものだったのかも、見えてくることになるだろう。こういう点でもアメリカの政治からは目が離せない。
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