(※写真はイメージです/PIXTA)

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老後資金の不安を抱えていた会社員のユウスケさん(仮名・51歳)。ある晩、Instagramで「大阪府警察」のアカウントからダイレクトメッセージを受け取ります。物価高などの社会不安に寄り添う内容から、「警察が推奨する安全な資産防衛策」だと信じ込み、指定されたLINEグループに参加。しかし、老後資金を投じたユウスケさんを待っていたのは、冷酷な結末でした。公的機関の権威を悪用した、現代のSNS投資詐欺の実態とは。

不安につけ込む「大阪府警察」を名乗るInstagramアカウント

中堅商社で営業として働く会社員のユウスケさん(仮名・51歳)。

ずっと独身で暮らしてきたユウスケさんは、定年が視界に入り始めたことで、貯蓄1,500万円だけでは、まともな老後は送れないのではないかと不安を募らせていました。また、昨今のインフレや社会保険料の引き上げで、生活の余裕もありませんでした。

そんな焦燥感に駆られていたある晩、Instagramから1件の通知が届きました。送り主のアイコンには「大阪府警察」のロゴ。アカウント名も本物と見紛うものでした。

「最近の日本では、物価や税金の上昇が続き、生活に負担を感じている方も多いのではないでしょうか」

メッセージは、ユウスケさんの日ごろの不安を見透かしたかのように、社会情勢への懸念から始まっていました。

そして、「当機関では、市民の皆様の生活を守る一環として、専門家による安全な資産防衛策の情報提供を支援しています」と続き、LINEグループへのリンクが貼られていました。

「警察の案内なら間違いない」思考停止でLINEグループへ

「警察がわざわざ案内してくれるんだから、変な詐欺とかじゃないよな」

参加したLINEグループには数十人のメンバーがおり、「先生」と呼ばれる人物が手堅い投資手法を解説していました。

最初は慎重を期して、貯金から「お試し」として50万円を振り込んだユウスケさん。すると数日後、指定された投資アプリの画面上では、利益が10万円も増えていると表示されました。

「本当に儲かっている……。これで老後の不安が解消される……!」

完全に思考をハックされたユウスケさんは、手元にあった老後資金から、さらに100万円を勢いでつぎ込んでしまったのです。

「口座を凍結しました」出金を阻むエラーと突然の強制退会

数週間後、利益の一部を引き出そうとユウスケさんは投資アプリの出金申請ボタンをタップしました。

しかし、画面に「マネーロンダリングの疑いがあるため口座を凍結しました」というエラーメッセージが。

「出金したいんですけど、エラーになってしまって……。どうしたらいいですか?」

慌ててLINEグループで「先生」に事情を尋ねた直後、グループから強制的に退会させられ、『メンバーがいません』という表示に変わってしまいました。

しばらくLINEのトーク画面を見つめて冷静になり、ユウスケさんはようやく自分が「警察を名乗る詐欺師」が仕掛けた罠にハマったことに気づいたのです。

すでに手遅れであることを理解し、「入金してしまった150万円はもう二度と戻ってこない」という絶望的な事実を認識した次の瞬間。

「ふざけるな! なにが警察だ、騙しやがって……! 俺の貴重な老後資金を返せよ!」

激しい怒りが沸きあがったユウスケさんは、思わず握りしめていたスマートフォンを床に叩きつけました。

被害額1,800億円超…データが示す「特殊詐欺」の実態

「こんな単純な詐欺に引っかかるわけがない」と思う人も多いでしょう。しかし、ユウスケさんのケースは決して珍しくありません。

警察庁が公表した「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」のデータから、SNSを利用した詐欺被害の実態が浮き彫りになっています。

令和7年のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は1万5,142件、被害額は1,827.0億円にのぼり、特殊詐欺の被害額(1,414.2億円)を上回る極めて深刻な事態となっています。

なかでも、犯行グループはInstagramやFacebookなどのプラットフォームを利用して被害者に最初の接触を図り、そのあとLINEなどのクローズドなチャットグループへ誘導して洗脳していく手口が主流となっています。

実際、警察庁はこれらの詐欺に利用されたLINEアカウントの利用停止や削除を促すため、令和7年中だけでLINEヤフー株式会社に対して1万8,214件(うちSNS型投資・ロマンス詐欺9,505件)ものアカウント情報を提供しています。

犯行グループは、警察や有名人などの「権威」を悪用した偽アカウントを平然と作成します。ユウスケさんのように、「警察が推奨しているのだから安全だ」という信頼を逆手に取り、つけ込むのが現代のSNS型投資詐欺の恐ろしい点です。画面上のロゴや親切な言葉の裏には、資産を奪い取ろうとする犯罪組織の本性が隠されているのです。

ユウスケさんのような詐欺被害を防ぐためには、「SNS上の知らない相手からの投資話はすべて詐欺」と疑う警戒心が必要です。警察や公的機関、有名人がダイレクトメッセージで投資を勧めたり、LINEグループへ誘導したりすることは絶対にありません。

もしSNS上で投資に勧誘され、指定された個人名義や法人名義の口座へ現金を振り込むよう指示された場合は、決して応じず、すぐに警察の相談専用電話(#9110)などに相談してください。

[参考資料]

警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」