「愛着障害」こどもの”不適切行動”を減らすには…何より大事な「目の付けどころ」をキャリア約40年の専門家が解説

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「暴言、暴力をくりかえす」「構うと要求がエスカレート」「注意すると逆ギレ」「褒めたのに怒る」そんな手ごわい“不適切行動”をする子が激増している。その原因が「愛着障害」にあることをいち早く指摘したのが、米澤好史氏だった。わかりにくい「愛着」の概念から、独自の愛着障害論、そして効果的な支援の方法まで、渾身の力で書き切った新刊『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』より見どころを抜粋して紹介する。

愛着障害のこどもの内面と行動の特徴

愛着の問題を抱えたこどもによく見られる不適切行動と、その背景にある感情・気持ちを説明します。

そもそも愛着障害のこどもには、心理的な3つの特徴と、それらと関係してあらわれる6つの特徴的な行動があります。それらの特徴を押さえておけば、目の前のこどもが愛着の問題を抱えているかどうか見分けやすくなるので、まずはその紹介から始めましょう。

【心理的な3つの特徴】

●愛情欲求行動

●自己防衛

●自己評価の低さ

この3つは「愛着障害の3大特徴」に位置づけられ、ひとつでもあてはまったら対象児は愛着に問題を抱えている可能性が高いと言えます。

【行動としてあらわれる6つの特徴】

●人への接触

●モノとの関係

●口の問題

●床への接触

●姿勢・しぐさ

●危険な行動

これらのうち2〜3項目以上にあてはまる場合は愛着障害の可能性があります。ただし、「人への接触」を除く他の特徴は愛着障害以外の原因でも起こり得るので、早計に決めつけるのは控えたいところです。

こどもと接する時間が長い幼稚園、保育園、こども園、学校などの教職員にも、家庭で養育にあたる父母、里親さんなどにも押さえておいていただきたい特徴です。

不適切行動の原因は「感情」にある

支援の方法に入る前に気持ちの解説から入るのにはわけがあります。愛着障害という問題の根本にあるのは、感情の未成熟です。つまり愛着障害とは「感情の問題」なのであり、支援のためにはこどもの感情の理解が不可欠です。

こどもの行動をアセスメントし、支援の方向をさぐるチェックリストは多くの療育の専門家が作成してきました。しかし、感情とその発達段階を調べられるリストは皆無に近い状態です(数少ない例外が2024年刊の『愛着アセスメントツール』[合同出版])。

ここでは精密なアセスメントではなく、愛着障害のこどもが「どう感じているか」をお伝えします。それが愛着障害にまつわる誤解を解き、同時に支援に向けてのヒントにもなると思うからです。

新刊『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』では、先ほど挙げた合計9つの特徴に、ASD+愛着障害タイプによく見られる言動や、その他の知っておくべき言動を加えた、全部で26の現象をくわしく解説しています。

紙幅の関係で、本記事ですべてを紹介することはできません。26の現象のうち一部を例として挙げておきますので、興味のある方はぜひ本を参照してください。

【書籍で取り上げている不適切行動の例】

・要求が次々と増えていく(愛情欲求エスカレート現象)

・自分の非を決して認めない(自己防衛)

・無気力で何事にも後ろ向き(自己否定)

・大言壮語をくり返す(自己高揚)

・急に暴力的になり収拾がつかない(フラッシュバック的・執拗な・パニック的な攻撃行動)

・物騒なモノを好んで執着する(モノとの関係+こだわり)

・負けるとパニックになって騒ぐ(優位性への渇望+こだわり)

適切な支援が行われて感情学習が進めば、これらの言動・現象のほとんどは自然と消滅していきます。

「不適切行動が出ていないとき」にも目を向ける

なお、こどもの気持ちと言動を見るにあたって、ひとつ気をつけたいことがあります。

こどもを観察する際には、ある行動が「出ているとき」だけでなく、その行動が「出ていないとき」にも目を向けるようにしてください。「出ているとき/いないとき」の両方を見て、初めてパターンがつかめるからです。このことを私は「合わせ技」で見る、と表現しています。合わせ技で見ることで、たとえば不適切行動が愛着障害によるものか、発達障害によるものか見抜けるようになります。

そして、観察して得た事実、気づいたこと、考えたことは、必ず記録するように心がけてください。保育・教育の現場では、記録も大切な仕事です。家庭でも、できれば簡単な日記やメモ程度でいいので、記録をつけることをおすすめします。

記録には、単なる備忘以上の効果があります。試しに、記録するつもりでこどもに目を向けてみてください。いつもより冷静に、ゆとりすら持って観察している自分に気づきませんか。その冷静さは、こどもとかかわるうえで重要になります。また、記録するつもりで得た情報は精度が高く、上司・同僚やパートナーと話しあうときにも役に立ちます。

愛着障害が大人の間に引き起こす「分断・対立」

愛着の問題を抱えたこどもは「二面性」を示すことがあります。つまり、かかわる大人によって言動や態度を変えることがよくあるのです(逆に言うと、二面性が見られるこどもは愛着障害の可能性が高いと言えます)。たとえば、

・厳しい先生の前ではおとなしくしているが、優しいお母さんの前では暴言を吐く

・「〇〇された」とウソの報告をして、構ってくれる大人の気を惹こうとする

などの行動をするこどもがいますが、家庭や教育現場では、この二面性が混乱のもとになる場合があります。同じこどもが、ある大人の目には「いい子」として映り、別の大人の目には「問題児」として映るので、大人同士の間で子育てや支援の方針をめぐって分断・対立が起こりやすくなるからです。

どの大人にも同じ現象が見えるとは限りません。愛着障害の支援を行う場合は、自分が見た現象だけで判断するのではなく、こどもが態度を変えている可能性も考慮して密に情報交換をするようにしてください。

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