Netflixドラマに合わせて溝口敦著「魔女の履歴書」の新装版が刊行された

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 2000年代、「あんた、地獄に堕ちるわよ!」の一言で一世を風靡した女性がいた。占い師・細木数子さん(享年83)。地上波に冠番組2本を持ち、100冊を超える著書の累計発行部数は6500万部。そんな「メディアの寵児」が突如、表舞台から姿を消したのはノンフィクションライター溝口敦氏の『週刊現代』(講談社)での連載がきっかけだった。

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 2026年4月27日、戸田恵梨香(37)主演で細木さんの半生を描いたNetflixオリジナルドラマ『地獄に堕ちるわよ』が世界独占配信されることを受け、溝口氏の連載をまとめた『細木数子 魔女の履歴書』(講談社)が4月15日、新装版として復刊される。今回は本書の内容を振り返り、なぜいま「細木数子」なのかを考察する。

 1988年、細木さんは50歳を機に『女の履歴書』という自叙伝を刊行している。出生について「1938年、63歳の父親と妻の間の8人きょうだいの四女として産まれる」という旨が記されているが、その生い立ちから"事実"と異なっていると溝口氏は本書で指摘。溝口氏が取材した細木さんの一つ歳下の弟は「数子は、家族と同居する愛人との間に産まれた七女だ」と証言する。

 17歳で喫茶店を開店し、銀座の雇われママを経て、クラブを開業。恋愛結婚するもわずか3ヶ月で離婚。苦い経験をバネにして3軒ものバー・クラブを有する「銀座のママ」として君臨。一軒家を建て高級外車を乗り回すが、詐欺にあい10億円もの借金を背負う──自叙伝に記された細木さんの半生は、まさに波瀾万丈だ。

 だが、溝口氏は当事者らから証言を集め、一つ一つ追求していく。細木さんの"表の履歴書"と実態について検証するのが本書の醍醐味だ。

 溝口氏は暴力団取材のスペシャリスト。その取材網から、細木さんが暴力団と密接に交流しており、それを盾に力を増してきたと指摘する。稲川会の大幹部の女になったことを皮切りに彼女は暴力団人脈を形成。三代目山口組若頭であり、いまも名門組織として残る山健組の山本健一初代組長や、五代目山口組の渡辺芳則組長とも大物組長と交流があったことなどを明かしていく。

 銀座のママから細木さんは占い師に転身し活動をメディアの場に移す。「六星占術」というワードは細木さんが考案したとして広く知られ、多数の著書もあるが、そのきっかけとなった一冊についても、細木さんが一時期、師事していた占い師から貸与された資料を〈返還せず、パクったのだが、そこからも誤って引用〉し著書を作成したと追及する。

なぜいま「細木数子」なのか

 2006年5月から始まった溝口氏の連載は14回にわたり、細木さんは『週刊文春』(文藝春秋社)で反論インタビューに応じるなどメディアを巻き込んだ騒動となる。

 さらに彼女は名誉毀損などの理由で講談社を相手取った約6億円の民事訴訟を起こす。細木さん側が暴力団最高幹部の陳述書を提出するなどで公判は注目を集めた。

 2年近く公判が続いた2008年3月、細木さんは「テレビの仕事の充電期間を設けたい」などとしレギュラー番組2本を降板し、まもなく訴訟も取り下げた。その後、細木のテレビ出演は稀になり、2021年11月8日、83歳で死去する。

 レギュラー番組降板から18年。なぜ今「細木数子」なのか。答えはシンプルかもしれない。

「親が子供を育てられないなんて犬猫以下だよ!」「あんた!馬鹿じゃないの!?」

 彼女はこうした強い言葉で断定することで幅広い層から支持を得た。それはSNS時代の現在も構造は変わっていない。

 Netflixオリジナルドラマの『地獄に堕ちるわよ』は、細木さんの自著伝『女の履歴書』をベースに構成されていると見られるが、「細木数子」という存在は何を映し出していたのか。本書にはその"答え"があるのではないか。