厚生年金には加入していたはずだが…59歳サラリーマンが抱いた“青色の封筒”への違和感。日本年金機構に問い合わせて判明したまさかの事実【社労士CFPが「ねんきん定期便の確認ポイント」を解説】
将来受け取ることのできる年金額は、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」で確認することができます。しかし、そこに記載されている額がそのまま支給されるかというと、そうとは限りません。特に、結婚・離婚経験があったり、転職を経験していたりすると、より慎重に確認する必要があるようです。ねんきん定期便が青色の封筒で届いた59歳男性の事例をもとに、「ねんきん定期便」の注意点をみていきましょう。
「ねんきん定期便」に抱いた違和感
59歳会社員のAさん。60代が目前に迫り、いよいよ年金が気になってきました。
これまではねんきん定期便をあまりよく確認してこなかったAさんですが、誕生月に封書形式の「ねんきん定期便」が届いているのを見つけ、中身をじっくり確認してみることにしました。
老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は65歳から受給できることになっていますが、年金受給見込額を確認すると、合計で年額200万円と記載されています。
「そもそも60歳開始じゃないし、自分の親世代と比べてみると、金額としてもやっぱり少ないな……」
ため息をついたAさんは、「少しでもいいから年金が多くならないものか」と考えました。
ねんきん定期便は通常ハガキ形式ですが、35歳、45歳、59歳の節目には、封書で送られてきます。封書版はハガキ形式と比べ内容も細かく、59歳時には「これまでの『年金加入履歴』」の欄で、詳細な加入期間を確認できるのが特徴です。
Aさんは厚生年金の加入期間自体は長いものの、何度か転職をしていました。定期便を読み進めていくと、昭和62年1月1日から昭和62年4月1日になるまで年金の加入記録がなく、「(空いている期間があります。)」と記載されています。
昭和62年1月1日というと、高校卒業後に入社した最初の会社(X社)を退職した翌日(厚生年金被保険者資格喪失日)でした。また、昭和62年4月1日は、Z社で厚生年金の被保険者となった日です。
ねんきん定期便での年金記録上、この3ヵ月は厚生年金にも国民年金にも加入していない、「空白期間」として扱われていました。
Aさんの違和感の正体
しかしAさんは、当時3ヵ月だけ勤めていた会社(Y社)があったことを思い出します。
「短期間だったし、厚生年金には入っていなかったかもしれない……でもこれ、空白期間のままで大丈夫なのかな?」
気になったAさんは、同封されていた「年金加入記録回答票」に会社名(Y社)などを記入し、日本年金機構に年金記録の調査をしてもらうことにしました。
日本年金機構から届いた「まさかの回答」
すると調査の結果、空白期間だった3ヵ月の厚生年金加入記録(Y社)が新たに見つかったというのです。
3ヵ月分とはいえ、Aさんの加入記録が増えることになります。その分65歳から受け取る老齢厚生年金は年間数千円ほど増える計算です。
「しっかり確認してよかった」と安堵したAさんですが、増えるのはたった数千円です。
「もっと増えないものか……」
Aさんはさらに受給額を増やせないかどうか、最寄りの年金事務所へ相談に行きました。
ねんきん定期便だけではわからなかった年金の“伸びしろ”
59歳時点の定期便に記載されている年金受給見込額は、「60歳になるまで現在の条件で加入し続けた場合」の金額です。そのため、60歳以降の年金加入分は反映されていません。
Aさんは65歳まで働く予定とのこと。よって、60歳から65歳までの厚生年金加入期間が増えれば、その分年金も増えることになります。
年金事務所の職員いわく、「Aさんの場合、65歳まで勤務を続ければ受給額は年間10万円以上増えそう」とのこと。また「給与や賞与次第では、20万円近く受給額が増える可能性もある」と説明を受けました。
さらに、厚生年金は70歳まで加入できるため、「65歳以降も働いて厚生年金に加入すれば、その分さらに増えますよ」と助言を受けました。
「たしかに、ねんきん定期便には『60歳までの現在の加入条件による見込額』と書いてあるな。そうか、頑張ればまだまだ増えるのか……」
ねんきん定期便に記載されていた「空白期間」をきっかけに記録を見直し、年金の増やし方を知ったことで、将来に少し希望を持てたAさんでした。
老後準備の“はじめの一歩”
ねんきん定期便ではまず、加入記録に間違いがないか確認することが大切です。
特に35歳、45歳、59歳で届く封書版には、それまでの全加入期間が記載されているはずですから、見落としのないよう注意してください。
その記録に漏れや誤りが疑われる場合は、日本年金機構に記録確認や調査を依頼しましょう。
もし、ねんきん定期便に載っていない加入記録が見つかったり、記録が追加されたりすれば、その分年金額が増える可能性があります。
昭和初期生まれの世代と比べると、若い世代になるほど記録漏れや誤りが発生するケースは減っているようです。しかし、Aさんのように転職を繰り返してきた人は特に注意が必要です。
加入記録を念入りに確認し、すべての加入期間に基づいた年金を受け取れるようにすること、つまり「もらい忘れ」を防ぐことが大切です。
また、ねんきん定期便に記載されている見込額がそのまま実際の受給額になるわけではありません。今後の働き方や加入状況によって、受給できる額を増やすこともできます。
いずれにしても、まずは確認が必要不可欠です。安心した老後を送るためにも、ねんきん定期便が届いたらきちんと目を通すようにしましょう。
五十嵐 義典
特定社会保険労務士/CFP
株式会社よこはまライフプランニング 代表取締役
