292万回再生で収益はわずか656円…TikTokで「億を稼ぐ勝ち組」と「搾取される負け組」を分ける非情なカラクリ

■LIVEでの投げ銭「総額1億5000万円超」も
TikTokで稼げる人は複数出てきている。2024年6月、令和の虎二代目主宰の林尚弘は、YouTuberのヒカルがTikTok LIVEで1億5297万円の収入を得ていたことをXで公開。ヒカルは、TikTok LIVE開催の「LIVE Ranking2024May/Jun」(5月24日〜6月2日開催。盾イベ)で3冠を達成していた。
盾イベとは、TikTok LIVEで定期的に開催される、上位入賞者に物理的な盾が贈呈されるランキングイベントだ。投げ銭額で競う「ギフト部門」、視聴者投票で競う「投票部門」などで競う。
2022年にコンビを解散したお笑いコンビ・ピスタチオ伊地知も、2025年11月の「パーラーカチ盛りABEMA店」出演時に、TikTokでの収入を明かしている。誕生日で24時間配信した際に受け取った投げ銭は、総額1500万円に上ったという。ファンがいれば、LIVEの投げ銭で大きく稼げる可能性があるというわけだ。
■100万再生で得る収益はYouTubeより低い
具体的な収益について解説する前に、TikTokの報酬制度「Creator Rewards Program」について解説しておきたい。
TikTokで収益を得るには、以下のような条件がある。18歳以上でフォロワーが1万人以上、過去30日間での動画視聴数が10万回以上、長さ1分以上のオリジナルコンテンツを投稿していることなどだ。報酬は、有効視聴者数と有効視聴数1000回あたりの収益額(RPM)に基づいて計算され、コンテンツ次第で追加報酬が得られる仕組みだ。
YouTubeの通常動画は1再生あたり0.05〜0.1円程度だが、YouTubeショートは1再生あたり0.003円〜0.01円程度。TikTokの再生単価は1再生あたり0.01〜0.08円程度と言われており、YouTubeに比べると単価が低い。つまりTikTokで100万再生しても1万〜8万円程度にしかならず、常時100万再生以上の投稿を維持できなければとても食べていけないのだ。
■企業案件やアフィリエイト収入で「+α」
ただし先述のように、TikTok LIVEでは投げ銭が得られる。LIVEでは、視聴者は購入したアプリ内通貨(コイン)でギフトを贈る。配信者には「ダイヤモンド」という報酬が送られ、ダイヤモンドは換金可能となっている。
配信者が得られる収益は、投げ銭の30〜50%と言われており、ここからプラットフォーム手数料が引かれる。YouTube LIVEのスーパーチャットの還元率は約70%と言われる。さらにプラットフォーム手数料30%が引かれるが、やはりYouTubeのほうが還元率が高い。
配信者によっては、企業案件がくることもある。企業案件の報酬は、フォロワー数やエンゲージメント率によって決まる。また、TikTokでは動画内に直接アフィリエイトリンクを貼ることはできないが、プロフィールのリンクや外部サイトを利用すれば、アフィリエイト収入を得ることができる。

■住民税330万円=事業所得3400万円超
TikTok中心に複数のSNSで活動しているインフルエンサーが、年収を明かしている。100円ショップのアイテムなどを紹介する「100円娯楽(税抜き)」は、TikTokフォロワー120万人、YouTubeフォロワー88万人のインフルエンサーだ。
「【フル】納税額を見て絶叫する100円娯楽さん」という動画内で、豊橋市役所から届いた住民税の支払い通知書が何と330万円だったことを明かしている。
このとき住民税を公開したことで、視聴者にChatGPTで調べられ、年収がバレてしまったそうだ。筆者も、愛知県豊橋市在住、20代、独身、個人事業主という条件でChatGPTに聞いたところ、事業所得は約3400万円と推定できた。これは売上から経費などを引いた額であり、実際の売上はもっと多いことになる。
芳賀セブンは、主に海外でバズっている筋肉系YouTuberだ。TikTokフォロワー270万人、YouTubeチャンネル登録者数142万人に上る。2022年6月に日本テレビ「月曜から夜ふかし」に出演し、1カ月の収入は「一番いい時で車3台買える」と明かしている。普通車3台とすると、月収は最大900万〜1200万円程度と推測できそうだ。
■ミュージシャンにとって稼ぎにくい仕組み
一方で、ミュージシャンにはTikTokは厳しいプラットフォームのようだ。バンド「トップシークレットマン」のボーカルしのだは、自らのXで「『バンドマンってお金いくら貰ってるの?』って思うかもしれないけど、例えばTikTokで自分の曲が292万回再生されても656円しか貰えないぜ! 押忍」と、TikTokで曲が再生された際の収益が驚くほど低いことを明かしている。
それによると、動画再生数が「292万5512回」、動画作成数は「3654回」に対して、収益は656円だった。つまり1再生あたり、わずか0.0002円ということになる。
TikTokでは、動画に登録したオリジナル楽曲が使われると、再生されるたびにアーティストと投稿者の報酬が入る仕組みがある。このBGM収益の単価が下がっていることが指摘されており、ここまで低い金額となってしまったと考えられる。
なおTikTokのBGM収益は、すべての広告収入からプールされ、いくつのユニーク動画に使用されたかによって配分される仕組みだ。単純に楽曲再生回数で収益が決まるわけではない点に注意が必要だ。
■TikTokを入口に、高単価のYouTubeへ
TikTokで稼いでいる人も増えており、特にTikTok LIVEでの投げ銭額には期待できるが、全体にYouTubeよりは単価が低めだ。
YouTubeはアーカイブ性が高く、過去の動画からも広告収入を得ることもできる。YouTubeショートも単価は低いが、チャンネル登録者以外にも表示されるため、ショートで認知度を高め、チャンネル登録に持って行くのが鉄則だ。
一方TikTokは、YouTubeショート並の単価だが、ファンがたとえ0人でもおすすめに載ることもあり、全体にバズりやすく、やはり認知度を高めるのに向いている。現在YouTuberのチャンネル登録者数ランキング1位(7360万人)であるISSEI/いっせいは、当時、収益化の仕組みがまだなかったTikTokで認知度を高め、YouTube登録者数増につなげている。
※登録者数はヒカキンの3倍超の6700万人…「動画素人」だった20歳男性が日本一のYouTuberになれたワケ
TikTokとYouTubeではユーザー層が異なるため、どちらもうまく活用して、ファンを獲得していくことが大切だろう。また、ランキング上位層は言語に頼らないノンバーバル系動画で世界中からファンを獲得したり、既存のファンに向けたライブ配信で投げ銭を得ている傾向にある。

ミュージシャンのBGM収益は確かに厳しい。ただし、「アーティストに協力」という広告費を投じて楽曲を宣伝する仕組みを使ったり、ライブ配信などをして投げ銭を得るなども可能だ。「配信者」を職業にするには、プラットフォームを戦略的に利用することが求められていると言えるのかもしれない。
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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α文庫)ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。
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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)
