【伊賀大記のクロマなマクロ展望】来週の日米中銀会合は据え置きか、中東緊迫で「板挟み」
6日に発表された2月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比9万2000人減となった。1月の12万6000人増から、市場予想に反して大幅なマイナスに転じた。振れが大きいことで知られる同統計だが、失業率も前月の4.3%から4.4%に上昇。非農業部門雇用者数は12月分と1月分も下方修正されており、本格的な雇用減速トレンドに入るのではないかと懸念されている。
11日に発表を控える2月米消費者物価指数(CPI)は、米国とイスラエルがイランに軍事攻撃を開始する前のデータとなる。トランプ米大統領が9日に「戦争はほぼ終了した」と述べたことで原油価格が急落しているが情勢はまだ不透明感が強く、今後のインフレ高進への警戒は緩められない。
雇用減速が心配だが、インフレ高進にも備えなければならない。米連邦準備制度理事会(FRB)のマンデート(法的使命)は雇用の最大化と物価の安定の2つ。中東情勢の悪化による影響を見極めるとして、来週のFOMCでは、政策据え置きが選択されそうだが、4月28~29日の次回会合までに結論が得られるかは不透明だ。
パウエル議長は5月に議長としての任期を迎える。あるベテランのFedウオッチャーによると、パウエル議長は現在、無理に意見集約を行っていないように見えるという。新議長体制の下で、利下げ・据え置き・利上げの3つの意見がどれかに集約されていくのか、注目されよう。
●マーケットはどう反応するか
日米中銀とも政策据え置きの場合、マーケットはどのように反応するのだろうか。政策が変わらないのだから反応しようがないとはみないほうがいいだろう。日銀は利上げしにくく、FRBは利下げしにくい、ということは円高圧力とドル安圧力が強まりにくいということを示す。つまりドル円に対してはドル高・円安方向に働くことになる。
日本株、特に輸出株比率が高い日経平均株価にとっては、これまで円安はどちらかといえばプラス材料だった。しかし、原油価格の上昇という懸念材料が浮上する中では、そうとも言えなくなる。「産業のコメ」とも言われる石油は原料としてだけでなく輸送費など幅広くコストとしてのしかかってくるからだ。円安は原油高に拍車をかけることから、円安が日本株にネガティブに働く場面も想定しておく必要がある。
原油価格の上昇でメリットを受けるのは、通常、鉱業や石油会社のほか商社などと言われている。だが、中東情勢の緊張感が高い中では、これらの企業も同地域でのビジネスに対し慎重にならざるを得ない。あくまでディフェンシブなセクター選好とみておくべきだろう。
伊賀大記(いが・だいき)
金融経済ジャーナリスト。株式専門誌やロイター通信での記者を経て現在フリー。金融市場やマクロ経済に関するトピックをブログ(東京クロマ通信)で毎営業日配信中。
出所:MINKABU PRESS
