© Aikido Technologies

AI需要の急拡大で、アメリカ全土でデータセンターが急増、AIをぶん回すのに大量の資源を消費し、電力網に大きな負荷をかけています。データセンターを建てる土地も枯渇しつつある中、テック業界は、陸上以外の場所に設置できないか模索していて、宇宙に活路を求める企業もあれば、海に可能性を見いだしている企業もあります。

そのひとつが、米カリフォルニアの浮体式風力発電の開発企業、Aikido Technologiesです。先日このスタートアップ企業は、自社のタービンプラットフォームを浮かせるための水中タンク内部にデータセンターを設置する計画を発表しました。同社によれば、このシステムは15〜18メガワットの風力タービンと統合型バッテリー蓄電システムと同時に、10〜12メガワット分のAI計算処理の稼働を目指しています。IEEE Spectrumによれば、年内までにノルウェー沖で100キロワット規模の実証実験を行う計画とのことです。

Aikido TechnologiesのCEO、サム・カナー氏は声明の中で以下のように述べています。

地球の外へ行く前に、まずは海に行くべきです。

Aikidoは、実績のある洋上設備と、一般的なデータホール建設技術を統合することで、従来の技術よりも速く、よりクリーンに、より低コストで、より効率的に、ギガワット規模のAIファクトリーを構築できる絶好の立場にあります。

AIにサステナビリティを組み込む

データセンターを再エネのインフラと組み合わせる発想は、AIのエネルギー需要に対する面白いアプローチですね。従来の陸上のデータセンターは、化石燃料による電力を大量に消費しています。

2024年、アメリカのデータセンターは183テラワットの電力を消費しましたが、これはその年の全米の電力消費の約4%に相当します。このままAIとデータセンターの需要が増え続ければ、2030年までに2倍以上に増える可能性があります。

Aikidoは、再エネの発電設備とデータセンターを同じ場所に設置することで、AIの電力負荷を削減することを目指しています。このシステムでは、中央に風力タービンを支える大型プラットフォームを設置し、タワーの基部から3本の脚が外側へ伸びる構造で、それぞれの脚の先端には深さ約20メートルのバラスト(重り)が取り付けられます。このバラストには、プラットフォームを浮かせるために、主に真水入りのタンクが入り、その上部に、3〜4メガワット規模のデータホールが設置される予定です。

海を「無限のヒートシンク」とできるので、電力供給だけでなく冷却の面でも便利です。Aikidoのシステムは、データセンターの熱をバラストタンクの鋼製の壁を通して、周囲の海水へと移す受動式の一次冷却システムを採用しています。同社によれば、海の温暖化の影響は、構造物の周囲数メートル程度に限定されるとのことです。

最終的には、30メガワットから1ギガワット以上の計算能力を支える洋上風力発電所を建設する計画とのこと。急拡大するAIインフラに対する需要に対応しつつ、エネルギー消費と環境負荷の低減を目指します。

夢のように完璧なソリューションに聞こえるけれど

海中データセンターは他の企業でも開発が進んでいますが、洋上風力発電インフラの中に直接コンピューターの能力を組み込もうとしている企業は、今のところAkidoのみです。ただし、ドイツのWestfalenWind Groupは「windCORES」プロジェクトの運用開発段階に入っている、ということは補足しておく必要があります。これは、陸上風力タービンのタワー内部にデータセンターを組み込む取り組みです。

また、Aikidoの洋上アプローチは素晴らしいソリューションに聞こえますが、欠点がないわけではありません。

現在、浮体式洋上風力発電分野の全体的な課題として、開発の大幅な遅れ、コストの上昇、そして政府補助金の縮小に伴う金利上昇といった問題に直面しています。

AikidoのKanner氏は、Aikidoはビジネスモデルを再構築することで停滞気味のこの分野を活性化させたいと考えていると語っています。

さらに技術的な課題もあります。米国のシンクタンクFoundation for American Innovationの研究員であるDaniel King氏は、IEEE Spectrumに対し、海洋環境に含まれる塩分や漂流物(デブリ)によってインフラが損傷する可能性があるため、Aikidoはエンジニアリング上の課題に直面する可能性があると述べています。さらに、海洋生物を熱排出から保護するための追加的な規制が設けられる可能性もあるとも述べています。

実証実験が進めば、この取り組みがどのくらい現実的なのか明らかになっていくはずです。

少なくとも現時点では、AIの急速な成長を支える新しい方法を模索する再生可能エネルギー企業が現れていることは大歓迎ですよね。うまくいくと良いですね。

Source: IEEE Spectrum

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