◆「AIの方が分かりやすくて…」仕事を奪われるまで

具体的にEさんが経験した出来事については、概ね冒頭のポスト内で記載されている事そのままだと言う。要約をすると下記のとおりだ。

3ヶ月ほど前、以前からEさんが記事執筆していたECサイトの担当者より、連絡用ツール経由で「社内導入したAIで質の良い記事が書けるので、来月以降の記事はもう(書かなくても)大丈夫」という趣旨のメッセージが入る。「今まで本当にありがとうございました!」という明るい言葉を添えながらも、実質的な仕事の「打ち切り」である。

さらにその約1ヶ月後、今度はとあるオウンドメディアのコラム記事執筆について、担当者に「AIにEさんと同じテーマで記事を書かせたら、EさんよりAIの方が分かりやすくて綺麗」という通知が入る。その後、Eさんの業務範囲は記事全体の構成・執筆から、AIが全体ラフを書いた記事の簡単な手直し作業にまで格下げされ、仕事1件あたりの報酬も10分の1に引き下げられてしまったという。

◆収入が30万円→10〜15万円に激減

こうした扱いの原因について、Eさん自身は「自身の能力や、要領の悪さに問題があるのでは」と謙虚に分析している。実際にはクライアント側の不義理や契約的問題など様々な外的要因も考えられるが、いずれにせよこの出来事は、Eさんの収入とメンタルに大きなダメージを与えた。

「現在の収入は月10万円から15万円ほどです。向こうはチャットなどでパッと簡単なメッセージを送ってくるだけですけど、こっちは本当に悲しいですよね。今まで付き合いのあるクライアントに対して『今さら色々と文句を言うのも見苦しいかな』という気持ちもあって、強気に出づらいですし。

単に仕事を打ち切られるよりも、仕事内容と報酬をグッと低く抑えられてしまう方が、実は心情的にツラいです。下手に仕事がズルズル続いてしまっているせいで、そっちの方に集中力や時間を取られてしまって、残った仕事の方にも悪影響が出ますから。報酬自体は全く無いわけでもないので、こちらから『もう辞めます!』とも言い出しづらいです」

淡々と語るEさんの口調には活気がないが、収入が半減もしくは3分の1になってしまったのだから無理もない。企業からフリーランスへの不当な扱いについては、2024年秋に施行された「フリーランス新法」など、是正・改善の動きが進んでいる。今後はより一層踏み込んで、生成AI絡みのトラブルに対する施策強化も必要なのではと、筆者もまた感じずにはいられなかった。

◆コワーキングで声を掛けられて…

生成AIの影響で収入が大きく減ってしまい、苦境に立たされているEさん。一方、現在救いになっているのは、仕事で出会った人々や知人・友人との絆だという。

「めっちゃ落ち込みながらコワーキングスペースにいた時に、心配されたのか『どうしたの?』って声を掛けられまして。経緯を相談してみたら『それでXの記事を書いてみなよ』ってアドバイスされたんです」

友人からもEさんを労って励ます声が多々あり、それが今の心の支えとなっているそうだ。とはいえ生計を立てなければ、どうにもならない。現在のEさんは、どこかの企業へ再就職することを想定して求人情報を調べるなど、キャリア再建のため広い視点で将来を模索しているという。

◆将来を見据えて前向きに試行錯誤する日々

だが、Eさんは決してフリーランスのライターとして希望を捨てた訳ではない。今後の目標や方針について尋ねてみた。

「YouTubeショート動画の台本については、現在月10本ほど制作しています。これの本数を増やしたいのと、クライアントから『条件をクリアしたらディレクターに昇格させる』って提示されているので、そちらに注力したいです。アウトソーシング系の案件が制作のきっかけだったんですが、現在はホラー系のショート動画が得意なので、そっちを伸ばしていこうと思います」