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千葉県の市川市動植物園で暮らすニホンザル「パンチくん」が、来園者やSNSユーザーのあいだで人気だ。

2025年7月に生まれたパンチくんは、母ザルに育児放棄されたため、現在は飼育員が人工哺育している。

オラウータンのぬいぐるみを“母ザル代わり”にしがみつく姿が「健気でかわいい」「胸が締め付けられる」と話題になり、動画や写真が拡散された。

SNS上では「強い子に育ってほしい」「がんばれ」といった温かい声が相次いでいる。

●自宅や車内に置き去りにする人間たち

しかし、「育児放棄」という言葉が投げかける問題は、なにもニホンザルの世界に限られたものではない。

人間社会でも、保護者が乳幼児を自宅や車内に置き去りにして外出したり、十分な食事を与えなかったりするケースが後を絶たず、たびたび痛ましい事件として報じられている。

●長時間放置も「虐待」に含まれる

法律上、こうした行為は単なる「うっかり」や「やむを得ない事情」では済まされるとは限らない。

児童虐待防止法2条は、身体に外傷が生じる暴行だけでなく、食事を与えない、長時間放置するなどの行為(ネグレクト)も虐待に含まれると定めている。

さらに、著しい暴言や拒絶的な対応など、子どもに強い心理的外傷を与える言動も虐待にあたるとされている。

保護責任者遺棄罪に問われる可能性も

刑事責任に問われる可能性もある。

親などの保護責任者が幼い子どもを遺棄し、または、その生存に必要な保護をしなかった場合、刑法218条の保護責任者遺棄罪が成立し得る。

さらに、その結果として、子どもが死亡した場合には、より重い保護責任者遺棄致死罪(刑法219条)が成立する可能性もある。

●子どもの権利を守るため「親権」が制限されることも

育児放棄が疑われる場合、子どもは児童相談所によって一時保護されることがある。家庭から分離し、安全な環境で生活させるものだ。

また、重大なケースでは、家庭裁判所の判断により、親権停止や親権喪失が認められる可能性もある。親権は絶対的な権利ではなく、子どもの利益を守るために制限されることがある。

●孤独のなかで追い詰められるケースも

ただし、問題は「悪い親」を処罰すれば解決するという単純なものではない。

背景には、産後うつ、経済的困窮、社会的孤立、DV(ドメスティック・バイオレンス)、若年出産など、複数の要因が複雑に絡み合っている場合も少なくない。

支援につながれないまま、孤立のなかで追い詰められていくケースもある。

●人間社会は子どもを守れるのか

パンチくんは「オランママ」にしがみつきながら、懸命に生きている。その姿は多くの人たちの胸を打った。

同時に、私たちに問いを投げかけているのかもしれない。

人間社会は、本当に子どもを守れる仕組みになっているのか、と。