ウィーン工科大学とストレージ企業のCerabyteは、共同で世界最小のQRコードを作成して正常に読み取ることに成功し、ギネス世界記録を樹立しました。このQRコードは面積がわずか1.98平方μm(マイクロメートル)であり、多くの細菌よりも小さなサイズでありながら、現代のデータ保存技術における密度と耐久性の新たな基準を打ち立てる革新的な成果となったと研究チームはアピールしています。

World Record: The World’s Smallest QR Code | TU Wien

https://www.tuwien.at/en/tu-wien/news/news-articles/news/weltrekord-der-kleinste-qr-code-der-welt

Data storage Guinness World Record broken by QR code pixels measuring just 49nm - 1.98 sq micrometer size is smaller than bacteria, can only be read with an electron microscope | Tom's Hardware

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このQRコードは29×29のモジュールで構成されており、個々のピクセルサイズは49nm(ナノメートル)という極小サイズを実現しています。これは以前の記録保持者が持っていた5.38平方μm・ピクセルサイズ80nmという記録を大幅に塗り替えるもので、面積比で以前の約37%まで縮小されています。なお、1マイクロメートルは1000分の1mm、1ナノメートルは100万分の1mmです。



49nmというピクセルサイズは可視光の波長の約10分の1となるため、光学顕微鏡では全く認識できず、情報の読み取りには電子顕微鏡が必要となります。研究チームは「これはまるで、象の厚い足の裏で点字を感じ取ろうとするのが不可能であるのと同じことです」とたとえています。



材料科学的な側面から見ると、この技術の価値は単なる小ささではなく、その安定性と耐久性にあると研究チームは述べています。現代の技術では個々の原子を並べてパターンを作ることも可能ですが、原子は拡散や移動が起こりやすいため情報を安定して保存することは困難です。これに対し、研究チームは高性能な切削工具のコーティングにも使われる非常に安定したセラミック薄膜を採用し、集束イオンビームを用いてQRコードを直接彫り込んでいます。



現在の主流である磁気や電子メディアは数年〜数十年で寿命を迎えることが多く、情報の維持には多大なエネルギー消費、冷却、および定期的なデータ移行が欠かせません。しかし、不活性で安定したセラミック材料に刻まれた情報は、エネルギー供給なしで数百年から数千年にわたって維持できる可能性があります。今回のQRコードは保存密度も極めて高く、理論上ではA4用紙1枚の面積に2テラバイト以上のデータを保存できる計算になるとのこと。

ウィーン工科大学の薄膜材料科学者で研究チームのメンバーであるアレクサンダー・キルンバウアー氏は「今回確認された世界記録は、非常に有望な開発の始まりに過ぎません。今後は他の材料の使用や書き込み速度の向上、そしてスケーラブルな製造プロセスの開発を目指し、セラミックデータストレージを研究室だけでなく産業用途にも活用できるようにしたいと考えています」と述べ、同時に単純なQRコードを超えたより複雑なデータ構造の研究を進めていくと語りました。