読めない、書けない、どこにあるのか分からない 難読すぎる匝瑳市には魅力的なグルメがあった! 東京から日帰りできるランチ&カフェ3選 大盛り定食に、地場産のコーヒーも

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「読めない 書けない どこにあるのか分からない」──。3拍子そろった、難読地名の横綱、千葉県の匝瑳(そうさ)市。人生の大半を千葉県民として過ごしてきた筆者ですら、たまたま参加した「農業研修」で初めて知った地名だから、多くの人にとってはほぼ馴染みのない土地だろう。東京から特急はあるものの、かなりの田舎町。そんな匝瑳市には大盛りの洋食屋や地場産ドリンクを出すカフェなど、グルメの穴場スポットが結構ある。

観光パンフレットに踊る“自虐的なキャッチコピー”

市が出している観光パンフレットには「読めない!書けない!どこにある?」となかば、自虐的なキャッチコピーが踊っている。行政側もそんなことは百も承知らしい。

匝瑳市の観光パンフレット

市の中心にある八日市場駅は千葉から銚子へと向かうJR総武本線の駅。特急に乗れば東京駅から1時間20〜30分だから、案外近いという印象をもつかもしれない。が、普通列車だと乗り換えありで2時間弱。列車は日中1時間に1本しかないから、やっぱり遠い、千葉の田舎町だ。

「植木の産地」だから、どこの家の生垣をみても、立派な槇塀(まきべい)があって驚く。「八日市場」は、かつて八のつく日に市が立っていた商業の集積地で、江戸中期からある和菓子店『鶴泉堂』や大正時代からの老舗食堂も残っている。こんな田舎町なのに、いや田舎町だからこそ、味のある店がたくさんあるのだ。

創業天明元(1781)年の和菓子店『鶴泉堂』。建物は国の登録有形文化財

農業研修で3度この町に通ううちに、かなり好きになった。首都圏在住者はなかなか行く機会はない場所だと思うが、日蓮宗僧侶の学問所「飯高檀林(いいだかだんりん)」(檀林とは、学問所の意)や千葉県最大級の巨樹「安久山(あぐやま)のスダジイ」など穴場観光スポットもあるので、おいしいものを食べがてら訪れてみてほしい。

樹齢1000年以上と言われる、安久山のスダジイ

50年以上愛される老舗「Bridge(ブリッジ)」は大盛りがスタンダード

JR八日市場駅から徒歩2〜3分、国道126号沿いにある「Bridge(ブリッジ)」は昭和47(1972)年創業、地元の人に長く親しまれてきた昔ながらの洋食屋さん。

手ごねの「ハンバーグステーキ」

創業以来愛され続ける手ごねの「ハンバーグステーキ」(1200円)はふっくらとした食感と濃厚なソースが特徴。「しょうが焼き」(1100円)「チキンソテー」(1200円)などという洋食の定番メニューに合わせて、地元産のご飯と味噌汁が付く「ぷくぷくセット」(+300円)や「ちょいぷくセット」(ご飯、味噌汁、ドリンク付きで+500円)をセットする。金額は特別に安いわけではないが、何を頼んでもボリューミーだ。

とくにサラダの量に驚く。物価高のご時世、都内ならほんの少し葉っぱがのっかる程度だろうが、ここのサラダはぎっしり詰まって、密度がある。

「さすが農業市! 親戚が農家なのかな?」と思ったけれど、「いえいえ。農家の親戚はいません。全部、実費で買っています。ママがサラダ好きだから、無料で出しています。利益は出ません」とご店主は笑う。

イヤ、ほんとこれだけ出したら赤字になるって。キャベツは山盛り。付け合わせのスパゲッティもたっぷりのっていた。

2人前くらいもあるポークジンジャー&ピラフ、メガ盛りもある!

ある日の夜、ポークジンジャー&ピラフ(1700円)を頼んでみたら、軽く2人前くらいの量に驚愕した(でも食べた)。

ポークジンジャー&ピラフ

グループで行くと、「これを食べて待っていてね」と料理の前に、大きな皿でもう一品出してくれた。今どきなかなかない、太っ腹なサービスに初めて訪れた人も笑顔になる。

どのメニューを頼んでもそもそも盛りは豪快だが、「大盛り」を頼むとご飯はプラス200円、パスタやピラフはプラス300円でメガ盛りになる。「料金はあまり変わらないけれど、量は2倍くらいになります(笑)」(店主)。

ご飯の量にびびった女性が「ご飯を減らしてください」と頼んだものの、「それでも、ふつうの1人盛りよりはるかに大盛りだった」と苦笑していた。

昼も夜も同メニューだが、ランチタイムは日替わりメニューが用意され、ドリンクがサービスになる。2〜3人がたっぷり食べられる「シェアパフェ」(1800円)というデカ盛りメニューにも挑戦してみたい。

パンケーキの量も多い(「ブリッジ」)

『ブリッジ』

住所:千葉県匝瑳市八日市場イ134

電話:0479-73-1120

営業時間:9時30分〜19時30分

定休日:水曜、第1木曜

ザ・昭和、価格もかわいい昔ながらの洋食屋『ぶんしん』

さきほどの『ブリッジ』よりもさらに駅近で利用しやすいのが『ぶんしん』。駅前の風景に溶け込みながらも、どこか独特の存在感を放っている。創業は昭和41(1966)年。高度経済成長期からこの町とともに歩んできた店だ。店内に入ってまず目に飛び込んでくるのは赤いビニールの椅子とランプシェード。

壁には、マジックで書かれた、白と黄色の手書きのメニューが並び、目を引く。字体も配置も昭和のモードで、初めて訪れても懐かしい気分になる。こんな駅前の一等地がチェーン店にならず、値上げもせず、長く地元民が通えるのも、“ちょうどいい田舎”だからだろう。

メニューはハンバーグ、生姜焼き、ピラフ、フライものなど王道の洋食が中心。うどんやそば、ピザ、ドリア、サンドウィッチ、ホットケーキまである。

海が近い場所ならではの「いわしフライ」はいかがだろう。ガッツリ食べられて、ご飯・味噌汁付きで750円! 安い。

「昔ながらのナポリタン」は630円。これまた安い。コーヒー付きでも880円。八日市場駅に降り立ったらぜひ訪れてみてほしい。

「昔ながらのナポリタン」

『ぶんしん』

住所:千葉県匝瑳市八日市場イ62

電話:0479-72-0558

営業時間:10時〜19時

定休日:木曜

“棚貸し”もしている地域の交流拠点『ブックカフェ ぐるり』

『ブックカフェ ぐるり』は、匝瑳市初の地域おこし協力隊として活動していた店主の北條将徳さんが2024年3月から始めた小さなカフェだ。店名の「ぐるり」には、人と人、本と人、地域と人がゆるやかにつながり、循環していく願いが込められている。

『ブックカフェ ぐるり』の店主、北條将徳さん

ちょっと変わった店で、個人や地域の店、企業に有料で“棚貸し”をし、棚主はそれぞれの商品やサービスをアピールする。単にコーヒーを飲むだけではなく、地域の人たちが交流し、サークル活動のような読書会なども行われている。

棚貸しでアート作品などが飾られている

メニューはドリップコーヒーのほか、地元の有機大豆を使った「大豆コーヒー」(500円)やオリーブの茶葉を使った「オリーブ茶」(500円)、有機大麦を使った「ソーラービール」(900円)など匝瑳市産の素材を使ったドリンクをはじめ、漢方やスパイス入りのクラフトコーラ「伊良(いよし)コーラ」など体にやさしいものを集めた。

大豆コーヒー

面白いのが、「Pay Forward」(ペイフォワード、恩送り)という仕組み。

「高校生以下の子どもが来てくれた際は、以前はドリンク類を半額で提供していたところ、すべて無料にしました」。

北條さんによると、2024年秋ごろから、「子どもにぐるりのような文化的な空間に触れてほしい」「次世代のために使ってほしい」と寄付をしてくれる人が相次ぎ、その後も不定期で寄付され続けているとのこと。

そこで、「寄付の残額に限らず、『子どもはドリンク0円』で提供することを決めた」という。

そんなことで、地元の中学生が学校帰りに友達と一緒にカフェで宿題をしたり、常連の方と交流する女子中学生の姿が見られたり、店主に相談に来る高校生がいたりと、地域の見守り・交流拠点として、一般的なカフェとは異なる風景が広がっている。

本棚には、北條さんが選んだ本や、地域の人から寄贈された本が約800冊並ぶ。北條さんは平成5(1993)年生まれ、東京都新宿区育ち。都会から田舎への移住者がカフェを作ったことで、人と人がつながり、新たな化学反応が生まれている。

『ブックカフェ ぐるり』

住所:千葉県匝瑳市八日市場イ2915

電話:090-9805-8769

営業時間:11時〜19時

定休日:月・火曜

文・写真/野添ちかこ

温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。

【画像】匝瑳市グルメは安くて、ボリュームたっぷりで魅力的!ハンバーグステーキや昔ながらのナポリタン(10枚)