『チェンソーマン レゼ篇』©2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト ©藤本タツキ/集英社

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※本稿は原作『チェンソーマン』のアニメ化されていない範囲のネタバレを含みます。

参考:若者の間で広がる「自認レゼ」ミーム 自分自身を重ねたくなるキャラクターのメカニズム

 大ヒットを記録している劇場アニメ『チェンソーマン レゼ篇』。10月7日にYouTubeで投稿された同作のオープニング映像も大きな話題を呼んでおり、すでに1,100万回以上の再生回数を記録している(2025年10月17日時点)。

 実は同映像には、本編とリンクするような小ネタがいくつも仕込まれている模様。そこで今回は、具体的にその内容を“解読”することを試みていきたい。なお、記事内では原作のまだアニメ化されていない内容にも言及するため、ネタバレには注意してほしい。

■“妄想デート”に込められた切ない伏線 まずネット上で注目されているのが、主人公・デンジの“妄想デート”を表現した場面だ。映像の終盤、女性から何かを手渡されたデンジは脳内で彼女とのデートを思い描くのだが、その内容には劇中でレゼが歌っていたロシア語の歌「ジェーンは教会で眠った」の歌詞が反映されていた。

 同楽曲は「カフェでオムライスを食べよう」「水族館へ行ってイルカやペンギンを見よう」など、ごく平凡なデートの情景を歌った一曲。入場者特典第1弾の小冊子『恋・花・チェンソー・ガイド』で原作者の藤本タツキが語ったところによれば、「普通の生活をして普通に死にたい」といった思いが込められているという。

 レゼは国家のために尽くす“モルモット”として、普通の生活を奪われてきた人物。「ジェーンは教会で眠った」は、そんな彼女が胸に秘めている願いを暗示した楽曲と言えるだろう。

 そしてデンジがデートの妄想を終えた際、その手のひらには手榴弾のピンが乗っており、大爆発とともに夢が覚めてしまう。一連の場面自体が、劇中で描かれるレゼとデンジの関係性を示唆しているようでもあり、なんとも胸が締めつけられる演出だ。

■映像に登場する“未来のロケーション” 一方でオープニング映像には、『レゼ篇』以降に登場するロケーションもいくつか描かれている。たとえば東山コベニがハンバーガーを落とす場面には、後々彼女にとって縁ある場所となる「ファミリーバーガー」が登場。次のシーンで天使の悪魔が降り立った場所は、おそらく「サンタクロース編」に登場するデパートの屋上だろう。

 ちなみに天使の悪魔が屋上に降り立つシーンは、キアヌ・リーブス主演の映画『コンスタンティン』へのオマージュと捉えるファンが多い。たしかに足が地に着く瞬間は、主人公ジョン・コンスタンティンの前に現れたサタンを彷彿とさせる。TVアニメ版のオープニングでも見られたように、劇場版にもこうした映画ネタが数多くちりばめられており、見返すたびに新たな発見があるのも魅力の一つだ。

■意味がわかるとゾッとする“監視”の演出 『チェンソーマン レゼ篇』のオープニング映像では、米津玄師「IRIS OUT」の明るい曲調に乗せて、デンジたちの日常がコミカルに描かれている。しかし一見何気ないシーンでも、その奥に隠された意味を考察すると、ゾッとするような事実が浮かび上がってくるので油断はできない。

 代表的な例は、マキマによる監視の痕跡だ。マキマは公安対魔特異4課のリーダーで、デンジの上司にあたる人物。まだアニメ化されていない部分で説明されている情報だが、ネズミや鳥といった下等生物の耳を借りる力をもっている。おそらく『レゼ篇』でも、その力によってデンジの動向を監視していた可能性が高い。

 このことを示すためなのか、オープニング映像ではデンジたちの周りに、決まって小動物などの存在が描かれていた。たとえば公安に行くことを拒否して暴れるパワーに世話を焼くデンジたちの側にはカラス、彼らが通り過ぎた土管の中にはネズミ、3人が乗車する電車を見つめるのは1匹の猫……。日常生活から任務中の動向まで、ありとあらゆる言動がマキマの監視下に置かれているかのような演出だ。

■“銃の悪魔”の影を感じさせるオマージュ さらに多くの原作ファンを震え上がらせたのが、“銃の悪魔の肉片”が映し出されるシーン。弾丸のような肉片の背景には、射撃の的が一瞬だけ映し出されるのだが、これは原作コミックス第4巻の表紙をオマージュしたものだと思われる。

 ここで重要なのは、第4巻の表紙で肉片を握っているのが早川アキであること。詳細はあえて伏せるとして、原作の展開を知るファンであれば、銃の悪魔と早川アキの組み合わせから壮絶な運命を連想せざるを得ないだろう。わざわざファンの心を抉るような仕掛けを忍ばせてくるあたり、原作を熟知したスタッフならではの演出だと感じられる。

 わずか2分半の尺に、いろいろなこだわりが詰めこまれている『チェンソーマン レゼ篇』のオープニング映像。こうした小ネタを知ったうえであらためて本編を観ると、また違った側面が見えてきそうだ。(文=キットゥン希美)