ラグビー日本は「賢明だった」 敵将も称賛のイングランド対策、接戦演じた先の“20分”に表れた差
イングランドとの大一番に12-34で敗戦
ラグビー日本代表は17日(日本時間18日)、ニースで行われたラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会のプールD第2戦でイングランドに12-34で敗れて1勝1敗となった。序盤から接戦を演じ、後半14分には12-13と1点差に迫るなどラグビーの母国と互角に渡り合ったが、その直後にイングランドの選手の頭に当たったボールが継続され、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル=ビデオ裁定)の末にトライが認められる不運もあり、終盤突き放された。
これでD組はイングランドが2戦全勝、勝ち点9で暫定首位。日本は2戦を終えて1勝1敗、勝ち点5の2位タイ。プール戦突破のために、現地時間28日のサモア戦(トゥールーズ)へ中10日という豊富な準備期間を経て必勝態勢で臨む。(取材・文=吉田 宏)
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スタンドを赤白のジャパンカラーに染めたファンから溜息が漏れた。後半に一時イングランドを1点差まで追い詰めたが、終盤にトライを畳みかけられ、ボーナスポイントも奪えなかった末の完敗(4トライ以上、または7点差以内の敗戦の場合は1ポイントを獲得)。“母国”からの初金星に届かなかったものの、FL姫野和樹主将(トヨタヴェルブリッツ)は胸を張った。
「率直に悔しいという気持ちが強いです。ただ、下を向く時間はない。次のサモア戦、アルゼンチン戦と、まだワールドカップは終わったわけではないので、そこにしっかりと準備をしていかないといけない」
11日後に待つサモア戦へ、すでに気持ちは切り替えている。
イングランドは初戦でアルゼンチンを破るなど、D組最強の相手と見られていた。残り20分でその地力に屈する格好となったが、13-52と大敗した昨年11月の対戦とは異なり、キックオフ直後から重圧を受けるスクラムでも互角に組み合えるまでに対抗。強豪相手に60分近くまで競り合いながらの展開を続けた。
ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)も、姫野主将の発言に頷く。
「もちろん残念ですが、選手には誇りを持っています。自分たちのチャンスも作れました。チームは頑張ったと思うので、次の試合に向けてやっていきたい」
敵将も日本の戦いぶりを称えた。イングランド代表を率いるのは、2015年大会まで日本のアシスタントコーチ(FW担当)も務めたスティーブ・ボーズウイックHC。日本を知り尽くす指揮官は、もちろん敗者を称える配慮も含めて、この日の“古巣”を称えている。
「日本はとても賢明なプレーをしていたと思います。アタックでのキックが上手く、我々の防御の後方に落とすようなキックは、以前ならそこまではやっていなかったと思います。そのような部分では、とても上手くキックを使っていた。我々を苦労させたことには拍手を贈りたいですね。コーチングは素晴らしかったと思います」
リズムを掴みかけた連続攻撃でのパスミスや反則に課題
伝統的にキックを軸にゲームを組み立てるイングランドだが、この日の日本は、そのキック戦法に応戦。SO松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、SH流大(東京サントリーサンゴリアス)のHB団を中心にキックを使って敵陣に攻め入り、戦うプランを貫いた。その流は、敗戦の中の収穫と敗因をこう振り返った。
「基本的にはゲームプラン通りに進められましたし、FWがすごくセットプレーも頑張ってくれた。クロスゲームをしていこうというのがプランだったので、そのへんは良かったと思うが、こっちがミスをして相手に主導権をあげてしまうことがあったので、その辺の差が出て、こういう結果になったと思う」
段階的に改善されてはいるが、流がミスを敗因に挙げているように、7、8月の代表戦でも課題に浮上した完成度の低さは、この日も露呈した。イングランドの先制PGに繋がるFBセミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ)のハンドリングミスをはじめ、リズムを掴みかけた連続攻撃でのパスミスや反則など、スコアチャンスを潰すプレーも相次いだ。
プールDでの決勝トーナメント進出争いでは、次のサモア戦が負けられない戦いになってきた。22日(日本時間23日)にはアルゼンチンVSサモアという注目カードもあるが、FLリーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)はイングランド戦で次戦への好感触を掴んでいる。
「すごく強い相手にプレッシャーをかけることができていた。たぶん同じゲームプランでいくと思うので、ディフェンスを微調整していけば、もっと楽な試合運びができると思う」
ボーナスポイントなしの敗戦は、決勝トーナメント進出には大きな痛手であり選手の落胆も大きいが、収穫も見出した。サモアが消耗も激しいはずのアルゼンチンと対戦してから、中5日で日本戦を迎えるのに対して、日本は倍の中10日。コンディショニングも準備も万全の中で、完成度を高めて“負けられない一戦”へ向かう。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)
吉田 宏
サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。
