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まずはデザインをチェック

執筆:Shinichi Katsura(桂伸一)

新生エミーラのルックスは、ロータスファンはもとより、目撃したヒトのハートを鷲掴みするに違いない。事実、問い合わせは日毎に増加中。これほど世界が絶賛するロータスが過去にあっただろうか。

【画像】最後の純エンジン・ロータス 「エミーラ」のデザイン/内装【細部まで見る】 全62枚

従来のモデルとは似て非なるロータス!? いやフロントマスクを注意深く眺めていると、ラジエターグリルとヘッドライトの関係はロータスの血縁ではある。リアビューもつまみ上げたように上を向いた造形で、エリーゼ以降の流れをより洗練させたカタチ。


ロータス・エミーラV6ファーストエディション    エルシーアイ

ノーズ先端から、フロントウインド〜ルーフ〜エンジンフードたるリアウインドウ(トランクリッドを兼ねる)〜スポイラーまで、一筆でサッと描ける流麗なフォルムは、イタリアンスーパースポーツのように美しい。

デザインをまとめたのはロータスを数多く手掛けてきたラッセル・カー。

サイズは全長4413×全幅1895×全高1226mm、2575mmのホイールベースも含めてほぼエヴォーラ級だが、わずかに大きいのは衝突安全性を確保するための見地と、もちろんデザインのため。

どこから眺めても隙のないグラマラスな面と曲線のボディはFRP製で、繊細な美しさもある。

車重増も、そこはロータス

ロータス流にアルミ押し出し材を接着剤で組み立てたバスタブシャシーに、フロントはサスペンション、リアはエンジン含む駆動系をサブフレームに載せて組み合せる構成は従来と変わらない。

“ロータス=軽量コンパクト”なイメージだが、世界基準の先進安全装備を充実させると、試乗車(英国仕様)では3.5L V6+6MTが1493kg。AT仕様は1500kgの車重になる。


エミーラV6ファーストエディション    エルシーアイ

とは言え、走ればロータスらしいハンドリングと動力性能・安定性を持ち合わせていた。

EV化に邁進するロータスが送り出した最後のICE=内燃機ガソリンV6!? と言われてはいるが、そこは時代の流れ。ガソリンはダメでも代替燃料で内燃機は生き延びる可能性はある、と筆者は思っている。

フラッシュサーフェスのドアハンドルは先端を押すと後端が飛び出し、それを握ってドアのラッチを外すプレミアムカー的演出。バスタブの淵をまたぎながらつま先からバケットシートに滑り込む乗降性に造作はない。 

反力はしっかりあるが、軽いクラッチを踏み込み(2ペダルに慣れるとこの作業すら忘れている)赤いカバーを跳ね上げてスターターボタンを押すとV6スーパーチャージャーは瞬時に目覚める。

おすすめのモードは?

走行モードは標準が「TOUR」。「SPORT」でエグゾーストのバタフライが開き、サウンドに重厚感が増す。アクセルオフ時には、アフターファイアならぬエグゾーストからのパラパラ音も響く。

「TRACK」ではアクセルレスポンスがさらに過敏に鋭くなる分、クラッチ、ギアシフト、とくにダウンシフト時の“回転合わせのブリッピング”は、瞬時にエンジン回転が跳ね上がり過ぎて一連の連携操作にチグハグ感が出る。なので一般的にはSPORTまでが滑らかな走行に向く。TRACKはサーキットや精神的に攻撃モードになった時用か!?


袖ヶ浦フォレストレースウェイに持ち込まれたイギリス仕様の内装。    エルシーアイ

アルミの手触りが冷たいシフトレバーは、左右のゲートと前後ストローク量がGTカーとして丁度いい感触。カチッと確かなインシフト感は従来からのロータス流。
 
405ps/42.8kg-m(ATは43.8kg-m)の存在をリアから感じつつ、アクセル操作にダイレクトに加減速する。このエンジンとの一体感からくる感触も、ミドシップ・ロータスならでは。

わずかなステア操作に即反応するノーズの動きも俊敏で、これはゴーカートのようだ。

ロジャー・ベッカーの言葉

試乗車は限定車のV6ファーストエディション。取材した個体はイギリス登録のため日本の公道走行は叶わず、袖ヶ浦フォレストレースウェイが日本初走行の場。ここの良さは路面のミューが一般公道と同じため、通常走行と同じ操縦安定性が確認できること。

ドライからウエットへと変化するなかで、ハンドリングは微少舵角から正確応答してノーズの向きを変える。市街地走行シーンでは、ほぼフラットな姿勢を保つ。


エミーラV6ファーストエディション    エルシーアイ

速度が増すにつれて舵角とロール量は自然に増す。その動きはエリーゼとは違い、エヴォーラに近いが、引き締まった応答性に対して乗り味はよりマイルドなGTカー的な印象。

路面がウエットに変化すると、コーナリング特性は速度に応じてニュートラルから弱アンダーステア方向に変わる。

LSDを持つ試乗車は、フロントタイヤの手応え・舵の効きを感じて曲がり始めたところでアクセルを深く踏み込めばパワーオーバーステアを容易に演出可能。

「自然発生するオーバーステアはNGだが、意図したところで生み出せるオーバーステアは善し」……ロータスハンドリングの基盤を築いたロジャー・ベッカー氏からの教えは、そのまま最新のエミーラにも生きている。

AMG直4ターボか、V6か

ブレーキはフロントは4ポッドキャリパー+370mmVディスク。リアは2ポッド+
350mmでブレーキ操作初期から制動の立ち上がりは急。パッドの喰い付きもいいため“踏み過ぎる”傾向にある。

とくにMTで減速、シフトダウンにヒール&トゥを絡めると、止まり過ぎてギクシャク感が出る。慣れの問題ではあるが、ブレーキのオーバー“サーボ感”をいま味わうとは、ある意味新鮮である。


エミーラV6ファーストエディションの内装    エルシーアイ

触手が伸びている方の悩みは、パワーユニットをどうするか、ではないだろうか。「ロータスはMTで」であれば問答無用でV6+6MTを。

ATの2ペダル派なら、まだ見ぬ直4の走行フィールを知りたいところ。

個人的にMT派だが、それでもAMG製2Lターボの特性を知るだけに、待ってでも直4か、と個人的にはそう思うのであります。