中日・細川成也【写真:荒川祐史】

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第1回現役ドラフトで移籍した阪神・大竹、中日・細川が活躍

 開幕からおよそ2か月が経った今季のプロ野球。各チームではおおかた“今季のカタチ”が固まったが、選手一人ひとりに目を向けると、期待通りのパフォーマンスを見せる選手、思わぬ壁にぶつかった選手、あるいは驚きの躍進を遂げた選手など状況は様々だ。

 それでは、2022年オフに初めて実施された「現役ドラフト」で指名され、新天地に移った12選手の現在はどうだろうか。阪神の大竹耕太郎投手(前ソフトバンク)、中日の細川成也外野手(前DeNA)らはチームの主力として活躍する一方、ここまで一度も1軍でプレーしていない選手もいる。野球評論家の井口資仁氏は「現役ドラフト」について「埋もれている選手にチャンスが与えられる良い制度」と一定の評価をしながら、「実施方法や内容は精査する必要がある」と指摘する。

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 現役ドラフトで阪神に移籍した大竹が6戦先発で5勝無敗&防御率0.48、中日に移籍した細川が打率3割超でクリーンアップを任されるという素晴らしい活躍をしています。大竹は実績のある投手ですし、ホークスでもかなり良かった。ただ、ずば抜けて速い球を投げるわけではなく、技巧派と呼ばれるタイプで埋もれがちでした。細川もいいものは持っているけれど、1軍で定着しきれなかった選手。新たなチームで活躍の場を得たことは素晴らしいことです。

「現役ドラフト」という制度は、なかなか出場機会に恵まれない選手たちを“飼い殺し”にしないための仕組みとして、とてもいいものだと思います。2018年から日本プロ野球選手会がNPBに導入を提案し、折衝を重ねた結果、ようやく昨年第1回が実施されました。NPBが選手の声に耳を傾け、時代に合った変化に踏み出したことは大きな意味を持ちます。同時に、現役ドラフトで移籍した選手の現状を考えると、制度の内容はブラッシュアップされるべきでしょう。

制度を形骸化させないための細かなルール設定を提案

 大竹、細川が活躍するセ・リーグは、その他にも広島の戸根(千明・前巨人)が救援として1軍に定着し、結果を残しています。5月上旬に1軍登録から外れたものの、巨人に移籍したオコエ(瑠偉・前楽天)も環境が変わって成功した例でしょう。オープン戦からしっかりアピールしていましたし、23試合で打率.247、2本塁打6打点とまずまずの成績を残している。これまで以上に多くの視線を感じ、危機感を持ちながらオフとキャンプを過ごせたのが良かったのかもしれません。巨人のチーム事情もあるでしょうが、シーズンを通じて1軍で見たかったですね。

 ヤクルトの成田(翔・前ロッテ)、DeNAの笠原(祥太郎・前中日)も現在はファームにいますが、開幕後に1軍マウンドに上がりました。

 一方、パ・リーグは最近、西武の陽川(尚将)が1軍に昇格して初打席でホームランを打っていましたが、1軍での出場機会が最も多いのがロッテの大下(誠一郎・前オリックス)で10試合、ソフトバンクの古川(侑利・前日本ハム)は5登板。楽天の正隨(優弥)は1軍出場したものの現在はファームで、オリックスの渡邉(大樹・前ヤクルト)と日本ハムの松岡(洸希)はここまで1軍出場はありません。

 リーグの違いというよりも、即戦力を求めたのか、少し先を見据えた戦力を求めたのか、球団の考え方の違いの表れと言えそうです。即戦力として獲得した選手はしっかり活躍していますよね。ただ、現役ドラフトの意義を考えた時、未来を見据えた戦力補強の機会としていいものか。チャンスが回ってこなかった選手に対する救済と考えるなら、メジャーで実施されている「ルール5ドラフト」の要素を少し採り入れるべきかもしれません。

 現役ドラフトがヒントを得た「ルール5ドラフト」には、ドラフト指名できるのはプロ在籍4〜5年以上の選手に限られたり、球団は指名した選手を翌シーズンの全期間にわたりメジャーで起用しなければならなかったり、細かな規定があります。日本でも今後は、ドラフトされてから何年以上経った選手を対象とするとか、育成契約で2年以上経った選手は自動的にドラフト対象になるとか、獲得した選手は翌シーズン最低○○試合起用しなければならないとか、ルールを精査していく必要があるでしょう。

 また、ドラフト対象となる選手をチームが提出するのではなく、保留選手以外から他球団が欲しい選手をピックアップできる制度にできればいいですね。第1回の方法だと、チームが提出したドラフト対象選手は、裏を返せば戦力外であると言っているようなもの。ドラフトされた選手の中には複雑な心境だった人もいるでしょう。実際には、なかなか1軍昇格のチャンスがなく他のチームに行きたいと思っている選手は、どの球団にもいます。そういった選手の意向も汲めるような形ができるといいのではないかと思います。

増えつつあるトレードに込められた監督たちの親心

 先日も巨人とオリックスが廣岡(大志)と鈴木康平の交換トレードをしました。以前に比べてトレードの数は増え、ネガティブなイメージを持たれることも減ったと思います。選手が1つの球団だけではなく、色々な球団を経験することは視野が広がり、いいこと。僕自身、日本では2球団、メジャーでは3球団でプレーしましたが、球団によって全くカラーが違うと知れたことは大きな財産です。さらに、応援してくれるファンも増えますからね。

 チームとしても色々な経験を持つ選手の加入は大歓迎なので、もっとトレードや現役ドラフトが活発になると野球会全体が活性化され、よりよいものになると思います。実は、監督同士では割とよくトレードの可能性を探るやりとりをしています。トレードで移籍した先で活躍されたら困るのでは、と聞かれることもありますが、監督やコーチなど現場にいる人がそう考えることは、まずありません。

 現場としては足りない戦力が欲しいし、出番のない選手が他チームでチャンスをもらえるなら応援したい。監督だってかつては選手だったわけですから、どの選手にも1年でも長くユニホームを着て野球をやってもらいたい想いがあります。その年の構想に上手くハマらずなかなか1軍に上がれない選手は、2軍で頑張り続けるよりも他のチームに行って1軍で使ってもらう方が道が拓けることもある。また、トレードされたオフに戦力外となることは少ないと考えると、期限ギリギリでもトレードに出して1年でも2年でも現役生活を延ばすことができたらと画策することもある。

 この想いはどの監督も一緒。だから、監督同士ではよく「この選手欲しいんですけどどうですか?」「だったら、あの選手とトレードできる?」という会話をしています。監督会議やキャンプの時、あるいはトレード期限が迫る交流戦の時は、監督同士でトレード案の交換をすることもよくあること。監督同士で話した案をそれぞれ編成担当に伝え、そこから編成同士で話し合ってもらうわけですが、実現するものもあれば、年俸の差や色々な理由でまとまらないこともあるのが現実です。

 選手が1年でも長く現役を続けられるチャンスを増やすため、そして何より応援してくださるファンの皆さんに魅力的な野球をお届けするためにも、現役ドラフトのさらなる整備、そしてトレードの活性化に期待したいと思います。(佐藤直子 / Naoko Sato)