優勝するチームには、必然がある。
 7月27日に行なわれた韓国戦で、森保一監督率いる日本代表は3対0で勝利した。E−1選手権の通算成績を2勝1敗とし、韓国を抑えて13年以来2度目の大会制覇を成し遂げた。

 アルベルト・ザッケローニが指揮した13年大会のチームは、大会前から何かをやってくれそうな期待に満ちていた。J1リーグで好調の柿谷曜一朗や大迫勇也、齋藤学や工藤壮人がいて、中盤には青山敏弘や山口蛍らがいた。最終ラインには森重真人や元気印の千葉和彦がいて、ベテランの駒野友一がキャプテンを任されていた。GKは西川周作と権田修一である。

 ブラジルW杯の出場権を勝ち取ったザッケローニは、残り約1年で新たなタレントを発掘しようとしていた。選手たちもようやく巡ってきたチャンスを生かそうと、野心に溢れていた。ギラギラとしたものが伝わってきて、それが頼もしくも感じられた。

 それと同時に、チームとしての一体感があった。ザックにアピールをするためには、お互いの良さを生かさなければならない。チームとして機能することで個が輝く、ということを理解している集団だった。

 だから、ゴールをあげるとチーム全員で喜んだ。歓喜に沸く姿はとても楽しそうで、こちらも気持ちが前のめりになっていく。

 東アジア選手権から東アジアカップに呼び名が変わり、現在はE−1選手権となった今大会は、率直に言って価値の高いものではない。勝っても得るものは多くなく、負けたからといって失うものも少ない。誤解を恐れずに言えば、かなり多くの人にとって記憶に残らない大会である。

 それでも、あの13年大会のメンバーは個人的に印象深い。ついに覚醒した柿谷を見ることができたのが大きかったのだが、チームとしての「一体感」と一人ひとりが胸に宿す「野心」が、絶妙なバランスを保っていたからだった。

 今回のチームにも、同じものが感じられた。

 開幕を4カ月後に控えたカタールW杯へ向けて、E−1選手権は国内組のラストチャンスと位置づけられていた。W杯に出場するチャンスは、当たり前だが4年に一度しか巡ってこない。選手なら誰もがチャンスをつかみたいと思うはずで、森保一監督にアピールしたい気持ちは相当なものがあったはずである。

 しかし、エゴが先走ることはないのだ。得点が決まれば、歓喜の輪が広がった。決定機を逃すと、ベンチメンバーが大げさなほど落胆した。一つひとつのプレーを、自分事としてとらえているからこそのアクションだ。

 韓国戦で相馬勇紀が先制点をあげると、ウォーミングアップをしていたメンバーが一斉に駆け出した。こっちへ来いと手招きをして、歓喜の輪が大きくなっていった。

 ケガの治療などで試合が途切れると、ベンチメンバーはペットボトルを握ってタッチラインに近づく。試合に出ている選手の給水を補助するのだ。

 クラブチームではよく目にする光景である。日本代表でもお馴染みだ。急増チームでも同じことができていたところに、このチームのまとまりが感じられた。

 13年の優勝メンバーからは、西川と権田の両GK、森重、青山、山口、柿谷、大迫、齋藤がブラジルW杯の代表を勝ち取った。

 今回のメンバーはどうだろう。海外組を中心とするチームは、すでにかなり固まっている。加えて、残された強化期間は9月のテストマッチだけだ。新戦力を取り込む時間は少ない。今大会でアピールした選手にとっても、カタール行きはかなりの狭き門だ。

 それでも、個人的にはこのチームを記憶に止めると思う。「あのE−1選手権をきっかけに飛躍した」とのちに言われる選手が、出てくるような気がするのだ。