イギリスの海軍将校で北極探検家であるジョン・フランクリンは1845年、探検の途中で130人の乗組員と共に行方を絶ちました。その後、船の行方はわからないままでしたが、イヌイットたちの間では「沈んだ船」が語り継がれていたことから現代イヌイットの研究者らが深海での調査を敢行。この結果、沈んだばかりに見える非常に保存状態のよい沈没船が発見されました。

'Frozen in time' wreck sheds new light on Franklin's ill-fated 1845 Arctic quest | World news | The Guardian

https://www.theguardian.com/world/2019/aug/28/hms-terror-sir-john-franklin-evidence-recovered-arctic-ocean

発見された沈没船内部の様子は以下から見ることができます。

Parks Canada Guided Tour Inside HMS Terror - YouTube

1845年に消息を絶ったのはHMSエレバスとHMSテラーの2隻。その後、沈没から170年が経過した2014年にHMSエレバスが、2016年にHMSテラーが発見されました。



沈没船の調査を行ったのはカナダの政府機関であるパークス・カナダの調査チームとInuit Heritage Trustという2つの機関。またFranklin Interim Advisory Committeeの助言もあったとのこと。



調査チームは2019年8月上旬、数週間にわたってキングウィリアム島沖を3Dマッピング技術を使って調査し、船の沈没場所を特定しました。



ボートを使って沈没場所を特定し、調査員が海へと潜ります。この場所はカナダによって管理されており、政府の許可がなければアクセスできないため、これまでイヌイットの調査チームは手をつけることができなかったとのこと。



海底に沈むHMSテラー。



冷たい水の中で船はとてもよい状態を保っていました。



船の内部は遠隔操作可能なデバイスによって調査が行われました。調査員の一人がカメラが搭載されたデバイスを上甲板から船の中にいれていきます。



これが内部の様子。船内も仕切りが崩れることなく、部屋の形をとどめています。



壁付けの棚。



ビンや……



皿が並んでいます。



さらに通路をいくと……



船員が過ごしたであろう個室もありました。寝室用便器や机のほか……



寝台



たんすなどもそのまま残されていたとのこと。



壁には銃がかけられています。



調査員が割れた窓から覗き込んでいるのはフランクリンの個室。



ここも無傷ですが、寝室だけはドアが閉まっていて中に入れなかったそうです。



デスクに……



イス。



多くが沈泥に覆われており、海の生き物もいましたが、デスクは引き出しが閉まった状態であり、調査が進めば引き出しの中から航海の資料を発見できる可能性もあるとみられています。



なお、調査チームは今後数カ月かけて調査の結果を分析する予定となっています。