サッカーが本当に生活に根付いている中で、活躍して認められるってどんな感じだろうかと体験してみたかった。

 先日、北アイルランド出身の父親が試合を見に来てくれたけど、数百人の地元の観客を前にプレーする自分の姿を久々に見て喜んでくれたのは、かなり素敵な時間でした」

 では、実際の7部リーグの現状とは、いかほどのものなのだろうか?

「やっているサッカーといえば、下部リーグのプレースタイルは伝統的な『ザ・キック・アンド・ラッシュ』。めっちゃ蹴りますよ。けど、それはなぜかといえば、ピッチの芝が良くないから。でも、その試合がつまらないかというと、迫力があって面白い。違うスポーツをやっている感覚なんです。

 空中戦で身体と身体がぶつかる激しい音であったり、タックルの入り方の深さで、観客が盛り上がる。セミプロには、本当に若い選手たちが降りてきて、修行を続けていて、選手層の厚さを感じます」

 今週末の5日からイングランドでは、プレミアリーグ勢も登場するFAカップが再開される。この世界最古のカップ戦の予備予選に、かくいうカレンも出場していた。惜しくも、結果は予選4回戦負けだったが、大会の歴史の深さを肌身で感じていた。

「予選4回戦まで勝ち上がり、残り数試合で2部以上のクラブとの対戦が可能だっただけに本当に残念だったけど、FAカップの盛り上がりは凄かった。ファンのテンションもいつもと違うし、クラブの財政も懸かっていて、感じる期待が明らかに違いました。普通、アウェーゲームは現地集合だけど、このときだけは、バスがクラブから出ていましたから。これがジャイアントキリングへの期待感か、と思いました」
 結局、レザーヘッドFCで20試合で3ゴール・4アシストという戦績を残したカレンの元へは、クラブ側から延長の打診はあったが、彼は契約期間を更新せず、残りのシーズンで英6部クラブでのプレーを模索している。

 そんななか、カレンは今春から日本へ復帰することを発表した。自身がオーナーを務める千葉県社会人1部の「ローヴァーズ木更津FC」でプレーすることになったのだ。

 約9年ぶりに日本サッカー界へ復帰するカレンは、「自分がたどり着けなかったプレミアリーグで活躍する選手が出てきてほしいと強く願っています」と、“最終目標”への想いを熱く語ってくれた。

「2013年の夏にクラブを立ち上げました。イギリスには、ローヴァーズという名のつくクラブが多いのですが、調べてみると、英語で『さすらい人』という意味が出てきて、これはこれまでの自分のキャリアにぴったりな名前だと思いました。

 トップチームが木更津からJリーグを目指せるクラブにしたい。今、イギリスの下部リーグでプレーして思うのは、日本にもサッカー専用の、距離感が近いスタジアムがもっと増えてほしいということ。だから今は、4部から6部の、5000人規模のスタジアムを運営しているスタッフにインタビューしながら、どのように経営されているかを聞いて回っています」

 世界各地をサッカー選手として渡り歩き、33歳というキャリアも晩年に差し掛かろうかというタイミングで、地域リーグのクラブオーナーとして本格的な経営を始めた決断は、やはり稀有だ。

 もしもこの先、従来のサッカー選手ができなかった可能性を提示することができれば、“さすらいサッカー人”カレン・ロバートに、さらなる注目が集まることだろう。

取材・文●竹山友陽 text by Tomoharu Takeyama