千葉大医学部

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師走も押し迫る今日このごろ。まだまだ“師”から学ばなければならないであろう学生たちによる、わいせつやレイプといった性犯罪が相次いでいる。目立つのが、いわゆる“高学歴”“エリート”と言われる有名大学の学生たちによる集団暴行事件。なぜ、いま彼らは“集団”で人を犯すのか。なぜそれは増えているのか─。

「レイプする人は、まだ正常に近いんじゃないか。元気があるからいい」

 自民党のある議員が失言したのは'03 年のこと。同年、社会に大きな影響を与えた早稲田大学のサークル『スーパーフリー』による集団強姦事件を指しての言葉だった。14人もの学生が準強姦罪で起訴され、集団強姦罪の創設にもつながった忌まわしい大事件から13年。また大学生の集団による性犯罪が相次いでいる。

「こういう事件が多いから、彼女ひとりで男がいる飲み会に行かせるのは本当にイヤ。束縛みたいでよくないと思うけど、こうも続くと彼女がしっかりしていても危ないんじゃないかって」

 そう話すのは、千葉大学に通う20歳の男子学生。

 11月21日、同大学医学部5年生の男3人が、飲み会に参加していた20代の女性を乱暴したとして集団強姦致傷容疑で逮捕された。

「男子学生3人は、居酒屋のトイレに女性を連れ込んでわいせつな行為に及んだうえ、泥酔した女性を自宅に連れ込み、強引に行為に及んだそうです」(全国紙社会部記者)

 医学部の学生たちに話を聞くも、加害者を直接知る者はいなかったが、

「医学部の学生だけが所属する体育会系の部活に入っている人だと聞いています」(19歳/女子学生)

 という声も。話を聞いた翌日の11月23日、昨日まで閲覧できた医学部のある体育会系の部のHPが閲覧不可能に。ツイッターも見ることができなくなってしまった。いったい、どんな部活なのか。

「その部は飲み会がキツいことで有名。ピッチャーでイッキ飲みさせたり、全裸になったりは当たり前だという話です」(20歳/男子学生)

 千葉大は調査委員会を設けたと発表した。現在の調査状況や今後について聞くと、

「調査中ですので、調査の進展や結果の公表の有無など現段階でお話しできることはありません」(千葉大学広報部)

 という回答だった。

 学生の集団による性的暴行は千葉大医学部だけではない。今年5月には、東京大学の学生5人が、21歳の女子大生に対しての強制わいせつで逮捕。

「学生5人は同じサークルに所属するメンバー。居酒屋での飲み会の後、マンションに連れ込み暴行しました。逮捕された学生はみな、サークルでの目的は“女性を酒に酔わせてわいせつな行為をすること”だったと供述しています」(前出・社会部記者)

 事件はまだある。今年9月、“女子アナの登竜門”と称される『ミス慶應コンテスト』を主宰する慶應義塾大学の広告研究会が、大学側から解散を命じられた。

「表向きは未成年への飲酒の強要です。実際は酒を無理やり飲ませ性的暴行に及んだことで、現在捜査が進められているそうです。千葉大は事件の詳細が公表されていないので不明ですが、東大、慶應大ともに被害者の女性は加害者と顔見知りだったそうです」(前出・社会部記者)

専門家の視点

 東大、慶應大、千葉大医学部……。これらの性犯罪における加害者の共通点は“高学歴エリート”という点。なぜ彼らは性犯罪に走るのか。

「千葉大医学部の学生も含めて、偏差値の高い有名大学に通う彼らは、自分たちにはステータスがあり、“ブランド”だと考えています。また、そのブランド力に惹かれる女性がいることも理解しています。それに惹かれて寄ってくる女性なら“何をやってもかまわない”という意識が少なからずあるのだと思います」

 そう話すのは、若者の心の問題に詳しいジャーナリストの渋井哲也氏。

 バブル景気に華やいでいたころ、「高学歴」「高収入」「高身長」という“三高”という言葉がもてはやされた。「東大」も「慶應」も「医学部」も、30年ほど前から、価値の高い“ブランド”とされてきた。

「“寄ってくるやつが悪いんだから、被害を告発しないだろう”という発想があったのだと思います。推測になりますが、被害者から訴えられなかったという、ある意味“成功体験”もあったのではないでしょうか」(前出・渋井氏)

 また、性依存症の治療に詳しい榎本クリニックの精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏は、

「性犯罪は見ず知らずの相手に対して“単独”で行うケースが比較的多いですが、今回の事件のように集団の場合、行動化への抵抗感も、行動後の罪悪感も少なくなります。

 また、ブランド化された有名大学の自分なら“相手も性的接触を望んでいる”というようなエリート意識があるゆえの認知の歪みが背景にあったのではないかと思います」

 大学生の性犯罪は、なぜいま多発しているのか。

「発覚による二次的被害を恐れて、被害者が警察に被害を申告しない、処罰を求めない傾向がこれまでありました。しかし近年、被害者が警察に被害を申告し、処罰を求める件数が増加したため、事件として取り扱われる件数も増えているのだと考えられます」

 そう話すのは、『弁護士法人・響』の寺野朱美弁護士。

 また、加えて渋井氏は、

「以前は被害者に対応するのが男性だったりしましたが、今は基本的に女性の警察官。捜査もきちんと被害者をケアしたものになってきたことで被害の申告が増えたのでは」

「集団」とともに事件にかかわるキーワードが「酒」。

「泥酔させた後に起こる性暴力の危険性は、もっと啓発されていかなければならないと思います。イッキ飲みの強要などの“アルコールハラスメント”は、急性アルコール中毒死の危険性ばかりが啓発されていますよね。もちろん命を落とすことはあってはなりませんが、性暴力被害の重大性も念頭に入れるべきです」(前出・斉藤氏)

 罪を犯した学生たち。その量刑はどの程度になるのか。

「強姦罪では、7割程度の者が3年から10年以下の懲役刑を言い渡されています。強制わいせつ罪では、6割程度の者が執行猶予のついた3年以下の懲役刑。犯罪を計画した者や重要な役割を行った者は重く処罰される傾向です」(前出・寺野弁護士)

 人より高いレベルで学問を学んできた彼ら。本当に学ばなければならないのは“人間性”なのかもしれない。