顧客対応のプロが教える「クレーム対応の基本7カ条」
よかれと思って言ったひとことで、かえって怒りを買った経験はないだろうか。謝罪の言葉は、相手に合わせてこそ効果を発揮するもの。どんなタイプの人にも必ず伝わる、お詫びの仕方を紹介する。
■守るのは会社でなくお客様
何らかの過失を犯したときに自分や自社の非を認めて謝罪し、信頼の回復に努めるのは当然の行為であろう。しかし、実際にそうした場面で適切な謝罪を行うのは難しい。
謝罪の相手はさまざまで、激怒して一方的に怒鳴られたり、本筋とは関係のないことまでネチネチと責められる場合もある。相手の勘違いによるクレームもあれば、過失に見合わない過剰な要求をしてくる人もいる。
それでも場面に応じた適切な謝罪ができなければ信頼を失って顧客に逃げられたり、下手をすれば企業の存亡にかかわる事態も生じかねない。本気で悪いと思っているとは感じられなかった「焼肉酒家えびす」の謝罪会見が世間の怒りを買い、倒産に追い込まれる一因となったのは記憶に新しい。
どのようにすれば相手の怒りを鎮め、謝罪を受け入れてもらえるのだろうか。長年にわたり百貨店でお客様相談室長などを務め、現在もアドバイザーとしてクレーム対応の第一線に立つ関根眞一氏は、多種多様な謝罪の場面における基本は「相手の真意を突くこと」だと語る。
「何を言いたくて相手がクレームを入れているのかがわかれば、自然とこちらの対応の仕方も見えてきます。相手の真意を突くには『お困りなのだな』と、本気で相手の身になって考えることです。心の中で『クレームかぁ……』と思った途端、相手に対して隔たりが生じ、結局は察知されてしまいます」(関根氏)
関根氏はクレームへの基本的な対応として、次の7カ条を掲げている。
【1】非を認めて謝罪
【2】感情を抑えて素直に聞く
【3】正確にメモを取る
【4】慌てず冷静に考えてから説明
【5】現場を確認する
【6】迅速かつ正確に対応する
【7】対応は平等に
自分や会社を守ろうと身構えすぎると、謝罪の言葉を言っても形ばかりになり、かえって誠意を疑われ相手の怒りを増幅させる。謝罪は本心から申し訳ないと思ってこそ相手に通じるもの。「守るのは会社ではなくお客様」という気持ちを持つことだという。
ただし、いま述べたことは「正しいクレーム」への対応であって、勘違いによるクレームに対しては、勘違いであることをわかってもらうための話し方が求められる。怒っている人に対して「あなた、間違っていますよ」と直接的な言葉で伝えると、それ自体がクレームのもとになりかねない。まずは相手の怒りを鎮め、冷静になったところで事実を伝えることが重要だ。
■クレームは経営を支える「金の卵」
謝罪という行為のポジティブな面を見ると、個人や企業の姿勢が問われる場面で適切な対応ができれば、信頼関係を強化する機会にもなる。コールセンターで2000本以上のクレーム対応に接した経験を持つクレーム・コンサルタントの谷厚志氏はこう語る。
「ある企業のCS推進室でロイヤルカスタマーの顧客データを調査したところ、その大半がかつてクレームを上げたことのあるお客様でした。その理由はクレームの際にしっかり対応しフォローできたことで、お客様から信頼を寄せられるようになったからです。つまり、クレーム客は経営を支えてくれる金の卵なのです」(谷氏)
大手人材派遣会社の営業本部長を務め、現在はクレーム対応研修を実施している秋元次郎氏は「クレーム対応はもっとも重要な営業スキルの一つ」と指摘する。
「売り上げを伸ばしていくには新規開拓も大切ですが、既存のお客様を失わないことのほうが重要といえます。いくら新規の顧客を獲得できても売り上げを伸ばせない営業マンは、既存顧客のアフターフォローを軽視しているのではないでしょうか。謝罪の仕方やクレーム対応のスキルが欠けていることも多いのです」(秋元氏)
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損害保険会社を経て、人材派遣会社マンパワージャパンにて約20年勤務。銀座支店長、営業本部長、オペレーションサポート本部長等を歴任。2003年独立し、現職。主に派遣元事業主へのコンサルティングや派遣先向けセミナーを全国で多数実施する。
弁護士 間川 清
1978年生まれ。25歳で司法試験に合格し、ポート川越中央法律事務所設立。損害賠償事件、刑事被告人弁護など年間200件以上の弁護士業務を担当。被害者への謝罪・示談交渉、悪質クレーマーへの対応等を通して謝罪術を確立。著書は『うまい謝罪』など。
クレーム・コンサルタント 谷 厚志
1969年生まれ。リクルートにてCS推進室を担当。2000本以上のクレーム対応を通し「クレーム客をロイヤルカスタマーに変える方法」を確立。現在は独立して、コンサルティング・講演などを行う。著書は『「怒るお客様」こそ、神様です!』など。
苦情・クレーム対応アドバイザー 関根眞一
1950年生まれ。西武百貨店にて全国3店舗のお客様相談室長および池袋本店お客様相談室を担当。在社中は1300件以上のクレーム・苦情を処理。2003年退社し、NPO事務局次長を経てメデュケーション代表取締役。著書は『となりのクレーマー』など。
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(宮内 健=文 向井 渉=撮影)
