どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

筆者も日常的に使っている「LINE」、もはや現代のコミュニケーション手段として今では欠かすことができない存在になりました。

しかしこのLINE、裏社会に巣食う人間たちからすると格好のツールなのです。例えば、性犯罪、LINE援交、出会い系、偽アプリ、偽スタンプ、偽メッセージetc……。善良な人々が楽しめる連絡ツールのはずが、様々な犯罪への入り口とも化しうるのです。

その中でも、LINEを利用した闇金融業者がことが問題視されています。

携帯電話の番号すら明かすことなく、アカウントだけで連絡できる高い匿名性、身近になったLINEに対して、危機意識を募らせずらいことが《LINE闇金融》が広まってしまった要因と思われます。

かつては栄華を極めた暴利の暴力金融を経営し、出資法違反で逮捕。それからは、押し貸し、買取屋、車リース金融、質屋闇金とアイデアを出し続け、未だ闇金融道から足を洗うことがないK氏(56歳)に、今回は最近増加中のLINEを入り口にする闇金融の手口を聞いてみました。

《LINE闇金融》の手口

丸野(以下、丸)「これはどういった手口なんでしょうか?」

K氏「出資法が厳しくない昔は、固定電話を置いて、すべて違う名前の金融業者を名乗って新聞広告を載せてたんだけど、今やったら闇金融は携帯電話しか持たない。最近じゃ、電話番号も明かさない業者が増えてきたんや。それがLINEを中心にしたSNSを使う業者やな。これがチャンスやった。闇金融業者はほとんど“トバシ”という他人名義の携帯電話を使う。でも、警察に通報が入ったときには、その電話番号は使えなくなるわけ。だから、事務所にトバシの携帯が山ほどあった。でも、やっぱりそれなりに金がかかる。それがアプリにとって替わった。LINEを金銭貸借のやりとりに使うことで、携帯電話の番号を知られることすらない」

丸「なるほど。もしも利用者が警察に駆け込んだとしても、アカウント削除で済みますもんね」

K氏「それで新しいトバシの携帯電話を手に入れる必要がなくなったわけや。LINEを使う一番最速で簡単な方法は、LINEでダイレクトメールを飛ばして、勧誘すること。これが意外に集客になる。知らんIDから“本日中に10万円借りられます!”と送りつければ、20件に1人は反応してくる。しかもこのコロナ禍やろ、みんなピーピーや。それに、電話番号を無作為抽出して送りつけるから、実際に存在したIDの情報を集めて、リストとして売ってるよ。そのリストを買った同業者がまた貸し付けてくれるから、ウチにも返済があるし、堂々巡りになるええカモや」

丸「ヒドイですね」

Webサイトを立ち上げる方法、そして実態が掴めない貸主

K氏「イマドキの闇金融は、デザイナーやらSEなんかを雇って、見栄えのいいWebサイトを立ち上げよる。そこに、“まずはLINE IDで借り入れのご相談に乗ります”と書いてQRコードを載せておけば、至極マトモに見えるわけよ、借金まみれの連中には。そんなやり方もある。それからWeb上から簡単に申し込みができるという手軽さに、客は安心する」

丸「なんだかヤクザがやることとは思えないですね」

K氏「ヤクザもインターネットの知識をつけてきてるし、半分ぐらいは《半グレ》の業者もおるな。連中は、“ウチはソフト闇金融ですよ〜!”というサイトを作ってるなぁ。なんでもソフトと名が付くと、安心するからやろ。WebとLINEを使うと若年層の連中からの申し込みが多いな。それにLINEを使うと、他の闇金融業者に比べて、実態がよくわからん。その分怖いわけや」

丸「LINE越しのやりとりしかしてないから、相手がどこの誰なのかわからないということですか……」

K氏「ただでさえ、トバシの携帯使ってるのに、LINEのIDから相手の身元なんて割り出すことなんてできへん。LINE闇金融ちゅうのは、トバシ携帯と架空口座があれば、すぐに商売をはじめられる。最近では半グレとつながりのある会社員、学生なんかも参入していたという報道まであった。IDを消してしまえば、やめることもいとも簡単やからな」

最初の2〜3回は返済してくる

丸「もし、金を返さなかったらどうするんですか?」

K氏「こっちは、個人情報が押さえてあるから大丈夫や。住所も電話番号も、親の連絡先も、配偶者の連絡先も免許証の確認もとれてるから、むこうが勝手にビビリよる。債務者が女なら、“担保になる裸の画像を送ってください”というたら、返済するよ」

丸「どれだけ非道なんですか……」

K氏「それに、ウチは小口融資や。初めの返済日の2回から3回は返済してくる。正直それで元金は完納、利息で利益は出る。その後で脅そうが、身内に電話をかけて返済を迫ろうがしても払わない場合は、もう放置する。それ以上追いかけると、リスクが高いからな」

丸「では、実際には家にきて暴れたり、拉致監禁されたりというのはないということなんですね?」

K氏「ウチではそのリスクは取らないといっているだけ。他がやらないとは言ってないで」

K氏が手を染める《LINE闇金融》ですが、やはりLINE上での脅迫や何らかの取り立て行為があった場合は、とにかく警察へ相談することが一番だということです。借金問題に関しては民事不介入でも、脅迫や取り立て行為を受けた場合は、すぐに警察へ駆け込んでください。さらに、闇金に関する弁護士に相談することも大切です。

日常、当たり前のように使っているLINEでも、気を許せば犯罪に巻き込まれてしまうこともあります! ご注意を!

(C)写真AC

(執筆者: 丸野裕行)