5月23日に発表された日本代表のトップニュースは、本田圭佑と長友佑都の復帰だろう。3月のヨルダン戦を欠場したふたりが戻ってきたことで、久しぶりにベストメンバーと呼べる陣容が整った。

 違う視点から今回のリストを見ると、工藤と東のピックアップが浮かび上がる。リストそのものも、通常より多い26人で構成されている。本田、岡崎、酒井高が6月1日に国内カップの決勝戦を控えているため、実質的には23人でトレーニングを進めていくことになるからだ。

 それにしても、なぜ工藤と東なのか。
 ここまで12節を終えたJ1リーグでの活躍ぶりを考えれば、佐藤寿、豊田、渡邉千真、柿谷らが招集されてもおかしくない。原口も相応のインパクトを記している。
メンバー発表の記者会見で、ザックは「二人ともユーティリティなプレーヤーで、複数のポジションでプレーできる」と話している。柿谷や原口も同じような柔軟性を備えていると思うが、佐藤、豊田、渡邉はスペシャリストの性格が強い。
 
 その一方で、「代表の常連になる実力はまだない」とも話しつつ、東については本田のコンディションを考慮した選考と補足している。「コンディションも含めてメンバーを考えないといけない。そういうことも考えて、東の名前が26人に入っているのも事実」というコメントからは、東のトップ下起用があり得るとも読み取れる。
オーストラリアのホルガー・オジェック監督は、今回の26人をどのように分析するだろう。

 かつて浦和レッズを指揮した彼は、日本代表を熟知していると自負する。母国ドイツでプレーする日本人選手についても、豊富な情報を揃えている。オーストラリアのメディアの問いかけに、「本田が出なければ香川がトップ下で、清武が左サイドに入るだろう」と予想しているほどだ。
 
 そう考えると、5月30日のブルガリア戦が興味を増してくる。この試合でザックが工藤と東を起用すれば、たとえ短時間でもオジェックには見過ごせない。テストマッチは交代枠が多く、控え選手を起用しやすいと分かっていても、ザックの真意に辿り着こうとするはずだ。
 
 6月4日の一戦に必勝を期すのは、オーストラリアも同じである。日本は勝点1でも最終予選突破が決まるが、ここまで3位のオーストラリアは勝点1では物足りない。アウェイゲームとはいえ、相当なエネルギーを注いでくるのは明らかだ。
 
 クロスゲームが必至と見られるなかでは、事前の情報戦も重要な意味を持ってくる。対戦相手を心理的に揺さぶる駆け引きがあってもいい。新戦力のテストにふさわしくないタイミングで、あえて将来性重視の二人を呼び寄せたのは、オジェックの視線を意識したから──ザックがそこまで考えているなら、今回のリストはなかなかのものである。