高級住宅街「田園調布」「成城」で高齢化が加速…いま「住みたい街」に訪れている変化
東京都大田区の「田園調布」と東京都世田谷区の「成城学園前」。なんと今年の「SUUMO住みたい街ランキング」(首都圏版)で田園調布は200位、成城学園前は189位となっており、長年、東京屈指の人気高級住宅地として君臨してきた両エリアが、下位に陥落してしまっているのだ。
憧れの高級住宅地だった街にいま何が起きているのか。今回は不動産評論家の牧野知弘氏に解説していただいた(以下、「」内は牧野氏のコメント)。
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“世代交代が進まない”“相続出来ない”という難題
田園調布や成城学園前のような郊外型高級住宅地がここまで人気ダウンしてしまった原因として、“代替わりの難しさ”もあるそう。
「先ほどお伝えしたように住人の高齢化が顕著なため、いま高級住宅地で起きているのは“世代交代が進まない”という問題なのです。昔に比べて人間の寿命が伸び、高齢者も元気になったことで、住宅がなかなか次の世代へ移らない。さらに核家族化も進み、“親の家を継ぐ”という構造や発想そのものが崩れてきています」
かつては、“一族で受け継ぐ邸宅”として成立していた住宅地が、現在はその維持が難しくなりつつあるようだ。
「特に田園調布や成城学園前は、相続の問題がかなり深刻なのです。坪単価は250万円前後とも言われ、100坪あれば土地だけで数億円規模になる。相続税率も高く、金融資産が十分にない場合は、相続したくても売却せざるを得ないケースが出てきます。
また、田園調布では165平米以上、成城学園前では125平米以上といった最低敷地面積のルールによって簡単に土地を細分化できないという事情や、建築物の高さ制限などによって大規模マンション開発も難しいという事情もあるのです。つまり、一般的なファミリー層には手が届きにくく、購入できる人が限られてしまう土地になってしまい、その結果、街の新陳代謝が起きにくくなっています」
こうしたエリア独特の問題を抱える田園調布と成城学園前は、高級住宅地としてのブランド価値を失ったということなのだろうか。
「現時点で両エリアの地価が暴落しているわけではありません。いまも高級住宅地としてのブランドイメージは根強く、資産価値そのものが急激に下がっている状況ではないんです。ただ、“田園調布憲章”のような街づくりの理念を守り続ける限り、人口の入れ替わりは進みにくいでしょう。買える人は限られますし、相続できずに手放すケースも今後さらに増えていくはずです。
両エリアがある大田区や世田谷区では、今後さらに高齢化が進んでいくとみられています。街としての魅力が失われたわけではありませんが、“いま求められている住まい方”とのズレは今後さらに広がっていく可能性があるでしょう」
ブランドイメージよりも“暮らしやすさ”の時代へ
一方で、現在“住みたい街”として支持を集めるエリアには、従来とは異なる特徴があるそうだ。
「最近は、行政サービスや子育て支援を重視して街を選ぶ人も増えています。例えば、流山市(千葉県)は子育て政策を前面に打ち出して成功した代表例です。また、東京都と茨城県を結ぶつくばエクスプレス沿線では、駅に送迎サービスを用意するなど話題になっています。“子育て世代をどう取り込むか”で自治体同士が競争しているのが昨今の状況なのです」
現在は、かつてのように高級住宅地のブランドだけで人が集まる時代ではなくなったということだろう。一方で、人口流入が急激に進んだタワマンエリアでは、別の課題も浮上しているそうだ。
「武蔵小杉(神奈川県)や豊洲(東京都)のように、近年で一気に人口が増えた街では、学校や交通インフラへの負荷も問題になっています。便利で人気がある一方で、“本当に住みやすいのか”という議論が出ているところもあるようです」
都内の土地が徐々に流動化していく
では、田園調布や成城学園前のような高級住宅地が、再び評価を取り戻す可能性はあるのだろうか。
「いまの街づくりの“憲章”やルールが変わらない限り、大きく変化するのは難しいでしょう。ただ、2030〜2040年頃になると、現在住んでいる世代の代替わりが一気に進む可能性があります。
今後は、大田区や世田谷区だけでなく、練馬区や板橋区なども含めて、“郊外型住宅地の世代交代”が一気に進む時代が来ると予測します。相続できなければ、最終的には売るしかない。これまで市場に出てこなかった都内の土地が、今後は徐々に流動化していく可能性があるのです」
――“セレブの街”として人気を集めていた田園調布と成城学園前はいま、時代に合わせた“新しい価値”を問われ始めているのかもしれない。
(取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio)
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