「女性の切腹」愛好家たちの独特すぎる世界…「切腹マニアの女性」との文通に記されていた「衝撃の内容」

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「驚異の陳列室」を標榜し、写真集や画集、書籍をはじめ、5000点を超える奇書・珍品が眠る、大分県・別府の古書店「書肆ゲンシシャ」。店主・藤井慎二さんがひとつひとつ蒐集してきたコレクションは、静かに棚の中で時を待っています。今回も「女性の切腹」をテーマに、藤井さんが蔵書のなかから特に選りすぐった幾冊をご紹介いただきます。まだ見ぬ言葉の世界へ。どうぞ、お手に取ってご覧ください。

気になるゲンシシャの収入源

――藪から棒ですが、藤井さんはどうやって生活しているのですか?

藤井慎二(以下、藤井) いや、お店の入場料などで稼いでいますよ。

――ゲンシシャは藤井さんが20代の頃に開業しているんですよね?

藤井 東京にいた頃から趣味で古本を集めていて、20代で古物商の免許を取り、開業したという流れですね。そのため、コロナ禍は本当に厳しかったです。コレクションも相当売りました。

――大学生の来店が多いイメージもありますが、客層は変化していますか?

藤井 最近は30〜40代でYouTubeを観て来店される方が非常に多いですね。YouTubeの影響力は改めてすごいなと感じます。それでいうと、ゲンシシャもYouTubeチャンネルを始めており、その収入もあります。

――この内容をYouTubeで発信しているのですか?

藤井 もちろん、コンテンツ的に広告がつかない動画もあります。今日も別府駅前で「YouTube見ています」と、東京から観光に来ていた方に声をかけられました。

――別府に降り立って、いきなり藤井さんを見かけたら驚きますよね。

藤井 地元の人に声をかけられることもあります。でも、全体的にみると、都市部の方が多い印象ですね。

――都会生活は病みやすいですからね。

海外からも注目される「女性の切腹」写真

藤井 “日本で唯一の女性切腹マニアの会”の同人誌『白妙』を紹介した前回に続き、女性の切腹について紹介します。

――藤井さんは、神保町の古本屋で女性の切腹写真を購入したことをきっかけに、情報収集を始めたんですよね?

藤井 神保町の古本屋で女性の切腹写真が売られていて、その場でおよそ250枚を購入しました。店主によると、もともとは500枚セットだったそうですが、外国人観光客が半分だけ買っていったらしいです。

――海外に謎の切腹写真が流出したわけですね。

藤井 最近はうちにも海外の方が来店されるようになって、「ハラキリを見たい」という方も多いです。「本当に切っているのですか?」とよく聞かれます。「一種のプレイです」と説明していますが、写真がリアルすぎるんですよね。

――面食らうでしょうね。

腑(はらわた)を積極的に出したものも

藤井 今回は、切腹研究者の中康弘通さんが出版していた『櫻』を紹介します。うちにあるのは1999年から2000年にかけて「桐の会」が刊行した復刊号です。『白妙』の後継誌的な位置づけの出版物です。

――切腹研究者……。

藤井 中康さんはほかにも切腹についての本を出していて、女性の切腹についてだけでも1冊書いています。著書には、三島由紀夫との交流もあったと書かれていますね。

――きちんと切腹や殉死について研究されてきた方なんですね。

藤井 そんな中康さんによる『櫻』ですが、『白妙』とコンセプトは同様で、女性の切腹をテーマにしたアンソロジーです。切腹小説が多く収録されていて、『長町女腹切』という近松門左衛門原作の作品も掲載されています。

――女性の腹切り事件についての浄瑠璃ですね。

藤井 『櫻』の復刊号は全4冊あり、そのうち1冊が「別冊写真画帳」で、丸々1冊が切腹の絵や写真で構成されています。

――切腹する女性のイラストに、丸々1ページ使われていますね。

藤井 絵画作品だと、腑(はらわた)がしっかり描かれているものもありますね。

――血と腑は重要なファクターですよね。

藤井 特に女性の切腹を描いた作品では、積極的に腑を出しているものも多いですね。うちで扱っている切腹フォトの中にも腑を出したものがありますよ。

――一体、その腑は何でできているのでしょうね……。

藤井 本書には、セーラー服の女性が切腹しているイラストや、百合的な世界観のものも掲載されていて、コスチュームやシチュエーションも多様です。

――さまざまな表現で切腹を描いていて、耽美的なフェティシズムの世界ですね。というか、切腹のための女性モデルが存在するのですね。

藤井 妻が夫に無理やりモデルにされたケースもあったそうです。

――どう言いくるめたのか気になりますね。

切腹マニアたちも活字から映像資料へ流れた

藤井 『櫻』には「読者の相互間通信を目的として開設した」という読者通信欄もあり、「投稿をお待ちしております」と記されています。

――当時の読者数や会員数は分かりますか?

藤井 正確な数はわかりません。ただ、復刊号には「部数は減少の一途」「印刷部数が50を切るようならば、潔く廃刊するつもりです」と書かれており、この時にはすでに高齢化や減少は進んでいたのでしょう。

――インターネットの影響もありそうですね。

藤井 『櫻』には、活字離れが進み、映像資料に人気が集まっていると書かれていますよ。また、ゲンシシャには、1992年に桐の会が発行した『桐』という出版物もあるので、そちらもご紹介します。これは外箱付きの分厚い本で、女性の切腹小説が多く掲載されています。特に興味深いのが書簡集「ある女性マニアとの文通から」です。

――どんな内容ですか?

藤井 「真の女性切腹マニアの実在を疑っていた」という男性が、実際に女性切腹マニアと文通する内容です。

――文通というのが時代を感じさせますね。

藤井 ネットのない時代ならではのやり取りで、非常に味わい深いです。「ビデオまで御恵送戴きまして有難うございます」といった返信もあり、独特の空気がありますね。

――VHSで切腹映像が届くというのは、かなりホラーですが……。

藤井 この書簡集には、前回お話した「スーパー変態マガジン」のキャッチコピーで知られる「Billy」(白夜書房)の記事で、切腹マニアが腹を切る現場に立ち会った伊藤比呂美さんの名前も出てきます。

――“女性の切腹”だけで、これだけの歴史があるとは驚きです。

藤井 『桐』にいたっては700ページもありますからね。最後のページが、切腹して仰向けに息絶えた女性の写真という点も、洒落っ気を感じます。

――そこまで書くことがあるのかと思ってしまいますが、女性の切腹には想像力を刺激する何かがあるのでしょうか?

藤井 『桐』は非売品・会員頒布と記載されていますが、当初は商業出版を目指して出版社と交渉していたそうです。ただ、出版社から「一般性」が必要と言われ、「マニアのためのマニアの本でなければ苦労して出す意味がない」としてこのようなかたちになったとのことです。

――ある意味、オタクの理想形ですね。

藤井 女性の切腹マニアたちの強い熱意を感じますよね。

(構成/伊藤綾)

(編集/千駄木雄大)

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書肆ゲンシシャ

大分県別府市にある、古書店・出版社・カルチャーセンター。「驚異の陳列室」を標榜し、店内には珍しい写真集や画集などが数多くコレクションされている。1時間1500円で、紅茶かジュースを1杯飲みながら、それらを閲覧できる。

所在地:大分県別府市青山町7-58 青山ビル1F/電話:0977-85-7515

http://www.genshisha.jp

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